韓国の新聞・朝鮮日報に論説委員が執筆する「萬物相」というコラムがある。韓国語の苦手な筆者は、時にウェブの日本語版に目を通すだけ、熱心な読者とはとてもいえない。それでも玩味するにつけ、お国柄がしのばれて興味津々である。
少しさかのぼった5月1日付掲載の「無知と偏見、歴代米大統領の対韓認識」という一文が目にとまった。趣旨は5月9日におわった韓国大統領選挙の直前、次期大統領に望む外交、とりわけ対米関係への姿勢であって、確かにこのあたり、北朝鮮との関係や米韓同盟の帰趨など、文在寅(ムンジェイン)新政権には大きな課題である。
無知・偏見を正してきたか
しかしコラムが論じるほとんどの部分は、むしろ米国大統領の話、その対韓認識であった。要するに、米国は何も知らない、というにあって、そんな物知らずを相手にしなければならない新大統領への警告なのである。
米国に関するかぎり、おそらく言いたいことにまちがいはない。日露戦争時のセオドア・ルーズベルト大統領からはじまって、百十五年後・今のトランプにいたるまで、朝鮮半島・韓国に対する「無知」「偏見」はそのとおりなのだろう。そこは小欄でも、述べたことがあった。
しかし外国語と同じく、外国の事情というのはよくわからないものである。どんな人でも多かれ少なかれ、外国には「無知」なものであり、そこに「偏見」はまぬかれまい。
米国大統領は世界のリーダーだから、確かにその「無知」「偏見」いかんが他国・世界の運命をも左右する。影響を受ける相手の官民が、時と場合に応じて説得しなければならない。「萬物相」も、歴代大統領に実践してきた韓国側の説明説得をくわしく述べ、今後その必要を強調する。
しかしどうも合点がいかない。米韓同盟の危機をもたらす「無知」「偏見」が何度も問題となり、そのたび説得を重ねてきたはずである。にもかかわらず、今なお改善はない。またぞろ説得の必要を叫ばねばならないのは、むしろ別に問題があるのではないか。そこに立ち入ろうとしない「萬物相」の論法・態度も、腑に落ちない。
そこで読みなおしてみると、文中くりかえし、日本が登場することに気がついた。米国に「偏見」を「注入してきた」とか、「利益を得ようとする勢力」であるなど、日本を徹頭徹尾、半島に野心をもった存在とみなしている。
日本を利用する韓国紙
こうした日本に対する韓国の「無知」「偏見」は、いまに始まったことではない。けれども同じ文で、韓国に対する米国の「無知」「偏見」を批判するところに、韓国知識人の思考様式がよくあらわれている。
自らの「無知」「偏見」は不問に付し、相手のそればかりあげつらう。これでは、相互の立場を尊重した説明説得とはいえまい。カーターに対する朴正煕(パクチョンヒ)の首脳会談を「一方的」な「講義」と譬喩(ひゆ)したのはその典型、物知らずに教えてやるという教育・指導の姿勢・態度にほかならない。
自らの「無知」「偏見」を自覚しながらのことなら独善というべきだし、自覚していないのなら、もっと始末が悪い。外国の立場の正誤を一方的に判定する韓国独自の正義は、前号の小欄で述べたところである。「萬物相」の文章もどうやら、その一類型といってよい。






















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