withコロナ時代を切り拓くNewNormal経営 東洋経済新報社 創立125周年記念フォーラム
基調講演
コロナ禍で変わる企業経営
―CX両利き経営―
直接参画型の経営支援、事業再生を行うIGPIグループの冨山和彦氏は、デジタル変革(DX)とグローバル化が重なって起きた、電機産業などに見られる革命的産業構造の変化は今後も加速すると予測。大企業は、得意とする同質的、連続的改善を進めて従来の本業でしっかり稼ぎつつ、そこで生み出すキャッシュを使って新規事業を探索する「両利きの経営」が「ポストコロナの時代に生き残る必要条件」と指摘。人事、カルチャーを含む抜本的な企業変革(CX)をグローバル企業に求めた。一方、コロナ禍の経済的混乱は、地域のサービス産業が日本経済を支えている構造を明らかにした。地域の中堅・中小企業は、安価になったデジタルツールを上手に使うDXと、新しい経営ノウハウを取り入れて経営者自身も変わるCXを起こせば、世界的にも低水準の生産性を向上できる余地は大きいと強調。「多くの人が働く地域企業をよくすることが日本経済再生のカギという思いを持って取り組んでいただきたい」と訴えた。
協賛講演
なぜ「原則出社」に戻ったのか、なぜ「原則テレワーク」となったのか、その分岐点とは
コロナ禍でのテレワークの急激な普及は労務管理やセキュリティーの不安を引き起こし、テレワークを取りやめる企業もある。エムオーテックスの津田禎史氏は「不安を解消してコロナ時代を乗り越える」ためのソリューションを紹介した。テレワークで目の前にいない部下の働きすぎのチェックが難しいなど、労務管理の課題に対しては、同社のIT資産管理ツール「LanScope(ランスコープ)」の活用を提案。情報漏洩対策で収集していた操作履歴を分析すれば、PC操作の時間、稼働させているアプリがわかり、業務を可視化できる。セキュリティー対策では、AIを使って、通常の対策ソフトでは検知が難しかった未知の脅威も99%検出できるという次世代型アンチウイルス製品「Cylance PROTECT(サイランスプロテクト)」を紹介。メール履歴をたどって取引先にも感染を広げ、信用問題を引き起こすマルウェアも流行しており「社外で業務する場合はエンドポイントの利用端末を守ることがカギ」と語った。
特別講演
ニューパラダイム
~withコロナによる様々な変化~
コンサルティング事業を手がけるピョートル・フェリクス・グジバチ氏は、近年の変化について話した。分析では解決できない複雑・混沌とした問題が増え、正解と思われたことが不正解になることがある。かえって状況を悪化させないためには自分の常識の裏にあるバイアス(思考の偏り)を意識する必要があると指摘。シェアリングビジネスは、市場は需給の均衡で成り立つという資本主義のバイアスに気づき、均衡がなくても市場をつくり出すことに成功した例だとして「不正解の後ろに正解があるかもしれないことに気づくことが大事」と述べた。現代のパラダイムは「所有から共有の豊かさへ」「お金からつながりの資本価値へ」と変化していて、新たな経営戦略が求められる。会社の都合で決められていた働き方のパラダイムも、コロナを機に、自身で決める方向に変化した。個人は「自己を振り返って、自己実現という幸せな状態にたどり着いてほしい」と語った。
特別講演
コロナ禍で必要な心の整えかた
メンタルトレーニング指導士として、アスリートやビジネスパーソンをサポートする田中ウルヴェ京氏は、コロナ禍での心の整えかたとして2点を挙げた。1つは「感情を言葉にする」。怒りなど不快な感情は、我慢して気づかないようにするのではなく、言葉にして気づくことで「その感情を調整でき適切な対処行動を選べるようになる」と述べた。もう1つは「やる気の種類を使い分ける」。やる気には「好きだから走りたい」など、一般的イメージの完全な内発的動機づけのほか、「やせたいから、その手段として走りたい」同一化的動機づけ、「走ること自体より、チームが楽しいから走りたい」疑似内発的動機づけ、「他人に言われて仕方なく走る」完全な外発的動機づけの計4種類があると説明。やる気とは行動を継続するための動機づけで、「その種類は人によって異なることを理解することが、選手や部下を育てるうえで大切になる」と指摘した。