
かかりつけのヘッドハンター?
―リクルートキャリアではリクナビNEXTやリクルートエージェントなどこれまでも転職をサポートするサービスを数多く提供してきました。今回新たにスタートさせたCAREER CARVERが既存のサービスと異なる点について教えてください。
従来のサービスとCAREER CARVERでは「キャリア支援の方法」に大きな違いがあります。リクナビNEXTやリクルートエージェントが主としているのは仕事探しの場を提供すること。ビジネスパーソンに対するキャリア支援はあくまで仕事を探すことの延長でした。しかし今回のサービスはあくまで「キャリアを考える」ということを軸に支援を行うサービス。そこに必ずしも転職や独立、起業が伴うものではありません。この「仕事探しの場」か「キャリアを考える場」ということが既存のサービスと最も異なる点です。
―CAREER CARVERではどのような形で「キャリアを考える場」を設けているのでしょうか?
今回のサービスでは外部のヘッドハンターやコンサルタントと提携し、一人ひとりのビジネスパーソンに「かかりつけのヘッドハンター」を見つけてもらいます。彼らと定期的に接点を持つことでご自身のキャリアの棚卸しを行い、次世代リーダーとして向かうべき方向を明確化する。こういった取り組みは欧米諸国では一般化していますが、日本で現在行っているのは一部のエグゼクティブのみ。大半の企業では社内にメンターやキャリアカウンセラーを置いていますが、それでは社外からみた自身のバリューを知ることができません。客観的な視点でキャリアについてアドバイスできるヘッドハンターを外部に持つ。それもお抱えの医者や弁護士のように、公私にまたがって長期的に付き合える「かかりつけのヘッドハンター」を持ってもらう。そのために幅広い視野や知識を持つ厳選された、優れたヘッドハンターやコンサルタントとのマッチングサービスとしてCAREER CARVERをスタートさせました。
―CAREER CARVERは構想からサービスインまでわずか半年という異例のスピードで立ち上げられました。このタイミングでサービスを開始した背景について教えて下さい。
1992年、リクルートエージェント(当時のリクルート人材センター)新卒入社。リクルーティングアドバイザー(RA)、キャリアアドバイザー(CA)を経験。またその間、事業企画や採用担当などスタッフにも従事する。IT領域のRAマネージャー、CAマネージャーを経て部長に。2005年には、執行役員に就任し、営業組織を率いる。2009年4月よりリクルートに出向し、HRカンパニーキャリア領域開発機構、 営業統括部のカンパニーオフィサー。新規事業の立ち上げに携わる。2012年度は新卒事業を担当する執行役員、2013年4月からは中途事業を担当する執行役員に就任。
大きく三つの理由があります。第一に外部のエージェントから「転職のタイミングで仕事を探すだけの単発のサービスではなく、それ以前からビジネスパーソンと伴走し長くお付き合いしていきたい」という声が数多く挙がっていたこと。第二にビジネスパーソンを取り巻く環境の変化。市場では次世代にイノベーションを起こせるビジネスリーダーが圧倒的に不足しており、そういった人材を各社とも渇望しています。一方でそのようなリーダーになり得る人材は閉塞した社内の環境下で活かされていない。人材の適正な流動化が待ったなしで求められている今日において、それに見合ったサービスがこれまで存在しなかったのです。
そして最後の理由ですが、これは私自身がこれまでエグゼクティブの方とお付き合いしてきて強く感じていたことが背景にあります。
―それは一体どのようなことでしょうか?
他のエージェントの方々と会話をすると口を揃えておっしゃるのが、みなさん総じてアクションのタイミングが遅い。切羽詰ってから駆け込む方がほとんどで、もう少し早くからキャリアについて考える機会があれば、転職するにしても自社に留まるにしても違った結果になったのではという方がほとんどです。有事になってからではなく、平時からキャリアについて考える場の必要性を痛感してCAREER CARVERというサービスの立ち上げに至りました。
自分の“市場価値”を意識するために
―長年キャリア事業に取り組んできた佐藤様の目に、現在の転職市場やビジネスパーソンの姿はどう映っていますか?
