そのデータ分析から顧客体験を向上させることはできますか? ~結果の裏付けではない、新たな気付きからイノベーションへ~

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ビッグデータという言葉がすっかり定着した。アマゾンやネットフリックスといった先進的な企業は、データを活用して競争優位を生み出している。それではあなたの会社はどうだろう。残念ながら多くの企業ではデータから価値を見出すことすらできていないのが現状だろう。昨今、商品やサービスの購買・利用に関わる顧客体験はモバイル、クラウド、ソーシャル等によるデジタルの世界へシフトしており、そのデータを活用できるかどうかが、今後の企業の競争力に直結する。ここではこれら多様なデータを活用する基盤として新たに注目を集める「データレイク」アーキテクチャについて紹介する。

デジタルへシフトする顧客体験とビジネス

私たちが意識しているかどうかに関わらず、私たちの日々の活動から膨大なデータが生成されている。購買活動、コールセンターとの対話、ソーシャルメディアの情報や、それらに基づいた趣味・趣向から位置情報を含む日々の行動、さらにIoT(Internet of Things:インターネットによって「もの」が接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み)によってセンサーから膨大なデータやログ、画像などが生成され始めている。顧客体験の多くがデジタルの世界へシフトしている今、これらのデータは、営業や顧客の顕在意識を越える事実を表すデータとなり得るものであり、顧客やビジネス環境をより深く理解し、そこから洞察を得て、より顧客体験を向上させる機会を得るために、活用することがビジネスの競争力を高める上で重要であることはいうまでもない。

実際に多くの企業が、こうしたデータ分析やモバイルといったデジタルテクノロジーを活用したデジタルビジネスへの拡張又は転換に着手すべきと考えており、他社が提供するAPIを活用したデジタル・プラットフォームのエコシステムの形成も進んできている。商品やサービスの販売から、利用を通した顧客の体験価値を販売するモデルへ転換し、利用データの収集・分析から顧客体験を理解し、サービスと体験価値を向上していくサイクルを確立する。こういった新たなプラットフォームを活用したビジネスが産業を再形成しつつある。

他方で、従来から一般的に行われているデータ分析は、業務システムのデータベースに蓄積されたユーザの購買処理等のデータからなるデータウェアハウスのバッチ処理分析が一般的であるが、その対象データは構造化データだけで、データ量の割合は全体の20%以下に過ぎない。全体の80%以上を占める非構造化データ(Webログ、ソーシャル、イメージ、ビデオ等)やセンサー等のデバイス生成データはそこには入っていない。つまり、顧客体験のほとんどのデータが分析対象として扱われていない。また、今起きていることの分析ではなく、予め決められたKPIに元づく結果のレポーティングが主体であり、何が起こったかを説明することはできても、今起きていることに対してリアルタイムに影響を与えるものではない。

データ分析を行う上で重要な三つのポイント

顧客の体験価値を向上するためのデータ分析で重要になることは何か。EMCジャパン株式会社の若松信康氏は三つのポイントを挙げる。一つ目は「あらゆるデータを分析対象にできること」である。なぜなら、データ分析によってもたらされる画期的な発見やイノベーションの多くは、分析データ量の増加や分析技術の高度化で生まれるのではなく、新たな組み合わせのデータを使用してビジネスを牽引・変動する要素とその相関・連鎖を明らかにすることで実現している。多様なデータを活用できれば、あらゆる仮説検証からより魅力的な顧客体験を考案し、実現することが期待できる。しかし、足元に目を向けてみると、従来、構造化データ、非構造化データ等のデータタイプによって個別のプロトコル、個別のストレージで管理されており、データガバナンスが事前に明確に定義されていても、それらのデータを組み合わせて即座に活用することが運用上困難となっているのが現状である。そのため、データのサイロを解消し、あらゆるデータを分析することができる一つのアーキテクチャが求められている。

二つ目は、「あらゆる分析ができること」である。たとえば、リアルタイムに顧客体験を向上させるためには、統計モデルを使ったリアルタイムなトランザクショナルデータの分析が行われるが、その際顧客行動の履歴データを組み合わせて分析を行う。履歴とリアルタイムデータを組み合わせることが、リアルタイムに顧客体験を向上させる上で重要となる。また、例えば、ユーティリティビジネスでは、リアルタイムのモニタリングによる利用や設備の制御と、ある一定期間の利用内容に基づいた課金、メンテナンス等の分析の両方が必要となる。これらの分析スピードの要件は、ストリーム(リアルタイム)処理、インタラクティブ処理、バッチ処理の3つに分けて考えることができるが、こういった様々な分析スピードを組み合わせて、それぞれの結果を相互に活用できるアーキテクチャであることも求められる。

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データウェアハウスをそのままリプレースせず、アジャイル分析のニーズを満たしているかを検討することが大切

そして三つ目に、「データ駆動型アプリケーションの開発のサイクル」である。データ分析による洞察を顧客接点で活用したり、顧客接点におけるより適切な通知の収集によって、リアルタイムに体験価値を向上させることができるが、ストリーム処理はそういったアプリケーションが担う要素への依存度が大きいため、データを活用するためには、分析結果としての洞察を元にアプリケーションの継続的なインテグレーションをアジャイルに回すことが重要となる。

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