▶ 後援:東洋経済新報社

【基調講演】
持続的成長のための経営改革
川村 隆氏
2009年、日立の執行役社長に就任、業績をV字回復させた川村隆氏は、「痛みを伴う改革をやり抜けるかどうかが経営の大事なところ。大事は理(合理性)で決め、その後に救わなければならない小事は情で決める」と心構えを語った。「日本人は落ち着くと緩んでしまいがちだが、平時こそ改革が大事」と指摘。グローバル企業になるため、意識的に枠をはみ出し、異端の行動、多様性から生まれるイノベーションの重要性を訴えた。社長に改革派の人材を据え、外国人を含む社外取締役を多数派にしてガバナンスを効かせる取組みを紹介した川村氏は「企業は稼いで付加価値を社会に返すべき。ただ、それだけでは格差や環境などの問題を解決できないのも事実。ソーシャルビジネスを行う『第二日立』を作る必要があるかもしれない」と述べた。
【講演1】
ミネベアの事業戦略とCSR
貝沼由久氏
リーマンショック直後の2009年、総合部品メーカー、ミネベアの社長に就任した貝沼由久氏は、苦しい状況の中で経営について考え続け「経営とは長くつなげること」だと思い至った。ゆえに「手綱さばきを語源とする西洋のマネジメントと異なり、日本の経営にはサステナビリティが内包されている」と語る。会社の継続を担保するには、社会から支持されるCSRが重要で、同社は奨学基金創設などの活動を通じて「地域社会に歓迎される」などの経営方針を実践する。2011年のタイ洪水では、現地従業員が工場に泊まり込んで保守作業をしてくれるといったことを経験した貝沼氏は「この会社を守ることが自分たちの生活を守ることだと理解されているからではないか。社員を巻き込んだCSRは、経営の大きな助けになると考えている」と述べた。
【講演2】
新たな世界が拓かれつつある中での、持続的経営とは?
石倉洋子氏
世界を代表する政治家や実業家が集まるダボス会議に参加を続けている石倉洋子氏は、「社会的課題の解決策が議論され、最近は企業の役割にも関心が高まっている」と話す。その中で、格差、テロ、環境、保健衛生などの課題を解決する主体として、企業への期待が高まっている。必要なテクノロジーなどの資産を持ち、実際にグローバルに活動してきたノウハウを持つのは企業だからだ。石倉氏は「多くの課題から、その会社にしか解決できないことをビジネスにすることが大切」と主張。事例として、途上国を飛び回る社会起業家に飛行機の座席を提供して支援しようと発案した、航空会社のプロジェクトを紹介。「自社資産で社会に貢献し、ブランド認知も高められる。こうした取組みを実践しようという社員に機会を与えてほしい」と訴えた。
【パネルディスカッション】
価値創造経営と持続可能な競争力
―閉塞感を打破する次世代の経営とは?
大久保和孝氏
モデレーターの大久保和孝氏は「過去の経験から未来を予測することが難しい今、先にビジョンを描き、自社が果たす役割を示すバックキャスティングが重要」と切り出した。
EYの牛島慶一氏は「会社のありたい姿だけではなく、どのような社会にするかを描き、ステークホルダーと共有することが大切。日本企業自らが主役として積極的に社会づくりにかかわっていくべきではないか」と指摘。
石倉洋子氏は「今の若く優秀な人は、何のために働くかを考えている。人材採用の観点でも企業の価値のあり方を見るべき」と話した。
北島敬之氏
貝沼由久氏は「製造業の現場では、社員の生活や待遇など現実的な話にする。理念的なビジョンでは理解されない」と実務的な難しさに触れた。
ユニリーバの北島敬之氏は「1880年代に生まれた一つの石けんから始まった『よりよい明日を創るために』というビジョンの下、ユニリーバは皆様と共に小さな行動を毎日積み重ねることが、世界を変える大きな力になると信じている」と説明。「不安定な時代では、企業にとって成長が大切だが、一方で責任が伴うというリスポンシブルグロースの概念も必要」と述べた。
柳 良平氏
患者貢献という社会的価値創出の結果、利益を生むというhhc(ヒューマンヘルスケア)の理念を掲げるエーザイの柳良平氏は「途上国で熱帯病の薬の無償配布をしているが、長期的に経済価値を目指す投資と、株主には理解してもらっている」と述べ、「株式の市場付加価値を作るには、投資家とのコミュニケーションが大事」と指摘した。
【講演3】
課題解決先進国の実現へ
Building a Better Working World
牛島慶一氏
EYで気候変動とサステナビリティサービス(CCaSS)のリーダーを務める牛島慶一氏は、2050年に1億人を切る人口減少や、農作物への影響や災害を引き起こす気候変動に、今のうちから経営も備えていく必要性を指摘した。「激変の時代に日本企業は、理念を持ち、将来の潜在顧客や社会に向けた提案を行い、自ら競争ルールを仕掛けて作っていくべき」と強調。「経営戦略の策定、実行からコミュニケーションまで一貫サポートできる我々のチームは、皆様とパートナーを組み、これからの経営や資本主義のあり方を日本発で世界に提案したい」と述べた。
閉会あいさつで新日本有限責任監査法人シニアパートナーの須藤修司氏は「CCaSSチームは日本が世界をリードするためのサービスを展開します」と締めくくった。