先の先を見据えながら
「世の中の役に立つこと」を追求し続ける
大和ハウス工業
「プラス2の事業」で
顧客との接点を拡大する
足元の業績も好調だ。2015年3月期決算において、売上高2兆 8000億円、営業利益1700億円を掲げた第4次中期経営計画の1年前倒しでの達成が予想されている中、大和ハウス工業の社内では、売上高4兆円への基盤づくりに向けた動きが加速しているようだ。しかし、一方で大野直竹代表取締役社長は「私たちは大企業になってはいけない」と言ってはばからない。
なぜか。
「私どもはお客様と直接向き合い、お客様のご要望をお聞きして、住宅や商業施設をはじめとするさまざまな建物をつくっています。直接お会いしているからこそ、お客様が本当に求めていることや直面されている課題についてより正確に、そして速く把握することが可能なのです。ここで重要なのは、会社の規模がどんなに大きくなろうとも、お客様の声があらゆる部門に迅速に届き、関係者が一体となって対応できるような組織であり続けることなのです。いわば、大企業病に陥ることなく機動的な小さな組織の気概を持ち続けることを忘れてはなりません」と大野氏は語る。
一つひとつの要望に対して、きめ細かく対応していく。それは手間暇のかかる仕事だ。効率的とは言い難いだろう。しかし、大野氏は「ある意味、その効率の悪さをいとわない姿勢こそが私どもの強み」だと言う。いわば、徹底して顧客に寄り添い、丁寧に接する姿勢を貫くからこそ、大和ハウス工業に相談を持ち掛ける動きが加速しているのだとも理解できる。
こうした大和ハウス工業ならではの仕事が、拡大しようとしている。
大野氏が掲げる「プラス2の事業」の創出だ。これまでも、それぞれの事業領域ごとに、柔軟な発想で新たなサービスや商品、仕組みなどを矢継ぎ早に生み出し、既存の事業領域を拡大してきたが、さらに顧客との接点を増やそうとしているのだ。
「生活を軸とした領域で私どもが責任を持てない部分を可能な限り減らしていきたいのです。生活に関するさまざまな相談事は大和ハウス工業が応えてくれる、といった存在を目指しているとも言えるでしょう。そのために既存の事業の周辺から、お客様が要望し、世の中の役に立つことに積極的に挑戦していきたい」と大野氏は語る。
そして、もちろん海外にも目を向けている。「まずは、私どもの経験やノウハウを活用できる事業、親日度が高い国から始め、少しずつ事業と地域のフィールドを広げていきたい」と大野氏。大和ハウス工業のことだ。海外でも一つひとつの要望や課題に対して、真摯に向き合っていくのであろう。
インタビューの最後、樋口氏はあらためて、「何が世の中の人の役に立ち喜んでもらえるか」との創業者の言葉を口にした。「この軸がブレることはありません」と。大野氏は「全国の営業拠点を回っていると、社員の熱気を強く感じます」とコメント。社会の役に立つことが、そして目の前の顧客の喜びが社員自身の喜びになっているのだろう。
だからこそ、多くの人が、組織が大和ハウス工業のもとに相談に訪れるのではないだろうか。ますます、大和ハウス工業から目が離せなくなりそうだ。