「家電を持たないくらし」で目指す、賃貸の新常識 家電サブスクが「新しいくらし方」をもたらす訳

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パナソニックの丹野直司氏(左)と東急不動産の岡本美優氏(右)
人々のライフスタイルの多様化が進む中、場所やモノに縛られない自由度の高い生活が、魅力ある選択肢の1つとして注目されている。そうした背景の下、パナソニックは賃貸住宅向けの家電サブスクリプションサービス「noiful(ノイフル)」を提供。日本では珍しい「家電付き賃貸物件」に住むことによる新たなくらし方の浸透を目指している。家電付き賃貸が居住者にもたらす価値、実現できるくらしとはどのようなものなのか。実際に賃貸レジデンス「COMFORIA(コンフォリア)」で「noiful」を導入・提供する東急不動産とパナソニックに話を聞いた。

「noiful」で賃貸物件の「付加価値」を向上

――賃貸市場のトレンドの変化について教えてください。

岡本(東急不動産) コロナ禍の前後で、入居者が物件に求めるものが変わってきていると感じます。

「COMFORIA」は20~40代の働く世代をメインターゲットとしています。そうした方々はコロナ前、「家=食べる場所・寝る場所」というイメージが強く、賃貸物件に求める機能もシンプルでした。

東急不動産 住宅事業ユニット 首都圏住宅事業本部 計画第二部 事業企画グループ 岡本 美優氏
東急不動産
住宅事業ユニット 首都圏住宅事業本部 計画第二部
事業企画グループ 岡本 美優

一方、コロナ禍以降は家で過ごす時間が増えたことで、例えば共用部にワークスペースがあるなど、プラスアルファの機能がある物件を好まれる方が多くなってきています。

こうしたトレンドの変化を受けて、当社が展開する「COMFORIA」では「どのような付加価値を提供するべきなのか」という課題が浮上しました。そもそも賃貸物件は他社との差別化が難しく、違いを出したくてもできることが限られています。それでも「COMFORIA」を選んでもらうために何かできることはないかと、検討を重ねていました。

――そこで、「COMFORIA」の付加価値の1つとして「noiful」を導入されたということですね。

岡本 はい。「noiful」は、入居したその日からパナソニックさんの高機能な家電を使用できるサービスとして、入居者に新たな価値を提供できるのではと思いました。また、われわれオーナーサイドにとっても、設置からアフターサポートまでパナソニックさん主導で進めていただけるので、導入しやすいという点も大きかったです。

入居者に選んでいただける物件を検討する際、これまではハード面での作り込みばかりに目を向けていました。しかし「noiful」を導入することで、物件そのもの以外の部分で、プラスアルファの魅力づけができます。

とくに竣工してからしばらく経つ物件は、新築時から比べると賃料水準が下がる傾向にあります。そうした物件でも「noiful」は付加価値となりえます。従来の当たり前を変えて、新たな活路を見いだせるのではないかと考えました。

ライフスタイルに合わせて生活に家電を取り入れる

――改めて「noiful」とはどのようなサービスなのでしょうか。

丹野(パナソニック) 「noiful」は、賃貸物件向けに冷蔵庫・洗濯機・テレビ・オーブンレンジ・美容家電などパナソニックの先進的な家電を月額制で提供するサービスです。具体的には、入居者が自身の生活スタイルと部屋の間取りに合った家電のパッケージを選んで使っていただける「noiful ROOM」と、家電と空間が調和する形で部屋のリノベーションも行って物件を提供する「noiful LIFE」の2種類があります。東急不動産さんに導入いただいているのは前者です。

パナソニック くらしアプライアンス社 ハウジングアプライアンス事業推進室 丹野 直司氏
パナソニック くらしアプライアンス社
ハウジングアプライアンス事業推進室 丹野 直司

「noiful」で選んだ家電は、入居前にあらかじめ備え付けておくため、すぐに快適な生活をスタートできます。アフターサポートも万全で、修理や交換などは無償です。利用料は毎月の家賃に上乗せしてお支払いいただきます。同様の家電を一式そろえるには、高額な初期費用が必要になりますが、「noiful」なら高品質な家電を使えるうえ、搬入や処分の手間もかかりません。働き方やライフステージに応じて容易に移り住める「軽やかなくらし」を実現できると考えています。

――初期費用を抑えて好きな家電を利用でき、かつ購入や引越しにかかる負荷を減らすことができるわけですね。

岡本 とくに若い世代にとって非常に魅力的に映るサービスだと思います。実は、「noiful」の存在を知る前、「COMFORIA」で何かソフト面でのサービスを開発できないか社内で話し合っていたときに、「いい家電を使いたいけど一人暮らしだとなかなか購入できない。それを何とかするサービスを開発できないか」という意見が出ていました。

「COMFORIA」の計画や運営に携わっているメンバーには20代から30代の社員が多く、生活にサブスクのサービスが浸透していることもあり、家電をサブスクで提供できないか考えたのです。そうした経緯があってパナソニックさんにご相談したときに、「noiful」というサービスがあると紹介していただきました。「求めていたものはこれだ!」となり、ご一緒させていただくことにしました。

