キタムラがリストラなしに再生を成功できた理由 企業を芯から元気にする「リヴァンプ」と共に

「カメラのキタムラ」「スタジオマリオ」などを展開する写真用品店大手のキタムラ。経営不振に陥り、2018年にはカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)のTOB(株式公開買い付け)によりCCCの子会社となった(現在は関連会社)。その後はV字回復し、黒字となり、4期連続で増益の見込み、今期は創業以来最高益となる見込みだ。注目すべきは、再生に当たってリストラを行わず、人を活かす前提で戦略を立て、実行していったことだ。フォトプリント市場が成熟する中で、生産性の改善や付加価値の高い商品・サービスを創出したDXの取り組みも注目に値する。

特別対談
創業家オーナーからCCCグループへ事業を承継

「CCCの増田さんとは20年来の付き合いがありました。事業の承継を頼むなら、増田さんしかいないと考えていました」とキタムラのファウンダー・名誉会長の北村正志氏は振り返る。

実際にキタムラは、CCCとのビジネス面でのパートナーシップも長かった。2004年にはCCCが運営するポイントサービス「Tポイント」に加盟。その後はCCCのフランチャイジーとして、CDやDVDレンタルの「TSUTAYA」も展開してきた。

キタムラ ファウンダー名誉会長
北村 正志氏

「05年には増田さんに、当社の社外取締役になってほしいとお願いして就任してもらいました」と北村氏は話す。

大きな苦境に直面したのは16年のことだ。「熊本地震が発生した影響で、デジタルカメラの減産があり、カメラ販売も大きく落ち込みました」(北村氏)。17年3月期の決算は上場以来で初めて赤字になった。「私はそのとき76歳で、ここから頑張っても会社は本質的にはよくならないだろう、自分が辞めるのがいちばんいい、と思いました」と北村氏は語る。

「カメラのキタムラ」は北村氏の父親が高知市に前身のカメラ店を設立したことに始まり、国内有数のカメラ店チェーンに育てた。自身の人生にも重なる会社の経営から退くことは断腸の思いだったに違いない。

カルチュア・コンビニエンス・クラブ
代表取締役社長兼CEO
増田 宗昭氏

CCC代表取締役社長兼CEOの増田宗昭氏は次のように語る。「キタムラ社が赤字になったときに、北村さんから手紙をいただきました。そこには『お頼み候』と書かれていました。『お頼み候』と言われれば、僕も断るわけにはいかないと、再生をお引き受けしたのです」。

そこで、CCC副社長だった武田宣氏がキタムラの取締役会長に就任し、18年にはTOBによりキタムラはCCCの子会社になった。増田氏は「再生の座組みをつくるに当たって、リヴァンプにサポートしてもらおうと考えました。私がリヴァンプの社外取締役を務めていたということもありますが、何より同社はそれまでいくつもの成功事例がありました」と話す。

リヴァンプは、企業の経営支援や事業再生などを手がけるが、「企業を芯から元気にする」という企業理念の下、クライアント企業と同じ船に乗り、同じ汗をかき、プロセス(業務)を磨くことを最重要視している点に大きな特色がある。

北村氏は次のように語る。「リヴァンプからも斎藤さんが当初執行役員としてキタムラに来られた。私は退いた以上、口は出すまいと決めていました。ただし、増田さん・武田さんと約束した『雇用だけは守ってくれ』とお願いしました」。

TOBなどによる再生案件の場合、大規模なリストラや経営陣の総入れ替えなどを行うことが一般的だ。しかし、CCCとリヴァンプは違った。武田氏は会長に就任したものの、プロパーの浜田宏幸社長は留任とし、従業員もそのまま活かす戦略を組んだのである。

リヴァンプ取締役 執行役員CMOの斎藤武一郎氏はその理由について次のように語る。「日本企業は生産性が低いといわれますが、それは既得権益を守るだけの働かない管理職が多いからです。一方、キタムラは約1000店舗で働くスタッフが主役の会社です。この人たちに付加価値や新しい役割を与えることで、必ず再生ができると考えていました」。

その後の成果は前述したとおりである。4期連続増益の見込みだ。増田氏は「CCCはあくまでも企画会社。お付き合いする企業の価値を上げるのが私たちの役割であり、それを実現できたのはうれしい」と話す。

