都市部で園庭のない保育園増の無視できない問題 千代田・中央・文京・港は園庭がある園は2割未満

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(画像:AERA 2023年2月6日号より)

「自前の園庭があれば、遠くの公園にわざわざ連れていく必要がありません。立地的に難しいという園も一部ありますが、保育の質の確保の観点から園庭設置をお願いしてきました」(担当者)

このかいあってか三鷹市内の保育所は園庭保有率が84.3%(22年度)だ。

住宅街と比べて騒音苦情が少なく見える駅近の園。通勤にも便利なため、親にとっては利点も多いが、子どもにとっては問題もある。船場さんは、幹線道路沿いや高架下の保育施設が増えていることに懸念を示す。

騒音トラブルは起きないが…

幹線道路沿いにある保育園の昼寝中の室内音を調べると、窓を閉めた状態でも、ダンプカーの通過などで音が10デシベルも上がった。昼寝中の子どもが音で起きてしまうこともあった。

「高架下の園では、音に加えて保育室が振動するところもあります。子どもは疲れると寝てはくれるのですが、眠りの質が懸念されます」(船場さん)

保育施設と音の環境を研究する片岡寛子さん(電気通信大学特任助教)は、狭い園庭にもかかわらず、拡声器で子どもたちに声を掛ける園に遭遇した。その保育園は幹線道路沿いでかつ高架下にあり、そうでもしないと保育士の声が聞こえないからだ。

「保育施設から出る騒音は気にしなくていいですし、駅近で送迎も便利です。でも、騒音に曝露(ばくろ)された環境で子どもが育つと、集中力が下がるという研究もあります。子ども目線の立地とは言えません」(片岡さん)

船場さんの研究では、音環境の整っている施設とそうでない施設では、子どもたちの行動にも違いが見られた。

「まず子どもの声の出し方が違います。吸音材を使った音環境を整えた園の子どもたちは、集中して遊び込みやすくなり、穏やかで落ち着く傾向にあります。反対に吸音されていない騒がしい環境にいると、一つの遊びに集中する時間が短い、走り回る子どもが増えるなどの傾向がみられます」(船場さん)

こうしてみると、子どもと騒音の問題は施設の「外」だけでなく、「内」の問題にも波及している。

(フリーランス記者・宮本さおり、ライター・大楽眞衣子)

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