早稲田大学は、ソニーの「デジタルペーパー」に何を期待したのか。 PCでもない、タブレットでもない、それは「ネットにつながった紙」

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実証実験には学生たちも参加しており、その中では論文やレポートを書く前段階の、思考をまとめる作業にデジタルペーパーが大きな力を発揮することが見えてきたという。手書きのため、ふと思いついたアイデアを文字や絵ですぐ表現できる。自分の考えをスムーズに可視化し、情報を整理することで、論理的な思考が身につくのだ。「大学は、正しい知識や技術を学ぶのはもちろんですが、気づく力や発見する力、そして表現する力を身につける場だと思います。環境や人などさまざまな要素が必要になってくると思いますが、このデジタルペーパーをはじめとしたICTが、学生たちの成長の重要な鍵になると感じています」と畠山教授は語る。

現場の声をもとに進化する
デジタルペーパー学習支援サーバーの導入も

早稲田大学
大学総合研究センター事務長
永間 広宜氏

実証実験の間、ソニーはどうすればデジタルペーパーがもっと有用なものになるかを見極めるため、利用を促すだけでなく授業やゼミに実際に立ち会い、現場の声をもとにアップデートを繰り返してきたという。そして今年4月からは新たな段階に移行し、学習支援サーバーの利用が開始された。大学総合研究センター事務長の永間広宣氏は「デジタルペーパーとサーバーを、すでに稼働していたLMS(Learning Management System)と連携させることにより、いままで網羅しきれなかった、学生たちの手書きによる学習成果や履歴を電子化し記録できる準備が整いました。学生の成長記録を蓄積・活用するeポートフォリオの充実化が可能になります」と語る。

これも先に述べたように、早稲田大学とソニーが、より良い教育サービス実現のために議論を重ねてきた経験によるものだ。「早稲田大学の学生数は約5万人。授業は年間約15,000科目が設定されています。そのすべてにきめ細やかな教育サービスを提供することは難しいかもしれませんが、ICTを活用することで、早稲田ならではの新たな環境を提供していきたいと思います。そのためには今後もソニーとの協力体制をしっかり築いていきたいですね」(永間氏)。

もともとの使いやすさはもちろん、現場の声やニーズに耳を傾けながら、常に進化を遂げていくソニーのデジタルペーパー。PCでもない、タブレットでもない、可能性に満ちたこのデバイスは、今後は日本をはじめ世界の人材育成の最前線にも広がっていくことだろう。