有料会員限定

過剰反応の可能性も 米雇用統計ショックは

✎ 1〜 ✎ 71 ✎ 72 ✎ 73 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小

今月3日に発表された5月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが3.8万人にとどまった。過去1年の平均が21.9万人だったことを考慮すると、衝撃的な落ち込みだ。

4月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が突然、タカ派色を強めたため、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)による早期利上げ観測が高まっていた。だが、そうした米利上げ観測は修正を余儀なくされ、米金利が低下する中、為替市場では米ドルがほぼ全面安となった。一時は111円台に乗せたドル円に至っては、一気に106円台へ値崩れした。

過去に大幅な上方修正

ただ、今回の雇用者数の落ち込みは統計的なエラーの可能性もある。米経済と雇用が2008年のリーマン危機からおおむね立ち直った11年以降を振り返ると、新規雇用者数が10万人を下回ったことは10回あるが(表1)、そのうちさらに下方修正されたのは13年12月の1回だけで、残り9回の事例はその後上方修正されている。修正幅は平均で6.4万人増だった。11年6月に至っては、当初1.8万人と発表されたが、最終的には23.5万人に上方修正された。

[表1]
拡大する

もし3日発表の数字が過去平均と同じ幅で上方修正されるならば、5月の非農業部門雇用者数の伸びは10.2万人となる。決して強い数字ではないが、FRBが金融引き締めを放棄しなければならないほどの弱さではない。そもそも雇用統計は変動幅の大きい、扱いにくいデータなのだ。一方、今回5.0%から約8年半ぶりの低水準である4.7%へ低下した失業率はほとんど修正されることはない。労働参加率の低下が失業率低下をもたらした点を割り引く必要はあるが、米雇用情勢は底堅さを維持しているとの判断が自然だろう。

新規雇用10万人割れのケースの中で、ドル円の前日比の下落幅は平均0.12円、最大でも0.64円だった。今回の下落幅(2.34円)は群を抜いて大きい。雇用統計当日の終値からドル円は1週間で平均0.16円上昇し、下落したケースでも1.51円が最大だ。次の雇用統計までの1カ月間を見ると平均0.23円の下落。最大でも2.07円の下落だ。今回は向こう1カ月ほどで想定すべき下落幅を、すでに織り込んでしまったようにも見える。

なお、ユーロドルは雇用統計の発表当日、0.0216ドル反発した(ユーロ高ドル安となった)が、過去10回のユーロ高ドル安の前日比の値幅平均は0.0018ドルであり、最大でも0.0185ドルだった。雇用統計当日の終値からの1週間と1カ月の変化幅の平均はそれぞれ0.0067ドル、0.0109ドルの下落(ユーロ安ドル高)であった。こちらも雇用統計発表の当日に過剰反応してしまった可能性を感じさせる。

来月の次回雇用統計が近づくにつれて、しだいに市場は5月統計の上方修正リスクを警戒し始めよう。今月14~15日のFOMC後に米金利上昇を伴う米ドル高が始まる可能性さえある。しかも雇用統計下振れにもかかわらず、金利低下を好感し、米株は下げ渋った。新興国市場や豪ドルをはじめとした資源国通貨が高騰するなど、市場のリスク選好は明らかに回復した。要は、ドル円が109円前後で推移していた、4月FOMC議事録発表前のマイルドなリスクオンの状態に市場が回帰したのだ。このまま直近安値(1ドル=105.5円前後)を割り込み、過去半年続く下落基調に復帰するとは思えない。

関連記事
トピックボードAD