真のクラウドがもたらす、グローバル標準の
リアルタイム経営と未来志向の財務戦略 ―DeNA、Kiiが挑んだ迅速なグローバル展開の検証―

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グローバル展開への迅速な対応を可能とする経営基盤構築の際に有力な選択肢となる、クラウド型ERP(Enterprise Resource Planning、基幹業務システム)について検討する、「真のクラウドがもたらす、グローバル標準のリアルタイム経営と未来志向の財務戦略」が9月3日、大阪市で開かれた。クラウドベースだからこそ可能な、低コスト、短期間でのシステム導入とともに、実際にグローバル展開を成功させ、グループ企業の業務統合と標準化に成功した企業の導入事例が紹介され、参加者はクラウドERPの可能性について認識を深めた。
【共催】ネットスイート、東洋経済新報社
【協賛】Shearwater Japan、ジェクシード

第一部【基調講演】
「挑戦し続けるDeNAのグローバル業務基盤構築」

ディー・エヌ・エー(DeNA)
経営企画本部IT戦略部部長
村上 淳氏

モバイルゲーム、eコマース、野球やランニングクラブなどのプロスポーツ事業で知られるDeNA。同社IT戦略部部長の村上淳氏は「新しいことに挑戦してナンバー1を目指すというDNAがある」と企業風土を語る。最近は、マンガや教育アプリ、仮想ライブ空間、ヘルスケア(遺伝子検査)へも事業の幅を広げ、グローバル展開も加速させている。

同社の守安功社長が掲げる「永久ベンチャー」の考えは、事業環境の変化が激しいインターネットサービス業界にあって、何よりスピード、コストを重視する。この目標は、バックオフィスの業務基盤システム導入においても共通であり、同社の条件をクリアできるという点で、NetSuite(以下、社名ネットスイート、サービス名称NetSuite)が事業基盤として選択された。

まず、スピードのために村上氏は「通勤などの隙間時間を有効活用するため、いつでも、どこでも、どんな端末でも使える」システムにこだわった。また、ゲーム開発などのプロジェクトはパートナーと共同で進めることも多く、外部との円滑な情報共有は必須の課題だという。また、これまではマーケット費用も含めたプロジェクト単位でのキャッシュフロー算出が難しかった。その点も踏まえ、プロジェクトライフサイクルでのキャッシュフローが把握できる仕組み作りに重点を置いた。利便性とセキュリティはトレードオフの傾向があるとし、利便性は向上しつつ、セキュリティレベルを下げないよう、セキュリティの基本であるグローバルでのアカウント管理徹底が必須という。そのため、人事分野からグローバル業務基盤の構築を進めていった。コスト面では、グローバルで共通に使えるシステムを導入することで、業務の標準化、効率化を進めた。村上氏は「各国のグループ会社を取り巻く法制、商習慣、規模や事業形態の違いを踏まえ、どこまで合わせられるか、見極めが重要」と話す。

また、同社のヘルスケア事業を立ち上げた際には、社内でも経営陣のみが知る極秘扱いとされていたため、新会社のバックオフィスシステムの準備期間はわずか2週間だった。「普通であれば難しいと思われる期間で、新会社用のバックオフィス基盤の立ち上げをあっという間に行うことができた」と村上氏は振り返る。

クラウドベースのERPの中でも「NetSuiteは最も採用されている。そこには資金も集まり、機能改善も速いはず」という判断も後押しした。もう一つ、重要なのは、サービス提供会社と顧客の関係を超えた、パートナー同士の関係だ。互いにグローバル企業として成長過程にあることから、村上氏は「一緒に世界で成長していこう。こうしたら、もっと良くなるという視点で話をしている」と述べた。

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