公園の池の水抜いたら「死の池」に…衝撃の実態 魚が消え、鳥が来なくなった意外な原因

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いろいろな生物がいるのが地球であり、外来種がなぜ悪いのでしょうか。このような疑問を持ち、立ち止まって考えてみることが、科学リテラシーを身につけるうえでとても大切になります。

今の日本の外来生物法では、「外来生物」は「海外から我が国に導入されることによりその本来の生息地または生育地の外に存することとなる生物」と定義されています。

「外来生物」とほぼ同じ意味で使われる「外来種」には、人為的に放流された国内の魚なども含まれます。例えばワカサギは、食べるとおいしい魚だということもあり、たくさんの湖に放流されました。だから、今となっては喜ばれているワカサギだって、場所によっては外来種で昔は駆除の対象でした。

しかし現在の生態系は、外来種の存在も含めてできているわけです。つまり、在来種か外来種かのいかんにかかわらず、現在の環境には、一番そこに適応している生物がいるということです。

いわば皆さんは生物の進化の途中を見ているわけです。だから外来種を除けというのは、単に昔が良かったという話でしかなく、外来種を駆除することは意味のない話ではないか、という考えも当然あるわけです。

つまり、外来種に生存を脅かされている在来種を保護し、生物多様性を保つことは本当に必要ですか、ということです。

生物多様性重視はアメリカの経済政策の一環だった

生物多様性が必要という考えが出てくるということは、実際に生物多様性が私たちにサービスをしているということを示しています。実は、生物多様性というのは、もともとはアメリカが経済政策の一環として言い出したことでした。すなわち、生物多様性を保つというのは、生物資源に価値を見いだして金儲けに走ることがなきにしもあらずだったのです。

例を考えてみましょう。海の中にはいろいろな生物がいて、多様性のある環境が作られています。つまり海というのは、食料も提供してくれるし、その中から医薬品も作られる。例えば、ウミヘビの毒から医薬品が作られたりする例もあります。

遺伝資源(生物が持つ遺伝機能を備えた素材のうち潜在的に利用価値のあるもの)もいっぱいあります。海の中では栄養循環や光合成が行われ、地球上の酸素も海の中でたくさん作られていて、気候変動にも関わってきますから、生物が多様ということがやはり非常に大切なんじゃないかということが、一般の考え方になります。

あるいは見方を変えると、海を見ているだけで精神が安定することもわかっています。文化的にも非常に大切で、宗教や教育にも影響力がある。ところが、海は種々の物質で汚染されている。汚染を除けば、海は非常にきれいになって、私たちの文化的な生活がよりよいものになるだろうという考え方もあります。

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