改正マンション建替え円滑化法

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国土交通省の推計によると、2013年12月末時点のマンションストック総数は約601万戸であり、そのうち1981年の建築基準法施行令改正以前の耐震基準(旧耐震基準)で建設されたものが約106万戸も存在する。耐震性が不足している高経年のマンションでは、建替えなど、その再生が喫緊の課題だ。こうした状況下、新たな法制度もスタートしようとしている。この12月に施行予定の「マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律」(改正マンション建替え円滑化法)である。同法の改正のポイントはどのような点なのか。また、改正により建替えなどマンションの再生はどのように進むと考えられるのか。区分所有法ほかマンションに関する法律に詳しい、早稲田大学法科大学院の鎌野邦樹教授に聞いた。
早稲田大学 法学学術院 法科大学院 教授 鎌野 邦樹
1977年早稲田大学卒業。千葉大学教授を経て、早稲田大学法科大学院教授(民法、土地住宅法等)に。法務省法制審議会(建物区分 所有法部会)委員、東京都住宅政策審議会、マンション管理士試験委員、日本マンション学会副会長などを歴任。 著者に『マンション法案内』(勁草書房)、『コンメンタ-ル マンション区分所有法 第2版』(共著、日本評論社)、『不動産の法律知識』(日経文庫)等がある。

マンション建替え円滑化法
改正の内容と注意点は

―― 「マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律」(改正マンション建替え円滑化法)が今年6月25日に公布され、12月24日に施行予定です。改正の理由はどこにあるのでしょうか。

鎌野 背景には、大きな地震発生のおそれがある中で、耐震性不足の高経年マンションの建替えなどが、依然として進んでいないことが挙げられます。

「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」(マンション建替え円滑化法)は、2002年12月に施行されました。同法では、区分所有法上の建替え決議をしたマンションは都道府県知事などの許可を受けて、法人格のある建替組合を設立することができます。同法によると、建替組合が、主体となって従前のマンションの担保権や借家権を再建マンションに移行させるなど、建替え事業を円滑に進めることができます。

ただし、1981年以前の旧耐震基準で建設されたマンションが100万戸以上もある一方で、同法の施行後、実際に行われた建替えは180件程度にとどまっています。耐震性不足のマンションの耐震化をさらに促進するために、今回の改正が行われたのです。

―― 今回、改正されたのはどのような点なのでしょうか。

鎌野 改正された大きなポイントが二つあります。一つは、マンション敷地売却制度の創設、もう一つは容積率の緩和特例です。

マンション敷地売却制度とは、耐震性不足の認定を受けたマンションについては、区分所有者の5分の4以上の賛成で、マンションおよびその敷地の売却を行う旨を決議できるというものです。改正前は、多数決で売却することはできませんでした。

もう一つの容積率の緩和は、耐震性不足の認定を受けたマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについては、特定行政庁(建築確認や完了検査などを自ら行う都道府県・市・特別区)の許可により容積率制限が緩和されます。

―― 改正マンション建替え円滑化法の対象となるのは、あくまでも耐震性が不足するマンションということでしょうか。

鎌野 そのとおりです。改正マンション建替え円滑化法を活用するためには、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」(耐震改修促進法)の場合と同様に耐震診断を受け、耐震性能(Is値)が0.6未満(鉄筋コンクリート造の場合)と危険なため除却(取り壊し)が必要といったように、特定行政庁から耐震性不足が客観的に認定される必要があります。

耐震改修促進法は、改正マンション建替え円滑化法に比べると認知度は低いのですが、実は重要な法律です。昨年11月に、一部が改正され施行されました。改正耐震改修促進法では、耐震改修を円滑に促進するために、耐震改修計画の認定基準が緩和され、容積率や建ぺい率の特例措置が講じられました。

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