定年後に「風呂の中で泣いている」66歳男性の告白 「上から目線なアドバイス」のせいで…

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ちょうど、釣りがものすごくうまくなっても、兄が「俺が教えた」「俺が指導した」と言い続けていたら、絶対に一緒に釣りには行きたくないのと同じです。

でも、奥さんは、有閑人さんの変化を一番、敏感に感じます。なにせ、一緒に暮らしていますからね。

有閑人さんが何かのサークルか集団に入り、そこで「対等な人間関係」を学び、人間の弱さやずるさ、バカさを含めて、「それが人間なんだ」と肯定的に接するようになったら、奥さんは何かを感じるはずです。

大丈夫。奥さんに怒鳴った後、ちゃんと自己嫌悪を感じる有閑人さんなら変われるはずです。

えっ? もう66歳だから、変わるには遅すぎると思う? 

66歳は、決して遅くない

拙著1冊目の『ほがらか人生相談』相談25で、僕が書いた「前向きになる」方法は読んでないですか?

「自分は、10年先から戻ってきたと思う」というものです。

鴻上尚史のなにがなんでもほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋
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有閑人さんは、本当は76歳なのに、奇跡が起こったか、タイムマシンの魔法か、とにかく10年、時間が戻って今、66歳になった、と考えるのです。

どうですか? 66歳を嘆く気持ちから、可能性を感じる気持ちになりませんか?

66歳は決して、遅くありません。会社という価値観を外れたことで、有閑人さんは新しい人生をスタートさせたのです。新しい価値観と出会うことは、とてもワクワクすることです。

今までの価値観にしがみつかず、新しい出会いに飛び込んで下さい。

対等な人間関係はものすごく楽しいですよ!

鴻上 尚史 作家・演出家

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こうかみ しょうじ / Shoji Koukami

1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。95年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲・シナリオ賞受賞。ベストセラーに『不死身の特攻兵~軍神はなぜ上官に反抗したか』(講談社現代新書)、近著に『何とかならない時代の幸福論』(ブレイディみかこさんとの共著/朝日新聞出版)、『演劇入門 生きることは演じること』(集英社新書)などがある。月刊誌「一冊の本」(朝日新聞出版)、ニュースサイト「AERA dot.」で『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』を連載中

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