大和ハウスが「風と太陽と水」で描く成長軌道 新たな環境エネルギー事業が目指す先は?

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建設・土木のノウハウを強みに
海外展開も目論む

TOP Interview

――大和ハウス工業が新しい事業として環境エネルギービジネスを選択した背景には、創業者の石橋信夫氏の言葉があったそうですね。
大和ハウス工業
上席執行役員
環境エネルギー事業本部長
永瀬俊哉


そうですね、石橋は生前「風と太陽と水に関する事業をやりなさい」と言っていました。風と太陽と水、これは再生可能エネルギーそのものといえます。もちろん石橋のその言葉だけで決めたわけではありませんが、再生可能エネルギーに投資をすれば、環境問題の解決に向けた貢献ができます。それは、世の中の役に立つことをするという当社の創業の精神にも合致していますし、そのチャレンジに成功すれば新たな成長軌道を見いだすこともできるでしょう。

――事業本部が発足してまだ間もないですが、現状で事業規模はどれくらいでしょう。

環境エネルギーのビジネスそのものは10年以上前から行ってきましたから、今は関連会社も含めて約1600億円の売上高があります。

発電と電力小売りはまだ伸びしろが大きいと考えています。今は太陽光発電が主力ですが、これからは風力発電も増やしていきます。洋上は難しいかもしれませんが、地上型の風力発電は大型施設も積極的につくっていく方針です。自前で建設できるのが強みの1つですが、他社がつくった発電所の買収も進めています。一方、電力の小売りの場合、あまりアピールしてきませんでしたが、当社は他社に比べてかなりコストが低いのが特徴です。住宅事業部門とタイアップして戸建て住宅向けや賃貸住宅向けのブランドを持っていますし、流通店舗事業本部や建築事業本部とともに法人向け高圧電力の小売りなどにも積極的に取り組んでいます。

――環境エネルギー関連EPC(建設工事請負)の事業はいかがですか。

FIT(固定価格買取制度)の利用を見込んだメガソーラーのEPCはピークを過ぎましたが、これからはノンFITのEPCが伸びていくものと思われます。自社の工場で使う電力を自前でつくりたいので、屋根にソーラー設備をつくってほしい、といった需要は確実にあります。今、企業に対する「脱炭素」の圧は相当なものがありますから、EPC事業も十分な成長が期待できるでしょう。

――そういう意味でも環境問題に対する社会の意識の高まりは好条件ですね。

温暖化対策は待ったなしの状況です。再生可能エネルギーはコストが高いから化石燃料に頼るという論理は、もう通用しません。コストが高くてもやらなければいけないことはやるしかありません。しかも太陽光発電の場合、FITが導入されてずいぶんコストが安くなりましたし、発電設備の償却が終わればコストはもっと安くなります。

――もう間もなく新年度が始まりますが、今後の見通しについてお聞かせください。

再生可能エネルギーの発電には、一定規模以上の土地確保や土地に合った建築・施工技術が必要です。大和ハウスグループは、創業以来培ってきた信頼関係やノウハウを活かし、土地の有効活用や多様な事業スキームの企画・提案を行うとともに、土地に合わせた多彩な建築・施工技術で、街中や郊外などあらゆる場所に再生可能エネルギー発電所の設置を進めています。当社には土木や建設の知見もありますから、土地の造成を伴うような大型物件にも対応できます。そういう強みにさらに磨きをかけていきますし、国際化も視野に入れています。新型コロナ禍が収束したら、まずは台湾での太陽光発電に参入したいと考えています。より長期的には、「風」「太陽」「水」以外のクリーンエネルギーにもぜひ、チャレンジしてみたいと思っています。