白内障手術と眼内レンズの進化 「よりよく見える」を支える

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高齢化に伴い、目の中のレンズに当たる水晶体が濁って見えにくくなる白内障を患う人が増えている。手術で濁った水晶体を人工の眼内レンズに置き換えることで、病気になる以前、人によってはそれ以上の視覚を取り戻すことも可能だ。進化する最新の白内障手術について、筑波大学眼科の大鹿哲郎教授と、エイエムオー・ジャパンの岩重恵子・代表取締役社長に話を聞いた。

早期の白内障手術が増加。安全性、患者のベネフィット向上が後押し

白内障は、主に加齢に伴って目の水晶体が白く濁る病気で、視界がかすんだり、まぶしさを感じたりといった症状が現れる。中程度以上に進行した白内障は、50代で1割程度、60代で2~3割程度、70代では約半数の人に見られるとされる。元に戻す治療法はなく、運転免許更新に必要な視力に満たないなど、不便を感じたタイミングで、水晶体を眼内レンズに置き換える手術を受けることになる。

筑波大学眼科 教授
大鹿 哲郎

その白内障手術を早い段階で受ける人が増えている。理由の1つは、活動的な高齢者の増加だ。「家の中にいることが多く、孫の顔が見えれば十分という人なら手術を急ぐ必要はない。だが、最近は、車を運転したり、趣味を楽しんだり、スマートフォンなどの細かい文字を見たりするニーズが増し、不便さのボーダーラインが下がって早期化につながっている」と筑波大学眼科の大鹿哲郎教授は説明する。

もう1つの大きな理由は、白内障手術の進化だ。20年ほど前までは、角膜を10mmほど大きく切開し、濁った水晶体をそのまま取り出し、ハードタイプのレンズを入れる手術が主流だった。切開創が大きいと、手術に伴う合併症リスクが高まり、回復に時間もかかる。そこで現在は、角膜の脇に2mm程の小さな穴を開け、濁った水晶体を超音波で砕いて吸い出すようになった。眼内レンズもソフトタイプのものを折り畳んで、目の中に入れてから展開する小切開創手術が主流になった。その結果、合併症も減り、日帰り手術も可能になって患者の負担も軽減された。

手術の進化に加え、手術がもたらす患者のベネフィット(便益)向上も早期化を後押しする。とくに眼内レンズの進化は目覚ましい。従来は、近距離(30cm程度)または遠距離(2m以上)のいずれか一方にピントを合わせ、ほかの距離は眼鏡で調整する単焦点レンズしかなかった。しかし、十数年前から、遠距離と近距離の両方にピントが合う2焦点型、遠距離から中間距離(0.5~1m)に強い焦点深度拡張型などの多焦点眼内レンズが導入された。近距離から遠距離まですべてに対応する最新の連続焦点型も登場している。

眼内レンズ

多焦点眼内レンズでは、眼鏡をかける必要がほぼなくなる。子どもの時からの強度の近視も矯正でき、ほとんど眼鏡をかけない生活を送れるようになる。ただ、多焦点は、単焦点に比べ、白内障以外の眼疾患がある患者には適さないこともある。費用に関して、単焦点は保険適用となり、多焦点は保険外併用療養費制度の「選定療養」の対象となるので、保険でカバーされる費用以外のレンズ代の差額など片目で15万から30万円ほどを見ておくとよいだろう。

大鹿教授は「単焦点型も多焦点型も一長一短があり、自身の生活スタイルを踏まえ、主治医とよく相談して選んでほしい」と強調。「白内障手術は『新しい目』で人生に踏み出すチャンスと捉えられることもできる。先延ばしにすれば、人生の中でクリアに見える時間が減ってしまう。手術の安全性向上などを考慮すれば、見えづらさを我慢する理由はなくなってきている」と語った。

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