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本業では儲からない構造に 追い込まれる地域金融機関

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日本銀行の異次元緩和政策が、地域金融機関の経営を追い詰めている。

8月14日、大久保勉参議院議員の国会質問に対する回答により、実に48もの地域金融機関の総資金利ザヤが2015年3月期決算でマイナスに陥っていることがわかった(図表1)。全529機関のうち9%に達する。

[図表1]
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総資金利ザヤは、貸し出しや有価証券運用で得られる資金運用利回りから、営業経費を含む預金などの資金調達原価を引いたもの。いわば金融機関の根幹となる事業の採算を示す指標だが、それが地域金融機関の1割弱でマイナスになっているというのだ。

総資金利ザヤがマイナスとなっても投資信託の販売手数料やM&Aの仲介手数料などの収入が増えれば、収益は確保できる。実際、メガバンクや大手の地方銀行はそうして高水準の利益をたたき出している。しかし、手数料を払ってくれるような顧客基盤や手数料を得るための営業体制が十分でない信用金庫や信用組合は、総資金利ザヤのマイナスが死活問題となる。

都内の信金幹部は言う。「日銀の異次元緩和のせいで収益が厳しい」。日銀は異次元緩和で大量の国債を買う。その結果、市場金利が低下する。つれて貸出金利も低下。メガバンクや大手地方銀行は金利低下を貸出量の拡大で補おうと、これまで取引のなかった優良中小企業にも低い金利を提示する。信用金庫も対抗せざるをえない。有価証券運用利回りはもっと低いからだ。こうして終わりの見えない金利低下競争が続いている。

地域金融機関の疲弊度は増している。総資金利ザヤがマイナスとなっている地域金融機関の数は、12年3月期32、13年3月期34、14年3月期33(大久保議員の2月の質問に対する回答)。それが15年3月期は48へと、一気に1.5倍に急増した。

[図表2]
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「昨年10月の日銀追加緩和が余計だった」と地方銀行幹部。金利が一段と低下し、上昇に転じるのは当分先、という認識が借り手と貸手の双方に広がった。

「怖いのは、数年後に来るであろう金利の上昇局面だ」と信金幹部は打ち明ける。総資金利ザヤがマイナスとなっている地域金融機関も足元の決算では黒字の利益を確保しているところが大半。債券売却益などで本業のマイナスをカバーしているからだ。

しかし、日銀の政策が成果を上げれば、いずれ金利は上昇する。そうなれば債券は評価損を抱え、利益を捻出する打ち出の小づちとはなりえなくなる。また、金利上昇局面では、貸出金利よりも先に預金金利を上げる必要に迫られる。貸出金利の引き上げまで時間がかかり収益の悪化する金融機関が、続出するだろう。さらに今後、地方の多くは人口減少が予想され、預金が思うように集まらない懸念もある。金利の急上昇で、預金が短期間で流出すれば、最悪の場合、流動性危機といった事態に陥るところも出かねない。

地域金融機関は追い込まれている。

異次元緩和政策 日本銀行が2013年4月から取っている政策。従来よりも長期の国債を大量に購入することでデフレ脱却を狙う。
資金調達原価 預金を中心に、社債など外部負債も含めた資金の調達利回り。手数料ビジネスにかかわる経費も含む。
金利の上昇局面 日本銀行は2016年度前半ごろに、現在ゼロ%近傍の物価上昇率が、目標とする2%に達すると見ている。
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