私がこの仕事を始めたのは22年前、バブル経済がはじけた直後です。当時はまだ転職という言葉がどこかネガティブなものでしたが、現在ではそのようなトーンは消え転職という行為が一般化したように思います。しかし一方で「キャリアを考える」ということに関して言えば、起業や転職、あるいは会社に留まることと並列に考えている人はまだまだ少数。昇進や社内におけるポジションは気にしていても、自分自身の市場価値が社会や世間一般から見てどうかということを意識しているビジネスパーソンは非常に少ないままです。一方で彼らに「会社がこのまま存続するか」「5年後、10年後にキャリアが開けると思うか」と尋ねると、そう考えていない方がほとんど。きっと頭では理解していても、実際に行動に移せる場がなかった。あるいはその方法が一般化されていなかったのがその原因ではないでしょうか。
―確かに自身のキャリアを見つめなおす機会はこれまでほとんど存在しませんでした。
今はウェブサービスなどの進化により、様々なことを自分で探すことができるようになりました。しかし探す対象が分からないとき、例えば自分自身のことを知ろうとしてもそれを教えてくれるサービスはほとんど存在しません。今回CAREER CARVERを立ち上げたコンセプトは「知る機会」を提供すること。社会的に見て自分のバリューは高いのか。自身のキャリアでどこが買ってもらえて、どこが不足しているのかを知るための場を提供することにあります。そうやってキャリアを考えることは先程もお話した通り「有事」になってからでは遅い。人間ドックのように定期的に通いメンテナンスを行うことがキャリア構築においては重要なのです。
次世代リーダーとは「外」と会話が通じる人

―これからの時代に活躍できるリーダーに必要な素養とはどういったものでしょうか?
グローバル化やボーダレス化が進み、周囲の環境が目まぐるしく変化し続ける中で企業自体も変革せざるを得なくなってきています。企業間の提携やグローバルへの進出といったトレンドが今後も続くことは確実で、これまでの会社の理屈は通用しなくなってきました。そうした環境下で活躍するための最大の条件とは「外向き」であることです。視野や視点、ものの考え方が内向きではなく外に開かれていること。そういった姿勢が次世代リーダーには求められています。
―そういった人材は現状だと少ないかもしれません。
これまで日本企業は内向きの人材を育ててきました。総合職として採用され、ジョブローテーションでいくつかの部署を回る。その結果生まれるのは「ゼネラリスト」ではなくその会社の総合職。この会社では重宝されるけど他所では活躍が難しい人材です。また社内の競争で勝っていこうとすると一層自社のことしか考えられなくなる。これは笑い話ですが、面接で何ができるか尋ねられて「部長です」と答える方が実際のところ非常に多い。では、そうならないためにどうするか。
まずはご自身のスキルを棚卸しして、外部でも通用するポータブルスキルが自分にどの程度備わっているかを客観的に分析することです。そしてそういった点検はなるべく早いタイミングで行い、かつ定期的に行っていく必要がある。ご自身のスキルを社会的な価値と照らしあわせて棚卸しを行うと、会社に留まり続けるにせよ仕事に対する取り組み方が全く異なったものへと変わってくるはずです。
―CAREER CARVERの今後について教えて下さい。
リクルートグループが目指す世界観である「Follow Your Heart」と同じです。自分自身が自分の可能性を信じて、自分らしく選択していく。そのためにかかりつけヘッドハンターというものを一般化し、皆さんがご自身のキャリアについて定期的に考える機会を作っていきたいと考えています。またCAREER CARVERではビジネスパーソンとヘッドハンターの関係はもちろんですが、同じような志の高いビジネスパーソン同士をつなげていくこと、ネットワークを構築することにも取り組んでいこうと考えています。7月21日に行われるイベントはその象徴ですが、それ以外にもオンライン・オフライン問わず色々な形で場を提供していきたい。そういった刺激が社会全体を盛り上げていくことにつながればと思います。



