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ビールの泡立ちから1000分の1秒を競うスポーツカー、さらには脳動脈瘤の治療補助にも――。コンピュータ上で物理現象をシミュレーションするCAEは、製造業をはじめ、さまざまな分野で不可欠な分析技術だ。CAEにおける世界のリーディングカンパニー、アンシスの強みに迫った。

広がるCAEの貢献領域背景には高速解析

世界に4万超のユーザーを持つ、CAE(Computer Aided Engineering)分野のリーディングカンパニー、ANSYS(アンシス)。日本でこの製品・サービスを提供しているアンシス・ジャパンの大古俊輔社長は「われわれのCAEは『時間を買うこと』につながるという評価をいただき、日本でも製造業を中心にユーザー数は毎年伸び続けています」と語る。

まずはCAEを簡単に説明しておこう。CAD(Computer Aided Design)と混同される方もいるが、CADは設計作業を効率化するソフトウエアであり、製品の図面設計を助けるもの。CAEは、製品の性能や動作をコンピュータ上でシミュレーションし解析するものだ。端的に言えば、CADで設計して、CAEでシミュレーションする、ということだ。

「かつての製造業の現場は、実験、実験の連続で膨大な時間とコストがかかっていました。そもそも、航空・宇宙産業など、実際にはいきなり実験するわけにはいかないものも少なくありませんでした」(大古社長)。

世界的なベストセラー商品・羽のない扇風機(ダイソン社)にもCAEが利用されている
資料提供:Dyson Ltd.

試作品や実験でしかできなかった解析作業をCAEが肩代わりすることで、モノづくりの現場は大きく変わった。新製品開発の時間とコストを大幅に削減。さらに、試作や実験が可能かどうかという条件に縛られず、より自由な発想のアイデアを検証できるようになった。

「洗練されたデザインはもちろん、十分な強度・安全性と原材料コストとのバランスをとりながら、迅速さを求められるという今の製品開発現場では、CAEによる数値解析が重要性を増しています」と大古社長は指摘する。ニーズはむしろ高まる一方なのだ。

利用が拡大している背景には、ハードウエアの処理速度の大幅な向上もある。膨大な量の計算を行うCAEの解析は、精度を高めるほど処理時間も長くなり、場合によっては数週間単位の時間が必要となる。年々、コンピュータ自体の処理速度は向上しているが、しかしそれに比例してソフトウエアもスピードアップするとは限らない。これはソフトウエアの宿命だ。

だが、アンシスのソフトウエアは、最新のハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)技術に基づいて動作するよう調整され「ハードウエアの性能を最大限に引き出せるようになっているので、高速のコンピューティング環境になるほど、短時間での解析が可能」(大古社長)。この強みを生かして、アンシスは日本国内でトップシェアを誇っている。

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