各地域が個性を発揮し、
地域主導の成長戦略を実現してほしい

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少子高齢化の進展やグローバル競争の激化など、企業は今、多くの課題に直面している。こうした中、「企業にとってその立地が、重要な経営課題の一つであることに違いはないが、一方で、企業誘致のあり方は大きな転換期を迎えている」と話すのは、一般財団法人日本立地センター理事長の鈴木孝男氏だ。そのポイントを解説してもらった。

大手製造業の誘致に始まり、
中堅中小企業へ

―長年にわたり、官、民双方の立場から企業誘致をはじめとする地域の活性化政策に取り組んでこられました。これらに変化があるとすればどのような点でしょうか。

日本立地センター 理事長
鈴木孝男
1967年、東京大学法学部を卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省し、環境立地局長などを歴任。2004年に独立行政法人中小企業基盤整備機構の初代理事長に就任。08年には三菱ふそうトラック・バス株式会社の顧問就任、副会長を経て09年取締役会長に就任

鈴木 一言で表すと、これまでの政府主導型の地方活性化から、地方が自ら成長戦略を描き実行する取り組みへの大きな変化です。

たとえば企業誘致について、かつては国が各地に工業団地をつくり、自動車や電機といった大手製造業を地域に分散させるというのが、施策の中心でした。その理由としては、これらの大手企業が地方に進出すれば、部品メーカーなども一緒に出て行くなど、波及効果が大きく、地域の雇用も期待できるからです。

その後は、頭脳立地法やテクノポリス法(いずれも後に新事業創出促進法に統合)などが制定されるなど、大企業だけでなく中堅中小企業まで、業種で言えば、情報技術(IT)関連企業やサービス業なども含め、さまざまな企業を地方に誘致しようとする動きになっています。

背景の一つに、グローバル化の進展が挙げられます。国内市場が成熟化するとともに、適地適産といったように需要のあるところで生産しようとする企業が増えてきました。自動車などはその最たる例です。企業が国内ではなく海外に出ていってしまっていたわけです。

ただし最近では、円安や原油安の影響もあり、国内回帰と言うべきか、日本に製造や開発の拠点を持つ意味が再認識されています。こうした中で、各地方自治体が、どういう形で企業を呼び込むかという課題に直面していると言えます。

―こうした状況下で、企業誘致や地域活性化を実現するためには、どのような取り組みが求められるのでしょうか。

鈴木 「外発的発展」および「内発的発展」という言葉があります。これまでは安価な工業団地の開発などを行ったり、税金面での優遇などを実施したりすることで企業に域外から来てもらうという「外発的発展」の手法が中心でした。ただし、前述したように、グローバル化が進展する中では、「土地が安い」というだけでは進出する理由になりません。仮に進出したとしても短期間で移転してしまう、では意味がありません。これからは「内発的発展」すなわち、地域が地域企業とともに発展していくことが重要になります。

東京、大阪、名古屋など大都市の近郊以外の地域では、これらの市場から距離があることは否定できません。ただその一方で、交通網や通信インフラの発達で、物流や情報伝達の時間は年々縮まっています。

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