withコロナ時代を切り拓くNewNormal経営 東洋経済新報社 創立125周年記念フォーラム

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明治28(1895)年に創立された東洋経済新報社の創立125周年記念フォーラム「withコロナ時代を切り拓くNew Normal経営」がオンラインで開催された。在宅勤務、リモート会議が普及して働き方が大きく変わるwithコロナ時代は、個人がニューノーマル(新しい生活様式)に移行するだけでなく、企業にも新たな価値観に基づく変革を迫っている。講演では、危機管理、柔軟性、働き方、リモートワーク、情報セキュリティーといった切り口から、withコロナ時代に変化を求められる企業の新たなあり方を考えた。

主催:東洋経済新報社
協賛:NTTデータ、SmartHR、エムオーテックス、NTTコミュニケーションズ

主催者挨拶

東洋経済新報社
代表取締役社長
駒橋 憲一

「激動の時代に、自由主義、民主主義、国際協調主義を掲げ、時代を先取りする報道・言論活動を追求してきた」と歴史を振り返った駒橋憲一社長は、今後も続くwithコロナ時代が個人や企業に新しい価値観に基づく変化を迫る中、良質で役に立つ情報を提供し、創刊以来の理念である「健全なる経済社会の発展に貢献」していきたいと語った。

基調講演
withコロナに打ち勝つための経営戦略とは

小西美術工藝社
代表取締役社長
デービッド・アトキンソン氏

元金融アナリストで、政府の成長戦略会議有識者委員も務めるデービッド・アトキンソン氏は「3密回避が求められるwithコロナ時代には薄利多売、高回転率ビジネスは成り立たない。付加価値を高め、生産性を向上させる必要がある」と指摘。「これは人口減少時代に日本企業が取るべき戦略とも重なる」と語った。人口減が引き起こす最大の課題は人材確保だ。中小企業も、大手並みの給料を出せなければ、若手を雇えず、技術継承や事業継続が困難になる。給料を増やすには、会社を成長させることで生産性を上げることが不可欠。ワーク・ライフ・バランスや女性活躍の実現も、休みを取る社員の仕事を社内でカバーできる一定の規模が必要として、企業規模を拡大することがカギになると強調した。日本の労働人口が2060年までに約3000万人も減る事態こそが「人口のおよそ2分の1が失われ、封建制を崩壊させ、産業革命への伏線となった14世紀欧州のペスト禍に匹敵する大きな変化になる」と覚悟を促した。

協賛講演
DX時代の働き方『デジタルワークスペース』

NTTデータ
ビジネスソリューション事業本部
デジタルビジネスソリューション事業部
デジタルワークスペース統括部
ソリューション営業担当 部長
遠藤 由則氏

NTTデータの遠藤由則氏は、コロナ禍のテレワーク普及で浮上した課題に触れ、柔軟な働き方の実現、生産性の向上とともに、情報漏洩などのリスクにも対応した「デジタルワークスペース」の構築を呼びかけた。今は、働く場所、端末、利用するクラウドサービスが多様化し、従来のように社内ネットワークを守るだけでは安全を担保できない。そこで、新たなセキュリティーの考え方「ゼロトラストネットワーク」の概念を取り入れ、社内システム、エンドポイントの端末、利用するクラウドサービスの3領域すべてのアクセス、挙動をまとめて監視する仕組みを提案した。同社の「BizXaaS Office(ビズエクサースオフィス)」は、仮想デスクトップ系と、ゼロトラスト系を軸にソリューション群を幅広く展開。クラウド利用制御機能による会社が把握していないサービスの利用制限や、ID管理機能により一度の認証で複数サービスを使えるシングルサインオン導入などの事例を紹介して「必要な機能をうまく使って」と訴えた。

特別講演
コロナが炙り出した人の課題

people first 代表取締役
(前 LIXILグループ執行役副社長)
八木 洋介氏

複数の企業で人事責任者を歴任した八木洋介氏は、コロナ禍が「個人に気づきを与え、自立を促すきっかけになった。個人を活かせる組織に会社も変わるべき」と訴えた。安定雇用と引き換えに滅私奉公を求める従来のメンバーシップ型雇用は、個の自立で成り立たなくなる。個人に任せないとリモートワークも機能しないので、規律・統制型組織は、会社と個人が互いに関係性を持って共通目的を実現するエンゲージメント型に変わる必要がある。評価基準も、労働時間や年功序列から、成果を測る実力主義にシフトする。「最近、メンバーシップからジョブ型雇用へ、といわれているが、ポジションにふさわしい力を持つ人を配置するジョブ型は、企業が勝つために当然、なすべきことのはず」と指摘。変革には、強い思いを持って自身をリードし、正しいと思うことを実行できるリーダーが必要で「リーダー資質を持つ人材は希少だ。会社は、年齢、性別、国籍などで分け隔てなく発掘することが求められる」と語った。

協賛講演
人事労務の効率化から組織課題の分析まで!
組織変革を進める秘訣は「人事データベースの活用」にあり

SmartHR
人事労務 研究所
所長/執行役員
副島 智子氏

クラウド人事労務ソフトを提供するSmartHR人事労務研究所所長の副島智子氏は、働き方改革関連法で時間外労働の罰則付き上限規制が開始されたことを受け、企業は効率化・生産性向上を図って「全従業員が時間外労働の制限内で生産活動を行う『新しい常識』に適応しなければ、企業は生き残れない」と訴えた。同社は自社製品「SmartHR」を使い、人事データの収集、一元管理、分析を実現。新入社員には招待フォームから必要な情報を本人に入力してもらい、社会保険などの届出書もSmartHRで自動で作成。在籍社員についても、本人から申請フォームで情報更新することによりリアルタイムに最新情報を収集。人事担当者の負担を大幅に軽減した。オプション機能の「ラクラク分析レポート」を使えば、離職率、残業時間などの人事指標もリアルタイムで集計できる。「新しい常識の下、パフォーマンスを発揮しやすく、魅力のある働く環境整備のため、人材データを活用した戦略的人事を推進する必要がある」と語った。

特別講演
人間の能力を解放するにはどうすればいいか

一般社団法人アスリートソサエティ
代表理事
為末 大氏

為末大氏は、withコロナ下のニューノーマルには、会食自粛など終息後元に戻るであろう変化と、コロナ以前から始まっていて今後も続く本質的変化の2種類があると指摘。「変化が本質的かどうかを見極めて対応しなければならない」と訴えた。だが、在宅勤務を本質的変化と捉えて継続するか、原則出社に戻すか、といった判断の難しい課題もある。「人類は可塑(かそ)性に優れ、新しい環境への適応力が高いが、集団を好むのも本来の性質なので、答えを出しにくい」と話す。一方で、時間に縛られない働き方は定着すると予想。スポーツも、若者を中心に、野球などチームで勝ち負けを競う競技から、ランニングなど余暇を楽しむアクティビティーへ、という流れがあり、時間に縛られずに働く時代の本質的変化として「自由に体を動かすスポーツの推進に貢献していきたい」と語った。

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