カーボンニュートラルに貢献「Low-E複層ガラス」 住まいの快適性や経済性を高めるエコガラス

日本は2050年までにカーボンニュートラル社会の実現を目指しているが、その中期目標である30年度には温室効果ガスを13年度比で46%削減するとしている。産業、運輸、エネルギー転換(発電所・製油所等)など、CO2排出量を部門別で見たとき、削減率66%という最も高い目標を設定されているのが「家庭部門」だ。家庭におけるエネルギー消費をいかに減らすか。そのカギとなるのが、住まいの開口部である窓の「ガラス」だ。

単板(1枚)ガラスをやめれば膨大なCO2削減に 

家庭の省エネ化を促進しCO2削減効果を高めるためには、住宅を暖冷房の使用が少なくて済む断熱性能の高いものにしていく必要がある。そのポイントとなるのが開口部だ。環境省の「2019年度(令和元年度)温室効果ガス排出量(確報値)」では、家庭部門におけるエネルギー消費用途の約4分の1が暖冷房だ。ところが、せっかく暖冷房で快適にコントロールした冷気・暖気の多くは、窓などの開口部から逃げてしまっている。言い換えれば、窓の断熱性能を向上させることで、暖冷房のエネルギーロスを抑え、CO2削減に貢献できるというわけだ。

板硝子協会
池田 直輝 氏 

板硝子協会※1の調査役、池田直輝氏は「京都議定書が発効した05年を契機に、断熱性能の高いLow-E複層ガラス(エコガラス※1)が普及し始めました。今般、脱炭素社会の実現にはエコガラスや、より高性能なエコガラスSといった断熱性の高い複層ガラスが、既設住宅へ普及する必要があると考えられています」と話す。 

既設住宅で使われている窓ガラスの多くは、単板ガラスだ。その名のとおり、1枚の板ガラスでできており、熱を伝えやすいという特徴がある。そのため、熱の出入りが大きく、夏は暑く、冬は寒くて結露が起こりやすい住環境を生む。

一方、複層ガラスとは、ガラスとガラスの間に空間を持たせたガラスを指す。この複層ガラスの内側に特殊な金属膜をコーティングして、ガラス表面の熱放射率を下げ(低放射:Low Emissivity)、熱の伝達を抑制するものがエコガラス、エコガラスSだ。

板硝子協会の調査では、20年の新築共同住宅におけるエコガラス等の戸数普及率は56.5%、新築一戸建てにおいては86.4%に達しているものの、既設住宅への普及はあまり進んでいないのが実情だ。

CO2排出量等の環境負荷を定量的に評価するための算定手法「ライフサイクルアセスメント」を用いた試算では、エコガラス、エコガラスSを既設住宅に普及させることによって、板ガラス製造時に発生するCO2量をはるかに上回るCO2削減効果が期待できるという結果を得ている(板硝子協会「板ガラス業界の地球温暖化対策の取組 カーボンニュートラル行動計画 2020年度実績報告」)。

しかも、現在居住可能な住宅4500万戸の窓ガラスを、すべてエコガラス等に置き換えたと仮定した場合、年間で約1700万トンのCO2削減効果があるという。20年の新設住宅の普及率から算出したCO2排出量の削減効果は24.9万トンなので、既設住宅の窓ガラスをエコガラス、エコガラスSに替えていくことがいかに重要であるかがわかるだろう。

夏涼しく、冬暖かく光熱費は3割減にも

実際に既設住宅の単板ガラスをエコガラス、エコガラスSに交換・装着したときのメリットは、CO2削減効果だけにとどまらない。池田氏は「住まいの快適性、健康被害予防、経済性、社会的価値の向上への貢献」という4つの利点を挙げる。

まず、住まいの断熱性能が上がれば、夏は涼しく、冬は暖かくという快適な住環境を実現できる。室温と外気温との差から生じる結露も抑えられるので、結露による窓枠の木額縁や壁紙の腐食、カーテンの黒カビを防ぐことにもつながるだろう。

健康被害の一例は、冬場のヒートショックだ。ヒートショックとは、暖房の利いた部屋からトイレや風呂場など寒い場所へ移動した際、急激な温度変化により血圧が上下に大きく変動し、体に負担がかかる現象のこと。住まいの断熱性を高めることで、部屋間の温度差が小さくなれば、体への負担を軽減することができる。

また、住まいの断熱性がよくなれば、必然的に暖冷房の使用が減り、光熱費もダウンする。板硝子協会が運営するエコガラス専用サイトに設けた「エコガラス省エネシミュレーション」では、現在の住居の窓ガラスをエコガラスに替えると、CO2排出量と暖冷房費はどれくらい変わるのかを試算できる。例えば東京、大阪などの太平洋側の平野部における戸建て住宅、単板ガラスで年間暖冷房費が約3.8万円かかっているケースでは、エコガラスに交換した場合は約2.6万円、エコガラスSなら約2.4万円と、3割以上の節約効果が見込まれるという。

4つ目のメリット、社会的価値の向上への貢献は、カーボンニュートラル社会の実現が私たち一人ひとりの取り組みにかかっているということだ。暮らしに密着した窓ガラスを替えることは、CO2削減に貢献するアクションだという意識を全国民で共有できたら、脱炭素社会への動きは加速するはずだ。

もちろん、エコガラス、エコガラスSへの交換には、コストも発生する。そこで経済産業省、国土交通省、環境省では、補助事業の実施や、税制優遇措置を講じている。また、自治体によっては助成事業を導入しているところもある。今の住まいを断熱性能の高い快適な家に転換するなら、こうした制度を活用しない手はないだろう。

21年8月に経済産業省・国土交通省・環境省より示された「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方に関するロードマップ」では、遅くとも30年までに新築される住宅の省エネ基準適合義務をZEH(ゼッチ)※2レベルに引き上げるとしている。

「このZEH基準を満たす窓ガラスは、高性能Low-E複層ガラスのエコガラスSが最も適しています」と池田氏は説く。住宅のリフォームなどを検討する際には、エコガラス、エコガラスSそれぞれの有効性を理解し、これらを導入することで脱炭素社会の実現に貢献していただければと思う。

※1 板硝子協会はAGC、日本板硝子、セントラル硝子の3社で構成されている。エコガラスは、この3社が製造するLow-E複層ガラスの共通呼称
 
※2 ZEHとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称。断熱性能等の向上および高性能設備の導入による省エネを実現したうえで、太陽光発電などで生活に必要なエネルギーをつくり出すことにより、年間の1次消費エネルギー量(空調・給湯・照明・換気)の収支をゼロとすることを目指した住宅を指す
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