「治験期間短縮を実現」新薬開発に革新の一手 プラットフォーム構想で業界とデータをつなぐ

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治験プロセスに革新を起こす

実証実験の結果やこうした製薬業界全体の変革構想を基に生まれたのが、NTTデータがグローバル展開を見据えて提供を開始した治験トータルソリューションプラットフォーム「PhambieLINQ」だ。3つのソリューションからなり、最も上流が実証実験で行った治験関連文書の作成に関するもの。2つ目が医療機関で効率よく臨床データを収集するソリューション。3つ目が医療機関が作成する臨床データファイルを安全なネットワークを介して製薬企業に送るソリューションだ。

今回、NTTデータは3つ目の「Clinical Data Transfer」を第1弾として2020年12月より提供を開始した。医療機関における転記作業の削減やミスを抑制でき、製薬企業側のデータ品質を保つことにかかる労力や負担の削減に貢献する。1つ目、2つ目のソリューションは今後順次提供を開始するという。

治験の一般的なプロセス

「医療機関では、計画書を基に治験を進めていくわけですが、計画書の規格が製薬企業各社でバラバラなため、それぞれの確認に必要以上のコミュニケーションが発生しています。その抑制のためにも、『PhambieLINQ』ではドキュメントの標準化を進めていきます」(箕輪氏)

髙橋氏は、そのうえで期待しているのが共有化だという。「薬剤に特化する情報は企業が独自に持たざるをえないですが、データに関する規格や文書のテンプレートというのは、各社のこだわりを捨て共有化することで、医療機関も含めた治験全体の効率化やリソース削減が図れると期待しています」。

既存の電子カルテや臨床データのシステムの入れ替えではなく「つなぐ」ことでソリューションを提供できるのは、長年製薬企業や医療機関のデジタル化に携わってきたNTTデータだからこそだ。現在、日本での治験費用は海外に比べ高いために、海外での新薬の開発が増え、日本が治験実施国から外れてしまうことが危惧されているという。それは、既存の診療で治らない患者の新薬という希望の光を閉ざすことになる。「PhambieLINQ」で少しでも日本の治験環境が改善し、より良い薬を待つ患者に一日でも早く安く薬が届くよう業界全体の変革に期待したい。

「PhambieLINQ」および「Clinical Data Transfer」は、株式会社NTTデータの商標です。

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