特別行政区を設置せよ パレスチナの和平実現へ
中東でシリア情勢が混沌とする中、パレスチナ問題も解決の道筋が見えない状態が続いている。唯一の解決策と期待されてきたのが、パレスチナが独立国家を樹立し、イスラエルとの共存を目指す「2国家構想」である。しかし同構想は今や崩壊寸前の状態にある。
打撃となったのは、2014年夏のイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区での「境界防衛」作戦敢行だった。イスラエルの容赦ない攻撃で、1500人以上の市民が命を奪われ、10万人以上が住居を失ったとされる。ケリー米国務長官などが事態の沈静化を働きかけたが、いまだにイスラエルとパレスチナのにらみ合いは続いたままだ。
いずれパレスチナ人がイスラエルで、これまでなかった選挙権を獲得しようと声を上げ始めるかもしれない。仮にそうなれば激しい衝突が起こるおそれもある。同地域で社会秩序をどう取り戻すか、建設的な方法は見えづらいままだ。
解決へのヒントはある。1994年にイスラエルがヨルダンとの平和条約締結後に提案した、国境を越えた「共同経済圏」である。その提案は「JGIP」(ヨルダン域内の合弁工業特区)として結実した。同特区はヨルダン川流域に広がる約1.4平方キロメートルの経済特区で、イスラエルとヨルダンの金融機関が共存する。
JGIPはイスラエルの実業家らの支持が追い風となり、近年著しい成長を遂げている。13年にはイスラエル政府が3400万ドルを投資、ヨルダン政府も資金面でのサポートを続ける。世界中の経済特区と同様、関税など税金が免除される。
イスラエルとパレスチナにおいても、同じような特別行政区を設けてはどうか。特別行政区では当初、イスラエル人とパレスチナ人の労働者がそれぞれ、自分が住む地域から通い、共同事業を営むことになる。しかし何年もすれば、徐々に事業運営の責任が増え、多くの人が特別行政区内に住み始めるだろう。
特別行政区に求められるのは高い自治権だ。そこには学校や医療施設などの社会インフラが不可欠だが、管理・運営は経済活性化と人種を超えたコミュニティ構築への意欲がある居住者に任せるべきだ。
モデルとなるのは、米国のニューヨーク・ブロンクスにある同国最大の共同住宅「コープシティ」である。住人が共同で管理・運営し、警察機関なども自主運営している。米国ではこうしたCID(共通利害型住宅開発)と呼ばれる手法が広がっている。こうした試みをヒントに、中東でも異人種間の新たな連携の構築が望まれている。
イスラエルとパレスチナの特別行政区が仮に設置できれば、事業を起こす人材はすでに育っている。パレスチナのビジネスリーダーとイスラエルの富豪が12年に共同で設立した組織に「BTI」がある。そこには300人の会員がおり、事業の売り上げはすでにGDP(国内総生産)合計の約3割を占める。彼らなら特別行政区で最初の波を引き起こせる。
特別行政区では基本的な統治は居住者が行うが、外部のサポートがあってもよい。米国はエジプトとヨルダンで特別行政区を運営した経験があり、主導的な立場を担えるはずだ。米国以外の政府や他国の慈善家が補助金を出し合ってもよい。
当然、課題もある。一つが治安だ。当初は特別行政区の境界線に検問所を置く必要があるだろう。場所についても、少なくともイスラエルとパレスチナの宗教的な聖地や居留地、軍事施設から離す必要がある。
最初にできる特別行政区は、経済と政治の融合のモデルとならなければならない。イスラエル政府とパレスチナ自治政府がその点で連携できたら、失敗とされた「2国家構想」にもあらためて希望が見える。





















