クラウドで切り拓く未来志向の財務戦略と
リアルタイム経営管理の実践
~先進企業のアプローチ DeNA、Kiiの事例に学ぶ
東洋経済新報社
【協賛】 Adaptive Insights
【基調講演】
「経営に資する、事業に資する
グローバル業務基盤の構築」
モバイルゲームを軸に、マンガや教育アプリ、さらに遺伝子検査などの新規事業を次々に立ち上げ、グローバル展開しているDeNAの経営企画本部IT戦略部部長の村上淳氏は、業務基盤システムの導入にあたって「『新しいことに挑戦し続ける』、『グローバルナンバー1の高みを目指す』といった文化がある当社に、最適の業務基盤を検討した」と述べた。
変化の激しいインターネットサービス業界は、スピードが生命線だ。そこで村上氏が重視したのが、いつでも、どこでも使えるマルチデバイス対応と、情報共有環境だった。「通勤などの隙間時間活用、パートナーとのコラボレーション円滑化は、スピードアップにつながる」と話す。
もう一つのポイントは、コストを抑える効率性だ。グローバルに拠点を持ち、社員数約2000人規模のDeNAにとって、各グループ会社が個別に一からシステムを作るのはムダが大きい。そこで採用したのが、クラウドを通じたサービス型ソフトウエア(SaaS)のネットスイートだった。その理由を「モバイル端末に対応していて、バージョンアップで進化する。グローバル標準のソフトを安く使えるのも魅力」と村上氏は説明する。
一方で、国ごとに、言語、商習慣、法規制の違いがあり、すべてをグローバル標準化できるわけではないのも事実。「どこまでそろえられるか、を見極めることがポイントだった」(村上氏)という。たとえば、社外のパートナーとの情報共有などの承認プロセスも、海外の現場判断重視にあわせ、グローバル共通で上長承認をなくした。セキュリティ面では、アカウント管理の基礎となる人事情報の管理からグローバルシステムを導入、運用方法を確立するといった工夫をした。
SaaSでは、バージョンアップやトラブル対応は、ユーザー側でコントロールできない。国内拠点の有無など、緊急時のプロバイダの対応能力を見定めておくことも必要だ。DeNAは、自社開発したワークフローとクラウドのハイブリッド構成で業務基盤を構築しているが、村上氏は「トラブル発生時の責任の明確化や、バージョンアップの際の影響を考えると、できるだけそのまま使うのがお薦め」と考えている。
国内ではSaaS活用はまだ早いという考えも根強いが、村上氏は「ベンチャーや、グローバルに展開する企業、働き方を変えたいと考える企業には、SaaSのメリットは大きいでしょう。変化を勝ち抜くために『いつやるか』、ということだと思います」と述べた。