パウエル議長、急ピッチ利上げの可能性の扉開く 金融当局は市場予想年4回を上回る利上げに傾く

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パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は26日、3月の利上げ開始への支持を示唆するとともに、従来の予想よりも頻繁かつ大幅な利上げの可能性に扉を開き、約40年ぶりの高水準にあるインフレ抑制のため金融当局が必要に応じて行動する方針を明確にした。

パウエル議長は連邦公開市場委員会(FOMC)会合後の記者会見で、物価上昇圧力が予想に反して沈静化しないリスクも含め経済見通しの不確実性を強調し、物価安定と最大限の雇用の実現という責務に対処する上で「機敏な」政策運営の必要性を指摘。投資家はこの発言を以前の想定より引き締めに積極的な当局の姿勢を意味すると解釈した。

パウエルFRB議長Photographer: Brendan Smialowski/AFP/Bloomberg

オンライン形式の議長会見は55分に及び、早い段階で2%余り上昇していたS&P500種株価指数は続落に転じ、米2年債利回りは2020年3月以来の大幅上昇となってドルも買われた。

「われわれが目にしている高インフレが長期化したり、一段と加速したりするリスクがある。これらの想定される結果全てに金融政策で対処する態勢になければならない」と議長は述べた上で、当局者は3月の利上げを「意識している」と話した。

FOMCは今回、資産購入のテーパリング(段階的縮小)を3月の早い時期に終了し、利上げ開始後に連邦準備制度の債券保有圧縮に着手する方針を確認した。

  

米株式市場の混迷が続く中での当局のタカ派姿勢への転換は、米消費者物価指数(CPI)上昇率が何度も予想を上回って昨年12月には前年同月比7%上昇と1982年以来の高い伸びとなったことや、労働市場の逼迫(ひっぱく)で予想より速いペースで失業率が新型コロナウイルス禍前の水準近辺まで改善したことが背景にある。

前ニューヨーク連銀総裁でブルームバーグ・エコノミクスのシニア・アドバイザーを務めるビル・ダドリー氏はパウエル議長と金融当局について、「彼が全ての会合での行動にコミットしたとは考えられない」とする一方、「これまでの一般の予想よりも恐らくもう少し、そしてやや速く前進しなければならないという趣旨だろう」とブルームバーグテレビジョンでコメントした。

ブルームバーグ・エコノミクスでは、「FOMC声明とパウエル議長会見のタカ派トーンは会合前に金融市場が織り込んでいた4回利上げ見通しに上振れリスクがあることを示唆する。ブルームバーグ・エコノミクスは今月早い段階で年内に恐らく計5回の利上げがあり、6回の上振れリスクもあると予想していた」と指摘した。

米金融当局が利上げに踏み切れば2018年以来となる。アナリストの多くは3月の0.25ポイント引き上げを皮切りに年内にあと3回と、それ以降も追加利上げがあると見込んでいる。当局に対してはインフレ抑制の取り組みが遅過ぎて後手に回っているとの批判があるが、主要な金融市場の指標はこうした見方を裏付けてはいない。

当局者が昨年12月公表の金利予測分布図(ドット・プロット)で示した年内利上げ回数の見通しは中央値で3回。ただ一部の当局者からも、予想より多い回数の利上げの是非について公に問い掛ける動きが見られる。パウエル議長は3月に最新の四半期経済予測を公表する予定を強調した。

イーサン・ハリス氏率いるバンク・オブ・アメリカ(BofA)のエコノミストはリポートで、「金融当局がオミクロン変異株感染拡大の影響にはとらわれず、1月と2月のデータが弱い内容でも反応しないことは明白だ。要するに、年内4回を上回る利上げの方向にリスクは傾いている」との分析を示した。

先物市場は3月のFOMC会合での0.3ポイント前後の引き締めの可能性を示唆。これは0.25ポイント利上げが完全に織り込まれていることを示し、0.5ポイント利上げの20%の確率を意味する。

記者会見したパウエル議長Source: Bloomberg

原題:

Powell Opens Door to Faster Rate-Hike Path to Curb Inflation(抜粋)

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著者:Olivia Rockeman、Craig Torres

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