丹野 「noiful」を活用することで、ご自身の生活状況に応じて必要な家電を選択していただきたいと考えています。例えば、普段忙しく洗濯が負担であればドラム式洗濯乾燥機を利用したり、共働きで料理に時間をかけられなければ多機能オーブンレンジやオートクッカーを利用したり。家電は生活スタイルに応じて使い方が変わるので、その時々の状況に応じて選択できる点も「noiful」のメリットです。

「noiful LIFE」のモデルルーム
「noiful」では自身の生活スタイルに合わせてパナソニック製の家電をサブスクで利用できる(写真は「noiful LIFE」のモデルルーム)

また、家電は入居者が変わるタイミングで状態に応じてクリーニングやリファービッシュ(電化製品をメーカーで修理・調整して再出荷すること)を施しますので、廃棄せず繰り返し使えます。「noiful」は入居者自身の軽やかなくらし方を実現できるだけではなく、環境負荷の削減にもつながります。

岡本 使用済みの家電に抵抗感をお持ちの方もいらっしゃると思うので、きれいな状態にしていただけるのはとてもありがたいです。また、「noiful」が環境負荷削減に寄与する点についても、「環境先進」を掲げる当社の方針ともマッチしており、ぜひ導入したいと思ったポイントでした。若年層をはじめとして環境配慮への意識が高まっているので、その観点からも「noiful」の需要は高まると思いますね。

家電付き賃貸を「新たなくらし」の選択肢に

――2022年3月に「COMFORIA」で「noiful」を導入してから1年余り、物件数も当初の4物件から7物件に拡大されています。反響はいかがですか?

※2023年6月現在、東京都の森下、新中野、西荻窪、高島平など計7物件で導入

岡本 毎年1回実施している入居者向けのアンケートで、「『noiful』が入居の決め手になった」と回答された方もいました。また、ファミリー向け物件の内覧時のアンケートでは、「noiful」が予想以上に好評です。

ファミリーの方は、すでに保有されている家電を使われるケースがほとんどだと思うのですが、「パナソニックの家電を使いたい」とのコメントが多く見受けられました。われわれが想像していた以上に、サブスクに抵抗感がない方が多いことも発見でした。

「コンフォリア森下リバーサイド」(東京都江東区)
「時代を超えて愛される住まい」がコンセプトの「COMFORIA」シリーズ。写真は「noiful」を導入している「コンフォリア森下リバーサイド」(東京都江東区)

丹野 20代、30代の若い世代を中心に、モノを持たないという価値観が広がってきていますので、「noiful」で家電を持たない軽やかなくらしというのもメリットとして感じていただいているのではないかと考えています。

40代、50代の方でも、単身赴任があると家電を一通りそろえないといけません。しかし、いずれ戻ることを考えると、お金をかけていい家電を買うというのはなかなか難しい。単身赴任経験がある方と「noiful」について話をすると、「それがあったら使いたかった」と言っていただけることが多くあります。

また、海外では家具家電付き賃貸は「当たり前」なので、海外から日本に来られる方にとっても、家電を買いそろえることがハードルになります。そういったことを考えると、「noiful」はさまざまな方に受け入れられる可能性があるサービスだと思っています。

――「noiful」は新たな賃貸の住まい方の選択肢として期待が高まりそうです。これからの展望をお聞かせください。

丹野 「noiful」ではライフステージに合わせて、最適な手段で快適な住まい方を実現することを目指し、さまざまなサービス展開を考えています。使用している家電を購入できる「買い取りオプション」の提供や、家電をより柔軟に利用できる「選べる家電」など、今後もニーズに応じてサービスの改良を継続していきます。

選べるパナソニック家電
今後提供予定の「選べる家電」では30種類の家電の中から2点以上を選択し、数や種類に応じた月額料金で利用できる

岡本 「買い取りオプション」はあったらうれしいですね。家電を使ってくださる方が気に入ると自分の物にしたいとなるのは自然な流れかなと思います。今後もそうしたアップデートがあると、私たちもサービス普及に向けて押し出しやすくなりそうです。

テレワークの浸透など場所に縛られない自由な生活が今まで以上に求められてきている中で、家電の選択も、自分に合ったくらしを送るという点でニーズがあると思います。「noiful」と「COMFORIA」を掛け合わせて、そうしたくらしを提供していきます。

丹野 「COMFORIA」のように、一歩先の心地よさを提案されている物件における「くらしの価値」をもっと上げられるように、当社の先進的な家電を通して貢献し、ひいては賃貸市場の全体の活性化も図っていきたいと考えています。各個人の生活に応じて必要な家電を必要なときに気軽に利用できる、場所やモノに縛られない軽やかなくらしを世の中に浸透させていきたいですね。

>賃貸住宅向けサブスクリプションサービス「noiful」について詳しくはこちら

>東急不動産の賃貸レジデンス「コンフォリア-COMFORIA-」について詳しくはこちら

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