脳科学から見た、やる気が上がる意外な「口ぐせ」 「グチる」も脳にとって決して悪いわけではない

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皆さんは毎日のように、「疲れたな」「しんどいな」と言っていませんか? 夜帰宅して靴を脱ぎながら「あー、疲れた」。朝起きぬけに思わず「しんどいな」……。

無意識のうちに言っているかもしれませんが、こういう場合は心身のどこかによくない状況が起きていて、それが言葉として表出していることがありますから、意識して自分自身の行動をふり返ることをお勧めします。

「なぜ私は毎日のように、疲れた、と言うのだろう?」

「しんどいって、何がしんどいのだろう?」

鏡を見ながら、自分に向かって問いかけてみてください。そして、肉体的に疲れているならば休養を、精神的にしんどいのならば原因を探って、それを取り除くような行動を起こしましょう。

無意識のうちにこぼれ出るネガティブな言葉は、その原因を意識的に振り返ってほしいという脳からのサインです。

そんなふうに捉えて、次の行動につなげていくことが大切です。

一方、意識して「今日は本当に疲れた」とか「マジでしんどいな」とぼやくのは、気持ちを切り替えるうえでは役に立ちます。感情を吐き出すことで、すっきりすることもあるからです。

ただし、口にする前に、周りに人がいないことを確認するようにしてください。周囲の人がその言葉を聞くと、あなたのネガティブな感情に巻き込まれてしまうからです。

あなたがチームリーダーの場合、メンバーのやる気を下げてしまう可能性もあるので、注意が必要です。

グチは脳からのメッセージ

では、最後の質問です。

グチを言うとやる気は上がるでしょうか? それとも下がるでしょうか?
当然下がりそうなものですが、脳科学的には「そうとも限らない」といえます。やる気を上げる効果までは期待できませんが、グチにはやる気を下げない効果がありそうなのです。

そもそも人がグチを言うときは、脳があなたに「その問題を見直しなさい」と伝えているのだと考えることができます。

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人間関係のグチが多ければ、「その関係を見直したらどうか?」。

仕事がつまらないというグチが多いならば、「その仕事を続けるか考えてみよう」と、脳はあなたに伝えているのです。

でも、ほとんどの人は考え直したからといって、すぐに人間関係を断ち切ったり、仕事を辞めたりすることはできませんよね? だからグチを言って、現状を変えられない自分と折り合うためのガス抜きをしているわけです。

現状をすぐに変えることはできないけれど、希望を失わず、変化が訪れるまで今の状況で頑張るためにグチを言っているのです。

居酒屋でのぼやき合いでやる気は上がりませんが、下げもしません。グチを言うのをやめて苦しくなるぐらいなら、積極的にグチってしまうのも手だと思うのです。

田中 伸明 ベスリ会総院長、日本神経学会認定医、医師会認定産業医、東洋医学会専門医

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たなか のぶあき / Nobuaki Tanaka

鹿児島大学医学部卒業後、諏訪中央病院で地域医療に従事。その後、厚生労働省でマネジメントを、マッキンゼー・アンド・カンパニージャパンで経営を学ぶ。その経験を生かして会津大学理工学部、日本大学工学部、京都産業大学経営学部の教授として大学教育に従事。ビジネス領域で活動した医師免許所有者の社会的責務として、日本を支えるビジネスパーソンのメンタル障害を解決することが重要と考え、ベスリクリニックを開設。医学だけでは解決できない問題に対して独自の社会的アプローチを開発するとともに、ビジネスを含め、広くサービスを探査、提供している。著書に『マッキンゼー×最新脳科学 究極の集中術』など。

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