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混沌としてきたブレグジット 離脱協定の合意を阻害する2つの問題

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なかぞら・まな●1991年慶応義塾大学経済学部卒業、野村総合研究所に入社。97年野村アセットマネジメントでクレジットアナリストに。社債や国債を分析。モルガン・スタンレー証券、JPモルガン証券を経て、2008年10月からBNPパリバ証券クレジット調査部長。11年から現職。(撮影:尾形文繁)

英国民が国民投票でブレグジット(Brexit、欧州連合〈EU〉からの離脱)を選んで以降、2019年3月29日と定められたEUからの離脱日に向けて、準備が進められている。

しかし、EUと英国との離脱協定の合意へ向けた交渉は難航している。そのデッドラインは当初10月とされていたが、秒読みに入っても、移行期間を設けるなどのソフトブレグジットが模索され、一方で、「合意なき離脱」の可能性もゼロではなくなってきた。

かといって、英国側に「合意なき離脱」を前提とした準備は整っておらず、議会の大半もそれを望んでいない。EU条約下の諸機関に代わる新機関の設立、税関職員の新規雇用、新制度の導入も行われていない。にもかかわらず、離脱日まで残すところ半年を切った。

ブレグジットはどうなるのか。

離脱協定の合意を阻害している要因は未解決の二つの問題である。

第一に北アイルランドの扱い。EUは摩擦なき貿易が担保されない場合に、厳格な国境管理を導入したうえで、北アイルランドを事実上、関税同盟と単一市場に残留させることを提案したが、英国は、そうであればこれを一定期間は英国全体に適用すべきだとして拒否したままである。第二に、「政治上の宣言」をどうするか。離脱協定を補完し、将来のEUと英国の関係がどのようなものになるかを示す重要なコミットメントということになるが、英国が提案したチェッカーズ案(財とサービスとで異なる扱いとし、円滑な通関の取り決めをする)をEUが正式に拒否して以降、棚ざらし状態だ。

「合意なき離脱」となった場合に、金融市場への影響は大きくなることを見ておく必要がある。想定元本ベースで最大6000兆円のデリバティブが不安定な状態に置かれ、巨額の金融リスクが懸念され始めたのだ。

英国政府は在EUの金融機関が提供する決済サービスを英国の顧客が利用し続けることが可能なように、法制化を進めている。だが、一方のEU法では、19年3月以降に在EUの決済参加者が英国の決済サービスを用いると違法と見なされる。そのため、EUの決済参加者が既存の契約をどう扱うのか、法的にあいまいになるからだ。

巨額のリスクにさらされるなら、当該企業や金融機関にとって、信用にかかわる問題になりかねず、クレジット市場の重しとなろう。

金融サービス以外にも運輸、税関などで生じるリスクは高いと指摘されている。こうしたリスクに備え、EUは緊急立法措置(5日間でのルール変更が可能)も計画しているという。仮に「合意なき離脱」となった場合にも、最終段階まで緊急対応策の決定をEUが行うことを可能とし、影響を緩和できるという措置で、まさに力業にも見える。

実務的合意を含め、EUと英国は11月中旬までに最終的な離脱協定案に合意できるというのが市場の現在のコンセンサスである。

しかし、この協定案は内容にかかわらず議会承認が必要で、承認されなければ、交渉継続やEU基本条約第50条の期限延長、二度目の国民投票など次の手段を検討しなければならなくなる。ブレグジットには、まだいくつもの障害が立ちはだかっている。

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