渋谷発!
國學院大學 赤井益久学長によるトップ対談
國學院大學
行政として「人づくり」に力を入れる桑原敏武渋谷区長と共に、渋谷の魅力や将来像を話し合った。
「渋谷の街の空気」が人を育てる
赤井 「教育は国家百年の大計」とも言います。「こういう教育をしたからこういう人間ができる」と一朝一夕に決まるものではありません。やはり長い目で計画的に物事を進めていく必要があると考えています。むろん、それと同時に学ぶ環境も大事です。いわば「國學院大學の空気」のようなものが人を育てると感じています。
桑原 貴学には、さまざまな取り組みでご協力いただいています。また、貴学は國學院という名前の通り、日本の文化を研究・教育されるとともに、外部に対してもその知見を発信し伝えていますね。
赤井 本学はミッションとして、「伝統と創造」、「個性と共生」、「地域性と国際性」の調和の、三つの慮(おも)いを掲げています。「個性と共生」をうたっている理由は、個性を尊重しながらも、人は決してひとりで生きてはいけないと考えるからです。家族や地域社会、さらにその上の社会である都道府県や国家などというように、人間は循環した関係の中に存在します。
三つの慮いの具体策として、本学では推進研究の一つに「共存学」を掲げています。これは「渋谷を科学する」というテーマの「渋谷学」の研究とともに、本学の大きな特色になっています。また、本学は神道精神を研究・教育の理念としています。神道は地域社会と密接に結びついた考え方に特長があります。こういったことからも、本学にとって「渋谷」の街は、いわば本学の「空気」と言えるほどの関係だと感じています。
桑原 私自身、渋谷区の行政に携わるようになって20年以上になりますが、外国人観光客の増加などをみても、年々、渋谷の注目度が高まっているように思います。その理由を考えますと、一つは、お話のキーワードにもあったように、新しいものと古いものが「共存」していることではないでしょうか。たくさんのファッションデザイナーやITクリエーターが集まり、最先端のトレンドを発信する街でありながら、一方で明治神宮や金王八幡宮ほか、歴史と伝統のある神社や仏閣が数多く残っています。
さらに特筆すべきは、渋谷区は住宅地が多いことです。いくらきれいな建物が並んでいても、休日になるとがらんとする街は寂しいものです。渋谷なら、平日でも休日でも、人が訪ね、生活する活気があります。