“エネルギーレジリエンス”が
企業を真に強くする
【“平時”の根本的な体質改善が、“有事”に勝つ企業の条件】
ノルド社会環境研究所
エネルギーは当たり前に供給されるもの、という意識を一変させた東日本大震災。節電やピーク電力の抑制など、企業も早急な対応を迫られたが、「抜本的な解決策を図れている企業は少ない」とエネルギー分野の調査、研究に多くの実績を持つノルド社会環境研究所の久米谷弘光氏は指摘する。
大規模集中発電からの電力供給に依存する脆弱性が表面化し、エネルギーの多様化によるベストミックスの構築が急がれる中、久米谷氏は「企業も主体的にエネルギー対策を検討することが競争力を強化するうえで重要」と強調する。震災ではBCPの有無はもちろん、それが機能したかどうかでシェアの逆転が起きた業界もあった。特にエネルギーのストップはビジネスの根幹を揺るがすケースがほとんど。有事の対応が企業の信頼を決すると肝に銘じ、「平時から戦略的なエネルギー対策を講じる必要がある」(久米谷氏)というのだ。
「国土強靱化基本計画」でも
エネルギー対策は最重要課題
すでに国も動き出している。政府が進める「国土強靱化基本計画」でもエネルギー対策は柱であり、今後、企業を巻き込んだ大きな流れとなる可能性が高い。「国土強靭化基本計画」とは地震や土砂災害など、さまざまな国家的リスクに対応できるよう強くてしなやかな日本をつくるための施策をまとめたもの。国土強靭化推進本部のトップは首相、全閣僚がメンバーで、全省庁が一丸となって推進する、国策の最上位に位置する基本計画だ。
「いざという時に対症療法で対応するのではなく、平時から根本的な体質改善を行い、有事の損失を最小限にとどめるのはもちろん、それにより経済成長を図りながら、万全の体制を持つ国家として競争力を向上したいと考えている」
そう説くのは「国土強靭化基本計画」の策定、実行に深く関与する東京工業大学・特任教授の金谷年展氏。同計画の領域は住宅・都市から交通・物流、医療・保健、農林水産まで多岐にわたるが、「最重要課題はエネルギー供給網の強靭化、エネルギーレジリエンスだ」と金谷氏は話す。
その中核になると期待されているのが、エネルギーを自らつくり賄うことのできる自立分散型エネルギーの構築だ。中でもコージェネレーションは電気をつくり、同時に出る排熱を活用するシステムであり、エネルギーを効率的に利用できるとあって注目されている。
「自立分散型エネルギーの構築にあたり環境、コスト、さらにレジリエンスという視点から考えるとガスの時代がくる」と金谷氏は話す。「エネルギーの多様化でリスク分散するには、もちろん安定供給が必要だ。ガス供給を担うパイプの中で中圧パイプは地震に強い。しかも天然ガスは石油などに比べ環境にも優しく、シェールガス革命によってさらなる安定調達と価格低下が期待されている」(金谷氏)からである。