その立役者でもあるリヴァンプ代表取締役 社長執行役員CEOの湯浅智之氏は「みんなが『キタムラをよくする』という同志。同志で同じ思いを持って考え、行動できたことは大きい」と話す。

構造改革と顧客価値創造を両輪として推進

20年7月、「カメラの聖地・新宿」に写真とカメラにまつわるライフスタイル提案を行う新しいカメラ専門店がオープンした。その名は「新宿 北村写真機店」。地下1階から地上6階まで全7フロアで構成される店内には、新品のカメラやレンズ売場のほか、ドイツの高級カメラ「ライカ」を中心としたヴィンテージサロン、修理や日々のメンテナンスまでサポートするサービスカウンター、写真展示を行うイベントスペースなども備える。22年4月には、7階にも店舗を増床し、スタジオマリオと新業態のセルフ写真館も開業予定だ。

キタムラ・ホールディングス
代表取締役 社長執行役員
キタムラ 代表取締役会長
武田 宣氏

同店を運営するキタムラの会長、武田氏は「写真は斜陽産業と見られがちですが、私はまだまだ可能性があると感じています。例えば、『ライカ』などの高級機器は、富裕層に高いニーズがあります。また、『カメラ女子』と呼ばれる写真好きの若い女性にはフィルムカメラが人気です。『写真の聖地』といわれる新宿の都心で、『北村写真機店』を、写真の可能性を世に知らしめる旗艦店にしたいと考えています」と力を込める。新型コロナが落ち着き、インバウンド(訪日外国人)需要が回復すれば、「新宿に北村写真機店」あり、と新たな観光スポットになる可能性もある。

武田氏はCCCの副社長からキタムラの経営に参画。キタムラ会長のほか、19年4月に新経営体制が発足したキタムラ・ホールディングス社長も務める。就任後は見事にV字回復を実現したが「当初は、この案件は難易度が高い、大変な仕事になると感じました。リヴァンプにも、相当な決意を持って取り組んでほしいとお伝えし、思いを共有してもらいました」と振り返る。

一方で武田氏は「私はカメラに関しては素人でした」と語る。それにもかかわらずキタムラの再建を成し遂げることができた理由はどこにあったのか。「キタムラには『親切が先』という価値観があります。それが、80年以上にわたり培われ、お客様からの信頼につながっている。その文化は大切にしなければならないと感じましたし、何よりそれがキタムラの差別化や優位性につながると感じました」。リストラを行わず、人材を徹底的に活かすことを重視したのも、その考えに基づいているという。

「大切なのは、言葉だけでなく心の底からキタムラ文化、フォトライフの価値にリスペクトすることです。プロパー社員の納得なくして、会社は絶対によくならないからです」と武田氏は語る。

ドメインを「リユース」「スタジオ」「思い出」に入れ替え

再建に着手する前のキタムラは、写真プリントとカメラ・スマートフォン(スマホ)販売が主だった。写真プリントや新品のカメラは市場そのものが縮小している。スマホ販売はニーズはあるものの、値引き販売規制などで伸び悩んでいる。その課題を解決するために、どのような手を打ったのか。

リヴァンプ 取締役
執行役員CMO
斎藤 武一郎氏

リヴァンプの斎藤氏は、次のように答える。「まず、事業の柱を大きく見直し、『リユース』『スタジオ』『思い出サービス』の3つにシフトすべき。さらに、マルチタスクによる生産性の向上を目指すべきと提案しました」。

「リユース」は中古カメラの販売、「スタジオ」は子ども向け写真館の「スタジオマリオ」を、「思い出サービス」は「ビデオやフィルムのデータ化」や「スマホ写真データのクラウド化」など個人向けのデジタルアーカイブ事業である。なぜその3つなのか。「いずれも粗利率が高いからです。さらに商品サービスを改善することで客単価も伸ばすことができます」(斎藤氏)。

もう1つの「マルチタスク」とは、「カメラのキタムラ」と「スタジオマリオ」併設店などにおいて複数の業務をこなす体制づくりだ。「『スタジオマリオ』は土日祝日の利用がほとんどで、平日の利用は少ないという傾向があります。店舗によっては、平日はスタジオを休みにし、その間はキタムラの仕事をするようにしました」と斎藤氏は話す。

