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日銀、再び追加緩和か 10月最終週が台風の目に 米FOMC、鉱工業生産が決定会合を左右する

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市場の虚を突いた2014年10月末の日本銀行の追加緩和から1年が経とうとしているが、再び追加緩和の可能性が高まってきた。

中国経済減速などの悪影響が懸念される中、9月14~15日の金融政策決定会合で日銀は現状維持を決めたが、その理由は次のようなものだ。

企業収益は過去最高水準にあり、投資意欲は前向き。さらに雇用・所得環境も改善しているため、個人消費増の好循環もいずれ始まる──。

[図1]
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焦点の物価上昇率に関しては、(図1)のように生鮮食品を除いた通常のコアCPI(消費者物価指数)は7月に前年同月比ゼロ%まで低下したが、生鮮食品とエネルギーを除いた新型コアCPIはむしろ1%弱まで高まっていることを強調した。原油安効果はどこかで一巡するので、コアCPIはいずれ新型コアCPIの水準に近づくという説明だ。

実際、円安により食品や日用品などの輸入物価が上昇しており、日銀の説明に違和感は小さい。ただ問題は、その生活必需品の物価上昇が低所得層の消費低迷の原因となり、ひいては景気の足腰の弱さにつながっていることだ。

日銀自らは語らないが、追加緩和を避けたい本音として、それによってさらに大きく円安が進む事態を望んでいないことが挙げられる。

また、政策手段にも制約がある。(図2)のように、量的緩和策では国債発行額での日銀購入シェアはすでに約9割に達し、既発行分からの購入でもGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の売却が一巡した。国債購入拡大には限界がある。

[図2]
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しかしこうした日銀の姿勢を変える出来事が顕在化しそうな雲行きだ。ほかでもない、国内景気の腰折れである。15年4~6月の実質GDP(国内総生産)成長率は個人消費と純輸出の低迷により1.2%減(前期比年率)と3四半期ぶりのマイナスとなったが、続く7~9月のマイナス成長を予想する声が出始めた。

7月以降の鉱工業生産の低迷や中国経済減速の影響が背景にあり、追加緩和の可能性について慎重なメリルリンチ日本証券の吉川雅幸チーフエコノミストも「7~9月のGDPも崩れるなら、追加緩和の可能性は出てくる」と話す。景気下降が続けば、コアCPI上昇の予想は説得力を失う。

安倍晋三政権との関係も気になるところだ。目下、同政権にとって最大の課題は16年夏の参議院選挙。安全保障法制の影響で支持率が低下したが、追加緩和となれば景気テコ入れだけでなく、政権の待望する株高を演出することが可能だ。14年11月、追加緩和後の株高の中で安倍首相が解散総選挙に動いたことは記憶に新しい。

安倍政権の経済政策のスポークスマン・本田悦朗内閣官房参与は最近、メディアで追加緩和の必要性に言及し始めた。先述のように限界説がささやかれる量的緩和の手段についても、ETF(上場投資信託)の購入拡大や財投債・地方債の購入などがあると指摘している。

こうした流れが現実化するなら、最も注目されるのは10月の最終週だ。この週は27~28日に利上げが焦点のFOMC(米国連邦公開市場委員会)があり、国内では29日にGDPに影響を与える鉱工業生産9月分の発表、そして30日に日銀の金融政策決定会合がある。7~9月のGDPの行方を見極めたうえで、日銀は追加緩和を決める可能性がある。

コアCPI 価格変動の大きい生鮮食品を除いた消費者物価指数。日銀の金融政策では、コアCPI上昇率の2%達成が目標。
量的緩和策 市中からの国債購入を主な手段にマネタリーベース(現金通貨と日銀当座預金)拡大を狙う金融政策の1つ。
鉱工業生産 鉱業、製造業の生産活動を総合的に表す経済指標。生産面からのGDP推計において重要な位置を占める。
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