再エネの旗手・レノバが新規事業に本格着手 Non-FIT、グリーン燃料から蓄電池まで――

拡大
縮小
世界的に加速する脱炭素のカギ、それを握るのが再生可能エネルギー(以下、再エネ)だ。現在、グローバル企業が相対取引で再エネ由来の電力を調達し始めるなど、電力市場の構造的な変化が進みつつある。こうした中で、自然の力を生かした発電所の開発・運営に専業事業者として取り組んできたレノバが新規事業に乗り出した。再エネの旗手は今、急激に変わる潮流の中でどんな青写真を描くのか。レノバ執行役員CSO兼GX本部 本部長の永井裕介氏に話を聞いた。

グリーンな電気を使って「グリーンな事業」を

2000年の創業以来、ビジネスを通じた環境問題の解決を目指して事業を展開し、2012年からは国内外で再エネ発電に取り組んできたレノバ。太陽光をはじめ、木質バイオマス、風力、地熱、水力と複数の電源の開発から運営までを一気通貫で手がけている。国内外で運転・建設中の発電所の設備容量は、約1.1ギガワット。同社の永井裕介氏は、再エネ需要の拡大と新規事業展開の背景をこう語る。

レノバ執行役員CSO兼GX本部本部長の永井裕介氏
執行役員 CSO 兼 GX本部 本部長
永井 裕介氏

「ESG投資や調達先選定における事業のグリーン化の優先度が上がったことや、政府によるカーボンニュートラル宣言を受けて、各企業が再エネ電力の確保に動いています。これまで電力のグリーン化に特化してきた当社ですが、今後は再エネを媒介にして、より幅広い産業のグリーン化に貢献したいと考えました」

中長期の新たな成長の柱の創出を決断した同社は、事業ポートフォリオを再編し、新規事業に取り組むGX(グリーン・トランスフォーメーション)本部を立ち上げた。

「GX本部で取り組む新規事業の重点領域は①Non‐FIT太陽光/再エネの供給、②蓄電池、③グリーン燃料の3つです」

※1  太陽光発電事業のMW数はモジュール容量ベース
※2  バイオマス発電事業のMW数は発電端出力ベース
※3  風力発電事業のMW数は設備容量ベース

企業が発電所と契約し、再エネを確保

1つ目の重点領域であるNon‐FITの再エネとは何か。日本は国が定める価格で電力会社が再エネ電力を買い取るFIT(固定価格買取制度)により再エネの普及を促進してきた。その結果、とくに太陽光発電のコスト低下が進み、FITの買取価格は既存の卸電力取引市場のスポット価格と同等以下となった。さらに、ウクライナ情勢の影響で化石燃料の価格が高騰し、再エネの割高感が緩和。こうした状況下で、FITによらない (Non‐FIT)再エネの供給が現実味を帯びてきた。

「既存の電力会社から一般的なルートで購入する電気には再エネ由来でない電力が含まれます。そこで、RE100※4の賛同企業・団体や小売電気事業者等が再エネ発電所と直接電力購入契約(PPA)を結ぶスキームが注目されています。脱炭素の観点から、再エネ電力は中長期的な需要超過が想定され、供給元となる再エネ発電所が増えないと、企業の再エネ調達率は上げられません。当社の開発力を生かして再エネ発電所を新設し、CPPAを通じて需要家に再エネ電力を安定供給できればと考えています」

大規模な発電所の建設用地が不足する事態を踏まえて、今後は遊休地等を活用した小規模発電所の集積を進めていくという。

「RE100を表明する国内企業の一部が掲げる再エネ導入目標を太陽光発電で賄おうとすると、2030年までに約17ギガワットもの太陽光発電設備が必要と試算されます。一方、遊休地などを活用すれば、国内で約160ギガワットの発電設備が建設できる見込みです。大規模な用地を整備して設置した発電所と比べ、建設コストはもちろん災害リスクも軽減されます」

災害リスクを重視するのは、同社が「地域・自然との共存共栄」に重きを置いている証拠だ。創業当初の環境分野のコンサルティング業務で全国の自治体や事業者の課題にとことん向き合ってきた経験を生かし、「再エネ+α」の提案ができるのが強みだ。

「地域の資源を『使わせていただく』という意識で、住民の理解を得て周辺の自然環境を保全したうえで発電設備を造ることはもちろん、地域経済や雇用創出、環境学習などにも貢献し、『発電所ができてよかった』と言われる運営をする。それが、発電の質と量を担保します。レピュテーション向上を目指す需要家にとっても、安心安全に運営される発電所からの再エネ電力の調達は、環境価値以上の付加価値があるはずです」

2022年8月に、同社初のNon‐FIT太陽光のPPAを東京ガスと締結したレノバ。今後も、需要家や小売電気事業者等のニーズに応えるために、積極的に開発を進める。

※4 事業活動に必要な電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアチブ

「蓄電池」が電力系統の逼迫を救う

2つ目の重点領域は、蓄電池だ。再エネ電力の送電には、大手電力会社の電力系統を利用する必要があるが、再エネ導入が進んだ結果、電力系統は逼迫傾向だ。加えて、火力発電の燃料である天然ガスや石炭は世界情勢を受けて高騰しており、電力の価格が企業経営を圧迫している。

「電力系統の課題解決のため、私たちは蓄電池に注目しています。送電線に蓄電池をつなぎ、系統が混雑する昼間は蓄電して系統が空く夜に送電するのです」

太陽光や風力などの変動電源に蓄電池を組み合わせれば、需給安定化に役立ち、再エネの導入拡大を後押しすることだろう。

業種横断のオープンな議論で脱炭素社会へ

最後に、3つ目の重点領域であるグリーン燃料だ。火力発電は安定電源だが、CO2を発生させる。そこで重要になるのが燃料転換だ。「化石燃料の代わりに、水素やアンモニアを燃焼して発電できます。水素やアンモニアの製造時に再エネ電力を利用すれば、ライフサイクルのCO2排出量を抑えられます」。

すでにレノバは、国の実証事業に日立造船と共同参画し、未利用の再エネからグリーン水素を製造してグリーンアンモニアに転換するための調査を行っている。

「脱炭素は一事業者だけでは実現不可能です。異業種の企業や自治体とも連携を深め、再エネを核とする環境ビジネスにおける私たちの開発力や実績を生かして幅広い産業のグリーン化に貢献できればと思っています。多種多様な分野の皆様と『この製品をグリーン化したい』『この街をグリーン化したい』とオープンにディスカッションをしたいですね」

社会のグリーン・トランスフォーメーションを目指し、パートナーとともに挑戦するレノバから目が離せない。

お問い合わせ
株式会社レノバ(RENOVA)
関連ページ
脱炭素広告特集
日本企業の競争力は「脱炭素市場」に左右される