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どのように調整されるのか 「四つのくちばし」は

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図表1は米国、日本、中国、ユーロ圏の株式市場とGDP(国内総生産)の動向を比較してみたものだ。「四つのくちばし」のように見える。いずれも上を走るのが株価で、下で鈍い動きを見せるのが名目GDPである。各国・地域が金融緩和に踏み切る前の株価とGDPをそれぞれ100としている。ただし米国については、名目GDPが世界金融危機前の最高水準を更新して実体経済が「独り立ち」した2010年4~6月期を100とした。

[図表1]
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これからわかる重要な点は三つある。第一に、世界の大国がいずれも大規模な金融緩和を実施したこと。第二に、どの国も株価は見事に上がったが、いずれも経済の実力は低いままであること。第三に、後に緩和した国ほど、実体経済と株価との乖離が著しいこと。言い換えるならば、「弾薬が尽きつつある中、だんだんと勝ち目の薄い作戦が実行されている」ように思える。

金融市場は実体経済を「先読み」して動くといわれるが、この言葉の裏には、実体経済はやがて金融市場に追いつくという前提がある。実体経済が株高に見合うほどに過熱せず低温のままならば、金融市場のほうがやがて、低めの経済の実力に収斂することになろう。はたして今後、実体経済は、株価に追いつけるのだろうか。

米国では、雇用が増えた割にGDPが伸びていない。家計調査ベースの雇用統計を基に、最近3回の就業者数の増加局面を比較すると、就業者1人当たりの実質GDPの伸びは、足元が最も小さい。ITバブル崩壊前の増加局面では年率2.0%の伸びが、世界金融危機前の局面では同1.5%の伸びがそれぞれ観察されたが、足元では同0.9%にとどまる。米国ではベビーブーマー世代の退職により労働力人口の伸びと潜在成長率が鈍化しているが、就業者1人当たりの実質GDPはその影響を受けない指標である。

生産性(1人当たりGDP)は、生産技術や教育水準など供給サイドの問題と思われがちだが、それは経済が実力付近を推移しているときの話である。総需要が供給能力を下回っているような(ケインズ的な)状況では、需要の低迷=GDPの低迷となり、生産性に鈍化圧力がかかる。

金融緩和が招く不安定性

気掛かりなのは、物価の動向から景気の勢いはまだ鈍いと判断されるのに、住宅バブルに踊った時期と今回の局面とで、就業者の増加ペースが同程度であること。例えるならば「いっぱい客が来ると思って人を雇ったのに、思ったほど客が来ない」状況だ。これが続くと「来店する客の数に合わせて従業員を減らす、あるいは追加の雇用をやめる」、つまり、生産性を元に戻すために就業者数のほうが調整される可能性がある。

しかも米国連邦準備制度理事会(FRB)が利上げすることは、「(まだまだ鈍い)来店客数の伸びを抑える」方向に作用する。実体経済が株価に追いつけない可能性が残るほか、利上げできるかどうか、あるいは、利上げできるとしてもどの程度実施できるのかをめぐって、市場では今後、不確実性が高まるだろう。

ユーロ圏に目を転じると、欧州経済が本格回復する条件は、ユーロがなくなるか、ドイツが過剰な貯蓄をやめるか、ドイツが南欧諸国に緊縮策を強いるのをやめるかのいずれかである。だが、こうした状況は生じそうにない。

中国については、筆者の試算で1~3月期の名目GDP成長率が前期比年率でわずか1%にとどまったとみられる。

金融緩和が実体経済に与える効果は乏しい一方、市場の安定を損ない、実体経済を不安定にするリスクが高まっているのではないか、と懸念される。

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