危険だらけSNSで広がる「精子取引」恐ろしい実態 専門医が語る日本初「精子バンク」設立の背景

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「つまり、閉塞性の無精子症の場合、あまく見積もっても患者全体の2割しか子どもができないのです。8割の患者は、これからの人生をどうしたらいいのか、ということになる。1つ目は子どもなしで2人で仲よく生きていく、2つ目は養子縁組をする。そして3番目の選択肢がDIです」

ドナーを医療関係者に限定する理由

先に書いたように、現在、国内では12の登録施設でDIを行えるが、その実施数は減少傾向にある。現在、DIで生まれてきた子どもの「出自を知る権利」を求める声と、匿名のドナーに対して情報の開示を求める声の高まりがあり、ドナーの数が減っていることがその背景にある。

そのため、治療を希望してもすぐには精子の提供が受けられない現状がある。それが、個人が直接ドナーを探して個人間で精子の取引を行う要因にもなっている。

「そこで精子バンクを設立し、質のよい安全な精子が供給できるようになれば、DIの実施数も増えるに違いない、と思ったのです」

顕微鏡で精子の運動について詳細に調べる(写真:AERA dot.編集部)

ドナーの確保について同研究所では、「最終的にはWeb上でドナーを登録することも考えているが、そうなるまでには相当時間がかかる」としたうえで、まずは、医者や看護師など医療関係者の「小さなグループ内の口コミで」ドナーを募る。

「もし、自分が精子提供者であることをSNSに書き込むような軽率な気持ちでドナーとなる人が現れたら、この仕組みを土台から破壊してしまいます。不妊治療のことをよくわかっている人で、かつ極めてボランタリーな気持ちで協力してくれる人でないと、ドナーは無理だと思います」

匿名のドナーであれば、精子を提供する医療機関に対して情報を開示しない。非匿名のドナーの場合は、どこまで開示していいか、定められた基準に則って情報を開示する。完全に情報を開示するドナーもいるが、一般的にかなり少数という。

「この3つのケースのうち、どの精子が必要か、提供先の施設の求めに応じて供給していきます」

「出自を知る権利」について、岡田特任教授はこう語る。

「DIを実施する施設と患者、またはカップルとの間で発生する問題で、そこまではわれわれは踏み込めない部分です」

■厳しい検査で妊娠率を上げる

ちなみに現在、DIによる妊娠率は施行回数に対して約3%とかなり低い。

その理由として、岡田特任教授は精子の質の問題を挙げ、質のよい安全な精子を供給する必要性を訴える。研究所ではスクリーニング検査を厳しく行い、ドナーの感染症や遺伝性疾患の有無のほか、精子の機能についてもきちんとチェックする。

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