日本のベンチャー企業はもっと大きな志を持って
企業価値の高い会社を目指してほしい クオンタムリープ株式会社
代表取締役 ファウンダー&CEO
出井 伸之

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日本経済を活性化させるイノベーションの担い手として、今、ベンチャー企業が注目を集めている。新興株式市場でIPO(新規上場)が相次ぐ中、民間を中心としてベンチャー企業を支援する動きが活発になっており、政府も成長戦略の柱の一つとしてベンチャー支援を打ち出す。ソニーの元会長兼CEOで、退任後は、日本とアジアを視野に入れた、次世代ビジネスのプラットフォームづくりに取り組む「クオンタムリープ」を設立、ベンチャー企業を積極的に支援している出井伸之氏に、ベンチャー企業の存在意義や可能性を伺うとともに、ベンチャー支援に力を入れる監査法人の取り組みを紹介する。
出井 伸之(いでい・のぶゆき)
1937年生まれ。早稲田大学卒業後、ソニー入社。主に欧州での海外事業を経て95年に社長に就任し、10年にわたりトップとしてソニー変革を主導。退任後、06年にクオンタムリープ設立。NPO法人アジア・イノベーターズ・イニシアティブ理事長

“隕石"による世界の変革から遅れた日本

――ベンチャー企業の支援に注力されていますが、その理由は何でしょうか。

出井 その質問に答えるにはまず、日本の現状認識から話す必要があります。日本は、ものづくりで「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われ、1980年代に繁栄を極めましたが、その後は、世界的な変革の波から大きく遅れてしまいました。

第一の問題は、経済に大きなウェイトを占める大企業の変革の遅れです。巨体がゆえに動きが取れなくなっています。社内業務をアウトソーシングするなど、組織をスリム化すべきでしょう。そして、二つ目がベンチャーの育成です。新しい時代には、新たな価値を生み出すための、新しい事業が必要です。

――新たな価値とは、やはりIT、ネットワークを軸にとらえるべきでしょうか。

出井 私は以前から、インターネットは隕石だ、と言ってきました。大隕石の影響で恐竜が絶滅したように、肥大化して動きの鈍くなった大企業は、インターネットに滅ぼされるのではないか、という危機感を持っています。だからこそ、95年にソニーの社長になった私は、AV(オーディオビジュアル)事業に、IT事業を加え、組織のスリム化という改革を実行したのです。

実際に、インターネットのインパクトを受け、シリコンバレーを中心に、多くのベンチャー企業が生まれました。グーグル、ヤフー、フェイスブックなど、95年以降創業の米国の代表的ベンチャー10社の企業価値(株式時価総額)の合計は、大手自動車メーカーや金融機関など日本のトップ10企業をしのぐ規模になっています。一方、日本では、その規模の高い企業価値を持つベンチャー企業はいまだ現われていません。

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