サウジアラビアのムハンマド皇太子が外交、内政で新たな政策を次々と繰り出している。その動向は中東情勢に大きな影響を与える。昨年までサウジアラビア大使を務め、現在は退官した奥田紀宏氏に聞いた。
──サルマン国王の後継者であるムハンマド皇太子が改革に踏み出した理由は?
サウジアラビアを取り巻く環境が激変したことだ。米国のオバマ前政権はイランとの核合意によってイランへの経済制裁を解除したが、こうしたサウジにとっての死活問題でサウジを蚊帳の外に置いてしまった。トランプ政権は民主主義や人権よりも経済を優先するから、サウジが米国製兵器を大量に購入すれば一定の保護もするだろう。しかし安全保障や王制維持で、米国を全面的に信頼できる時代は去った。首脳会談を行うなどサウジがロシアに歴史的な急接近をしているのには、米国を牽制する狙いがある。
経済的な事情もある。原油価格が下落し、国民から税金を取らず、原油を当てにした豊かな財政も限界に来ている。今年1月から消費税が導入され、電力、ガス、水道の公共料金も大幅に上げられた。6月には国教であるイスラム教ワッハーブ派の教義で禁止されていた女性の自動車運転が解禁される。映画鑑賞やスポーツ観戦も認める流れだ。これまでサウジの教育はイスラム教一本やりで「来世の幸福」ばかりを求めてきた。「この世にも楽しいことがある」というメッセージを国民に送りつつある。だが政治的な民主化にはきつい制限があり、王族による政治は続く。
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