実際に、この3つの領域やマルチタスクに力を入れることで、店舗の売り上げや利益も向上し、全社的な黒字化も実現した。大胆なドメイン変革が功を奏したといえるが、社員の抵抗はなかったのだろうか。

「写真やカメラにこだわりが強い社員も多く、当初は反対意見もありました。しかし、実際に利益に貢献していることがわかってくると、しだいに気持ちが変わってきたようです」と斎藤氏は話す。

その一方で、リヴァンプでは、コミュニケーションを重視したきめ細かなサポートも現場と一体となって入念に行った。「毎月の事業ごとの全国ブロック長会では毎回1時間、方針の説明を行います。これは動画で店舗にも配信されました。いずれも、決まった方針を報告するだけでなく、方針をつくるうえでの課題や試行錯誤していることなどを共有し、議論しながら進めていきました」(斎藤氏)。これらの取り組みにより、全店舗の社員が納得感を持って、業務に注力できるようになったわけだ。

武田氏はこれにおけるリヴァンプの活動について、「リヴァンプは経営者と同じ目線で危機感を共有するだけでなく、現場に入り、親身に熱心にやってくれました。コロナ禍では、私も社員も不安でしたが、過去例のない事象に向き合い、私たちと一緒に悩み、アイデアを出してくれました。このようなパートナーシップには大いに感謝しています」と語る。

デジタル組織を拡大しDXを社内に浸透させる

「キタムラの再生のもう1つのポイントはDX(デジタルトランスフォーメーション)です」と斎藤氏は話す。

今の時代、変革にDXが不要だと考える企業経営者は少ないだろう。むしろバズワード化しているが、本当の意味でDXに成功している企業は少ない。「攻めのDX(商品開発や店舗・ネット連動、顧客基盤統合、CRMなど)と、守りのDX(業務改善、数字の可視化、コスト削減など)を同時にスピーディーに推進する必要があります。そのためにカギになるのが人材です」と斎藤氏は指摘する。

斎藤氏はデジタルシフトを大胆に実行するために、思い切った組織改革を提案。これまでバラバラだった、ECやデジタルマーケ部や情報システム部を、1つの組織に統合した。白羽の矢が立ったのが柳沢啓氏(現・取締役常務執行役員 CDO・デジタル推進本部長)だ。「柳沢氏はプロパー社員として現場の業務にも精通し、かつデジタルの経験も能力も高い、世にも希有なハイブリッド人材です」(斎藤氏)。

キタムラ 取締役 常務執行役員 CDO
デジタル推進本部長
柳沢 啓氏

キタムラでは北村氏が勇退する前から、若手社員を責任ある役職に積極的に登用してきた。柳沢氏もその一人だ。「新体制になり、デジタルマーケティング、コールセンターの責任者を、最終的には情報システム部までも統合したデジタル推進本部を任されることになりました」と話す。難易度は高くなったが、それだけやりがいのあるテーマだったと言う。

興味深いデータがある。柳沢氏は「キタムラはBOPIS(バイ・オンライン・ピックアップ・イン・ストア)率が非常に高いのが特徴です。キタムラの顧客特徴を分析し、よりお客様が利用しやすいオムニチャネルの仕組みをスピード重視で構築しました。EC注文比率は(当初は2割だったものの)今では全体の5割を超え、売上高は400億円に達しています」と話す。BOPISは、ECで購入した商品を店舗で受け取ることをいう。

柳沢氏は「当社では中古カメラなどの高額商品を購入されるお客様に対して、ネットで比較検討した後、全国にある在庫を最寄りの店舗に集め、実際に触って検討していただきます」と話す。キタムラ独自のリテールテックの仕組みといえるが、これが可能になるのも、全国約1000店舗のネットワークと、カメラに精通した人材を擁しているからだ。

柳沢氏は「中には、中古カメラに詳しい店員がいない店舗もあります。従来は詳しい店員のいる店舗を紹介していましたが、現在は商品マスターを充実させるとともに、買い取りのリモート化、AI(人工知能)による査定などを導入し、どの店舗でも買い取りや販売ができるようになっています」と話す。循環型ビジネスが注目されている中、大きなビジネスに成長する可能性があるだろう。

