大和ハウスが「風と太陽と水」で描く成長軌道 新たな環境エネルギー事業が目指す先は?

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日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすると宣言し、米国は地球温暖化対策の世界的な枠組み「パリ協定」に復帰した。「SDGs(持続可能な開発目標)」への注目も年々高まっており、環境問題への取り組みは加速度的に進んでいる。そうした潮流の中、大和ハウス工業が環境エネルギー事業の実績を確実に積み上げている。再生可能エネルギーの創出などを軸にグリーン成長戦略を描いているというが、その実態とは。

再生可能エネルギーのソリューションをワンストップで提案できる強み

「21世紀は『風と太陽と水』に挑戦せよ」

大和ハウス工業の創業者である石橋信夫(1921~2003)は、存命中にこう語ったという。山々に囲まれた奈良県吉野郡に生まれた石橋は、自然を尊び、「サステナブル」という言葉が普及するはるか前から「風」「太陽」「水」の事業ができないかと模索していた。

その言葉を体現するように、同社で環境エネルギー事業が始まったのは2009年。省エネを推進する照明関係製品の販売から始まったものの、当初より志は高かった。住宅や商業施設の建設などで培ってきた技術やノウハウを活用し、環境問題対策のソリューションを広く社外に提供し、地球環境向上のために貢献していきたいという思いがあったという。

環境エネルギー事業に力を入れる背景には、同事業の将来性に対する期待もある。世界中で再生可能エネルギーの利活用の機運が高まる中で、質の高いソリューションを提供できれば、大きなビジネスチャンスをつかむ可能性が高まる。

同社には、創業者の石橋信夫が残した「創業100周年を迎える2055年には連結売上高10兆円を実現する」という目標がある。そのためにも、成長性が見込める新たな事業として環境エネルギー事業の取り組みが始まった。

現在、この領域で同社はEPC(設計・施工)、PPS(電力小売り事業)、IPP(発電事業)を三本柱に事業展開している。環境課題の解決に貢献することが目的の1つであるため、再生可能エネルギーである風力・太陽光・水力発電に特化して展開している。20年12月現在、合わせて372カ所で418メガワット(MW)の発電出力があり、これは約12万世帯分を賄う発電能力にも上る。

同社の場合、住宅や流通店舗などの幅広い事業部門を抱えている。それらの事業部門と連携できるのが、環境エネルギー事業の大きな強みだ。例えば大規模な物流施設の屋根に太陽光発電設備を設置し、その施設で使う電力を賄うというプランを提案できる。この場合、顧客企業にとっては送電のコストが不要となるので電気代が下がり、「脱炭素」の一助にもなるというメリットがある。

つまり、再生可能エネルギーをつくるところから運ぶところ、さらに使うところまですべてワンストップで提案できるわけだ。その好例として、19年7月に始まった千葉県船橋市の「再エネ100%のまちづくり」が挙げられる。これは、入居者が利用する電気だけではなく、共用部や街灯、施工時の電気に至るまで、再生可能エネルギーですべて賄われ、複合開発「船橋グランオアシス」のCO2排出量は実質ゼロとなる革新的な取り組みだ。

船橋グランオアシスの航空写真。大和ハウス工業は分譲マンション(571戸・11階建て)、賃貸住宅(低層:39戸・3階建て4棟、中高層:223戸・11階建て)、戸建住宅(26区画)、商業施設を計画した、事業面積57,456.19m2(東京ドーム約1.2個分)の大規模複合開発プロジェクトを手がける

ここでの再生可能エネルギーは、18年10月より本格稼働した岐阜県飛騨市の「菅沼水力発電所(発電出力約2MW)」で発電した電気(※)を中心に供給される。同プロジェクトの分譲住宅のうち「セキュレア船橋グランオアシス」はすでに完売しており、反応は上々だ。

2018年10月より本格稼働した岐阜県飛騨市の菅沼水力発電所(写真は菅沼第二水力発電所)

また同社では、自社が使う電力の見直しも始めている。大和ハウスグループは、事業運営に使用する電力を100%再エネで調達することを目標に掲げる企業連合「RE100」に加盟しているが、早くも20年度に達成できる見通しだ。

本年度からは、大和ハウスグループのガバナンス改革として事業本部制がスタート。同事業も環境エネルギー事業本部としてこれからさらなるプレゼンス向上を目指していく。発足してまだ日は浅いが、建設業のノウハウを持つ大和ハウス工業ならではの環境エネルギービジネスは、まだまだ成長が期待される。

※ 菅沼水力発電所と船橋グランオアシス間で特定卸供給契約を結び電気を供給。
また、電気が不足した場合、大和ハウスグループが管理・運営する他の再生可能エネルギー発電所より電気を供給

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