信用金庫が中小企業の「脱炭素経営」を積極支援 中小企業が脱炭素化に取り組むメリットとは

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全国の信用金庫とともに脱炭素化を支援

CO2などの温室効果ガス(GHG)の排出量削減は、今や国際的な潮流となっている。政府が「2050年脱炭素社会(カーボンニュートラル)の実現」を宣言するなど、国内でも脱炭素化の機運が高まっている。

信金中央金庫 地域創生推進部 広沢 将之 氏
信金中央金庫 地域創生推進部
上席審議役兼グリーンプロジェクト推進室長
広沢 将之

「脱炭素化は意識の高い特定の人が取り組むものから、市民一人ひとりが取り組むものという意識へと徐々に変化しています。とくに全国の約360万社の中小企業の取り組みを促進することは、新たな事業の創出・成長機会の獲得につながり、地域経済の活性化の観点からも重要になってきています」と語るのは、信金中央金庫(以下、信金中金)グリーンプロジェクト推進室長の広沢将之氏だ。

信金中金は全国254の信用金庫の中央金融機関である。全国の信用金庫とともに、地域の中小企業の経営をサポートするのが使命だ。

「信金中金は、全国の信用金庫のネットワークを生かし、『中小企業の脱炭素化』を支援することで、地域のグリーン化を推進していきたいと考えています」と広沢氏は力を込める。

中小企業が脱炭素化に取り組むメリット

中小企業の経営者の中には、脱炭素化は大手企業が中心になって取り組むものだと考えている人もいるようだ。それに対して広沢氏は「2050年のカーボンニュートラルは、一部の企業の取り組みだけでは達成できません。文字どおりオールジャパンで取り組む必要があります。さらに、今後は中小企業において、脱炭素化に取り組まなければサプライチェーンから外されてしまうなど、ビジネス上のリスクが生じる可能性もあります」と話す。

大手企業を中心に、国際基準「GHGプロトコル」への対応を進めるところが増えている。同プロトコルでは、温室効果ガスの排出量を「Scope1(事業者自らによる温室効果ガスの直接排出)」「Scope2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)」「Scope3(事業者の活動に関連する他社の排出)」に区分し、この3つの合計を「サプライチェーン排出量」としていることから、サプライヤーとなる中小企業の排出量削減が必須になるだろう。

中小企業にとっては取り組みへの負担も生じるが、広沢氏は逆に脱炭素化に取り組むメリットとして「大手企業の『Scope3』をめぐる要請に対応することで、サプライチェーンの中での存在感を高めることができるでしょう。また、エネルギー消費のプロセスを見直すことで、光熱費・燃料費の削減も図れます。さらに、脱炭素化の取り組みを対外発信することで知名度・認知度向上にもつながります。これにより、社員のモチベーション向上や人材採用の強化も期待できます」と話す。

まさに、中小企業にとって温室効果ガス排出量削減への取り組みは、取引剥落の回避や光熱費・燃料費のコスト削減等の「守り」の要素だけでなく、売り上げ増加や人材確保などの「攻め」の要素にもなりうるわけだ。

CO2排出量可視化クラウドサービス「e-dash」と業務提携

一方で、中小企業の中には、どこから脱炭素化に取り組めばよいのかわからないという声も多いという。

広沢氏は、「中小企業が脱炭素化を進めるには、まず、社員の皆様に『なぜ取り組むか』を理解していただき『①全社的な意識統一』を図ることが肝要です。次に、エネルギー使用量を基にCO2排出量(Scope1・2)を算出し『②現状把握(見える化)』する必要があります。排出量を把握できれば、『③排出量の削減目標と行動計画を策定』できます。その計画を基に、『④再エネの確保・省エネなどの対応策の実行』を行うという4段階のステップで取り組むこととなります。信金中金は信用金庫とともにそのサポートを行っています」と語る。

中小企業の脱炭素化に向けた4STEP

経営資源の限られる中小企業では、CO2排出量の算出が最初の障壁となるが、注目すべきニュースもある。信金中金は2022年7月、e–dash(イーダッシュ)と連携しCO2排出量をクラウド上で算出・可視化するサービスの提供を開始した。22年12月末時点で57の信用金庫が業務提携を行い、その取引先において導入が進み始めている。

e-dash 代表取締役社長 山崎 冬馬 氏
e-dash
代表取締役社長
山崎 冬馬

e–dash代表取締役社長の山崎冬馬氏は「手間を最小限に抑えた使い勝手やリーズナブルな料金体系などにより、信用金庫にとって取引先企業に紹介しやすいサービスとしてお選びいただけたと自負しています」と話す。山崎氏が語るように、電気・ガスなどの請求書をスキャンしてアップロードするだけでScope1・2のCO2排出量が算出でき、Scope3も、ソフトウェア上で算出できるという。それでいて、「CO2排出量の算出は、大手監査法人による第三者検証を実施し、政府のガイドラインに基づいた正確な算定が可能です」(山崎氏)というから頼もしい。

「e–dashは三井物産の100%子会社です。三井物産は早くから再生可能エネルギーや脱炭素ソリューションに取り組んできた実績があります。そのネットワークを活用し、CO2排出量の可視化にとどまらず、再エネ導入支援や電力契約の見直しを通じたコスト削減なども積極的に提案し、中小企業の経営に貢献したいと考えています」と山崎氏は語る。

日本のエネルギー政策は今、転換期を迎えている。中小企業の経営に大きな変革をもたらすことになるだろう。広沢氏は「この変化をチャンスと捉え、攻めの脱炭素経営に取り組む必要があります。信金中金は信用金庫とともに、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めてまいります」と語る。

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