柳沢氏はさらに「この仕組みが回るようになると、カメラだけでなく、中古の時計やスマホなどの買い取り・販売もできるようになります。さらにはこのプラットフォームを外販することもできるでしょう。キタムラのオムニチャネルのシステムは先端的で、リテールテック企業なんです。これを生かし、次はリユーステックというものを確立したい。リユースには、ダイナミックプライシングやAI買い取りなどテクノロジーによる伸びしろが大きい。キタムラを真にDXの強い会社に書き換えたいと思っています」と期待を語る。

「攻めのDX」「守りのDX」をボーダーレスに進める

柳沢氏は、「リヴァンプが入ることで、社内にDXの知見が増えて、これまで以上にDXへの投資を増やすことができました。また、リヴァンプがDXの効果を可視化し、即断即決でプロジェクトが増えていきました」と話す。

小売業では現場主義でDXの浸透が難しいとされるが、キタムラはその課題を克服し、独自のDXを推進しているわけだ。新たな成果も生まれている。デジタル推進部部長の上田寛人氏はリクルートから転職して入社した。

斎藤氏曰(いわ)く「上田さんは、デジタルマーケティングの先端企業から転職したプロです。彼に、キタムラという伝統的な企業を土俵に自由に企画をしてもらうことで、すばらしい成果が出ると考えました」。前職でもデジタルマーケティングなどの業務に携わっていたが、キタムラ入社後はいわゆる「攻めのDX」を担当している。

キタムラ デジタル推進部 部長
上田 寛人氏

「私のモットーは、とにかく手数を増やすことです。新しいサービスをアジャイルで開発し、即座にトライアルできるのもキタムラのいいところでやりがいもあります。直近では『宛名データ化サービス』を立ち上げました」と上田氏は話す。

「宛名データ化サービス」は、もらった年賀状を近くの店舗に預けるだけで、データ化してくれるサービスで、手書きの年賀状も受け付け可能だ。今年作成した宛名データは来年以降の年賀状作成時にも利用できる。

「初年度から数億円の売り上げになりました。小売業はお客様と直結しているので、わずかな改善でもすぐに数字に表れます」(上田氏)

キタムラでは「守りのDX」も重視している。リヴァンプ 業務コンサルティング シニア・マネージャーの徳田浩明氏は、キタムラの経営企画部門に常駐して、業務改革プロジェクトを支援している。

リヴァンプ 業務コンサルティング
シニア・マネージャー
徳田 浩明氏

「経営企画では、キタムラのスタッフと共に、いわゆる予実管理などのほか、KPI(重要業績評価指標)を達成するための数字の可視化や業務改革のプロジェクト管理なども担っています。経営企画部門のモットーはやるべきKPIを絞り込み、徹底的にやりきることです。われわれは初期にKPIそのものや乱立する帳票・システムの集中と選択を行いました。その後は再設計したKPIについて業務改善と効果検証を繰り返しながら、並行して可視化および分析基盤のDX化を進め、店舗や本部が見やすい環境を構築し徹底力を上げることに努めています。今のキタムラは決めたKPIを達成しようとする意欲が高く、数字の可視化とセットで現場力が日々上がっているのを感じます」と徳田氏は自信を見せる。

若手社員に責任ある仕事を任せるキタムラ。リヴァンプのスタッフも若い社員が現場で一緒になって汗をかき、行動している。廣澤謙太氏も、キタムラに常駐し、日々の業務推進を支援している。

リヴァンプ 業務コンサルティング
シニア・アソシエイト
廣澤 謙太氏

「私の関心事項は、つくり上げた経営企画の型や業務のあり方をキタムラの社員の皆さんにいかにして引き継ぐかということです。キタムラ内に業務とITを内製化し、社員の自立を促すこと、そこまでがわれわれのミッションだと思っています」(廣澤氏)

それぞれの話を聞いて感じるのは、経営陣、キタムラ社員、リヴァンプが、いずれも本気で改革を進めるとともに、互いを尊重し、バランスが取れたことで大きな成果に結び付いたことだ。事業承継に伴うDXの好例といえるだろう。

キタムラと同様に、日本企業が「芯から元気になる」事例がさらに増えることに期待したい。

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