NTTの中長期的な成長戦略を読み解く 競争力強化に向け拍車がかかる成長戦略
NTTドコモの完全子会社化が実現すれば、NTTドコモを中核として、今まで以上にグループ横断的に、法人営業力、サービス創出力、コスト競争力、研究開発力の強化を図ることができると同社はみている。新たなサービス・ソリューションや6Gを見据え、社会・産業基盤のデジタル化やスマート化などを実現する総合ICT企業へとNTTドコモを進化させる狙いだ。
スマートワールドの実現に向けて
NTTが18年11月に公表した中期経営戦略では23年度までに(1)17年度比でEPS(1株当たり当期利益)50%増、(2)海外売上高250億ドルおよび海外営業利益率7%、(3)17年度比8000億円以上のコスト削減、(4)資本効率の高い事業構造の変革によるROIC8%、などの財務目標が掲げられている。積極的な事業運営に加え、株主価値の向上や資本の効率性についても追求した内容だ。
また中期経営戦略に基づきスマートワールドの実現に貢献する施策も推進している。近年世界的な潮流となっているDXの支援がその1つだ。NTTはサービス提供者や自治体のDXをサポートし、エンドユーザーへ付加価値を提供するというビジネスモデル「B2B2X(※1)プロジェクト」を加速させている。
その一環として、20年3月にトヨタ自動車とスマートシティビジネスの事業化に向けて協業することに合意。静岡県裾野市東富士エリアや東京都港区品川エリアの再開発を先行ケースとして、連鎖的にスマートシティビジネスの事業展開を図っていく予定だ。18年から米ラスベガス市で展開しているスマートシティソリューションについては、マレーシア・サイバージャヤ地区における実地検証や、米オースティン市・米カリフォルニア大学バークレー校などにも横展開しており、日本だけでなく海外でも積極的な事業展開を図っている。
グローバルレベルでのダイナミックな環境変化の中で顧客のサポートを継続できるのは、つねに研究開発による技術力の研鑽を忘れないからだろう。
NTTは高速大容量通信ならび膨大な計算リソースを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の実現をめざすIOWN(アイオン)構想(※2)を提案しており30年頃の実用化をめざしている。この構想の根幹となる光技術の分野では、NTTは研究成果を継続的に創出しており、新たなメイド・イン・ジャパンとして世界の巨大ITプラットフォーマーに対抗してゲームチェンジを仕掛け、大化けする可能性もある。
NTTグループが今後どのように成長・発展を遂げていくのか、どのように変貌していくのか、注目して見守っていきたい。
(※1)Business to Business to Xの略。
(※2)Innovative Optical & Wireless Networkの略。超低消費電力・高速信号処理を実現し、現実と同等以上の仮想世界と高度な予測技術を融合するなど、光を中心とした革新的技術による次世代のコミュニケーション基盤。