IFRS(国際財務報告基準)を導入する企業が増えている。早稲田大学の辻山栄子教授は「会計基準の国際統一には賛成だがIFRSには品質面で疑問がある」との立場を貫いてきた。収益を計上する際に、財やサービスについて支配の移転に着目する収益認識基準について聞いた。
──IFRSの収益認識基準では、「顧客から受け取る対価」を「履行義務の充足に即して」収益計上するとしています。実現した収入額を売り上げ計上する従来の会計と何が違うのでしょうか。
心配は無用だ。結局、伝統的な呼び方を変更しただけで、意味するところは従来の実務と同じ考え方だからだ。「収入額」は「顧客対価」に、「実現」は「履行義務の充足」に言い換えられた。だが、顧客対価とは収入額のことだし、履行義務が充足するのは財やサービスを顧客に引き渡したとき、すなわち収益が実現するときである。
「収益認識を根底から再定義しよう」と、IASB(国際会計基準審議会)において2002年に発足した収益認識プロジェクトの基準作成は、難航を極めた。収益についてのルールが決まるまで、10年以上の時間がかかった。このプロジェクトは、金融商品の会計に合わせる形で収益を再定義しようとする試みだった。ところが当初目指していた資産負債アプローチではなく、実質的には従来の収益費用アプローチに回帰した。
──実質的に元の考え方に戻ったのはなぜですか。
収益認識の方法を金融商品と同じ発想で根本的に変更しようとしたこと自体に最初から無理があったのだと思う。(IFRSによる再定義の)唯一の貢献は、収益認識に「支配の移転」という発想を取り入れた点かもしれない。
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