1977年早稲田大学卒業。千葉大学教授を経て、早稲田大学法科大学院教授(民法、土地住宅法等)に。法務省法制審議会(建物区分 所有法部会)委員、東京都住宅政策審議会、マンション管理士試験委員、日本マンション学会副会長などを歴任。 著者に『マンション法案内』(勁草書房)、『コンメンタ-ル マンション区分所有法 第2版』(共著、日本評論社)、『不動産の法律知識』(日経文庫)等がある。
マンション建替え円滑化法
改正の内容と注意点は
―― 「マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律」(改正マンション建替え円滑化法)が今年6月25日に公布され、12月24日に施行予定です。改正の理由はどこにあるのでしょうか。
鎌野 背景には、大きな地震発生のおそれがある中で、耐震性不足の高経年マンションの建替えなどが、依然として進んでいないことが挙げられます。
「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」(マンション建替え円滑化法)は、2002年12月に施行されました。同法では、区分所有法上の建替え決議をしたマンションは都道府県知事などの許可を受けて、法人格のある建替組合を設立することができます。同法によると、建替組合が、主体となって従前のマンションの担保権や借家権を再建マンションに移行させるなど、建替え事業を円滑に進めることができます。
ただし、1981年以前の旧耐震基準で建設されたマンションが100万戸以上もある一方で、同法の施行後、実際に行われた建替えは180件程度にとどまっています。耐震性不足のマンションの耐震化をさらに促進するために、今回の改正が行われたのです。
―― 今回、改正されたのはどのような点なのでしょうか。
鎌野 改正された大きなポイントが二つあります。一つは、マンション敷地売却制度の創設、もう一つは容積率の緩和特例です。
マンション敷地売却制度とは、耐震性不足の認定を受けたマンションについては、区分所有者の5分の4以上の賛成で、マンションおよびその敷地の売却を行う旨を決議できるというものです。改正前は、多数決で売却することはできませんでした。
もう一つの容積率の緩和は、耐震性不足の認定を受けたマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについては、特定行政庁(建築確認や完了検査などを自ら行う都道府県・市・特別区)の許可により容積率制限が緩和されます。
―― 改正マンション建替え円滑化法の対象となるのは、あくまでも耐震性が不足するマンションということでしょうか。
鎌野 そのとおりです。改正マンション建替え円滑化法を活用するためには、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」(耐震改修促進法)の場合と同様に耐震診断を受け、耐震性能(Is値)が0.6未満(鉄筋コンクリート造の場合)と危険なため除却(取り壊し)が必要といったように、特定行政庁から耐震性不足が客観的に認定される必要があります。
耐震改修促進法は、改正マンション建替え円滑化法に比べると認知度は低いのですが、実は重要な法律です。昨年11月に、一部が改正され施行されました。改正耐震改修促進法では、耐震改修を円滑に促進するために、耐震改修計画の認定基準が緩和され、容積率や建ぺい率の特例措置が講じられました。
また、区分所有建築物については、耐震改修の必要性の認定を受けた建築物について、大規模な耐震改修を行おうとする場合の決議要件が緩和されました。具体的には、区分所有法における決議要件が4分の3以上から過半数になりました。厳密にいうと、耐震改修が共用部分(区分所有法17条1項)の変更に該当する場合でも「集会の決議」で足りるとされましたので、必ずしも全区分所有者の「過半数」の必要はなく、「集会の決議」について標準的な管理規約が定めているように、半数以上の集会出席があり、その出席者の過半数の賛成で足ります。耐震改修工事が非常にやりやすくなりました。この点はしっかり記憶しておくべきです。
耐震改修なども含め
幅広い選択肢を検討すべき
―― 改正マンション建替え円滑化法の敷地売却制度においては、マンションを買い受けようとする者は、買受計画を作成し、都道府県知事に申請する必要があるとされています。これはどういう意味でしょうか。また、容積率緩和の特例については、どう考えればいいでしょうか。
鎌野 マンション敷地売却制度では、マンションと敷地をデベロッパーなどの買受人に売却し、建物を除却してもらうことになります。法律では除却後の土地の用途については制限はありませんが、一般的には新しいマンションが建てられることが多いと思われます。むろん、区分所有者なども、新しく建てられるマンションへの再入居のほか、代替住居の提供やあっせんなどの有無が明確でないと、決議はできません。そのために、買い受けようとする者は、買受計画を作成し、認定を受けなければならないのです。
容積率緩和の特例については、実際の案件がまだ出ていないため、具体的な内容はこれから示されることになりますが、楽観はしないほうがいいでしょう。と言うのも、同特例を活用するには、特定行政庁の許可が必要であり、周囲の建物と大幅に異なる緩和は考えにくいからです。
―― 最後に、高経年化したマンションに住み、マンションの再生を検討している人にアドバイスをお願いします。
鎌野 都心の駅に近い立地のマンションをのぞけば、余剰の容積を売却し、少ない資金で建替えができるような物件は少ないと考えられます。建替えだけでなく、前述したような耐震改修促進法を利用した耐震改修なども含め、幅広い選択肢を検討すべきです。
ただし、区分所有者や管理組合だけでは知識や経験にも限りがあります。日ごろから、この点に精通したデベロッパー、弁護士、マンション管理士、マンション管理会社、NPOなどの専門家に相談しておくのも賢明な方法でしょう。
さまざまな情報を収集しながら、納得のいくような形で、広い意味での再生、活性をはかってほしいと願っています。