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ライフ #人が集まる街 逃げる街

新型特急が変えるアクセス 下田市 [静岡県]

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  • 牧野 知弘 不動産事業プロデューサー

東京や神奈川で育った中高年世代であれば、たいへんなじみ深い観光地が静岡県の下田市だろう。下田市は伊豆半島の南部に位置する人口約2万1000人の街である。市域の約8割は山林や原野で人が住める場所は少なく、海岸線は総延長47キロメートルにも及ぶ「海辺の街」である。

下田は江戸時代には江戸と大坂を結ぶ海運の船が立ち寄る「風待ち港」として栄えた。この港町に大きな転機をもたらしたのは、ペリー提督率いる米海軍の黒船来航だ。1854年、日本は長きにわたった鎖国に幕を下ろし、日米和親条約を締結する。下田港は北海道松前藩の箱館とともに開港され、多くの外国人を受け入れることになった。ペリー艦隊も条約締結後、2カ月以上にわたって下田に滞在している。

米国はこの街に領事館を建設。総領事ハリスに仕えた日本人女性きちは、偏見や差別に苦しむ悲劇のヒロイン「唐人お吉」として、十一谷義三郎の小説をはじめ、多くの作品に描かれた。また、ノーベル文学賞作家・川端康成の小説『伊豆の踊子』では、孤独や憂鬱から逃れ一人旅に出た青年が、伊豆修善寺から湯ヶ島、天城峠を越えて下田に向かう旅芸人一座の踊り子と淡い恋に落ちるさまを描き、川端文学が描き出す日本人の心象風景が多くの人々の心を捉えた。

戦後、下田は東京や神奈川方面からの海水浴客でにぎわう。白砂がまぶしい下田の海岸は、白浜、多々戸(たたど)浜、入田浜、吉佐美(きさみ)大浜など小ぶりながらも美しい砂浜の海水浴場が続き、人気となった。温暖な気候に加え、蓮台寺温泉などの湯も楽しめ、大企業や学校などの保養所や研修所、ホテル・旅館などが数多く建てられた。

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