医療従事者向け新サービスにLINEを採用 今知りたい医薬情報にスマホで即アクセス
そのうえでこのプロジェクトに協力してくれる病院でプロトタイプの仮説検証を行い、その結果に基づきアジャイル開発をスタート。アジャイル開発は、設計とプログラミングを行き来し、トライ・アンド・エラーで改良していく手法なので、実際の使用ニーズに素早く適切に対応しやすいという特徴がある。

顧客によるプロトタイプのテスト運用、さらなる改良を加えての試作や検証を繰り返し、少数精鋭のクロスファンクショナルチームを立ち上げて、小グループごとにアイデアを出し合い、仮説検証からアジャイル開発に取り組みローンチするまでに一年。
その1年間で変化した社会情勢が、コロナ禍であった。
宮本氏は開発過程をこう振り返る。「この小さな部屋から世界を変えるという旗印を掲げて開発していましたが、途中でオフィスがシャットダウンされました。オンラインで作業するほかないので、オフィスと同じ環境をつくってプロジェクトを続行しました。雪だるま式にアイデアを増やしながらMVP(実用最小限の製品)を見極めるなど、アジャイル開発のプロセスすべてをオンラインで行うのはまったく初めてのこと。とてもチャレンジングな経験でした」。
むしろそういう環境に置かれたからこそ、情報収集をオンラインに頼るしかない医療従事者の気持ちがよくわかったという。そんなこともあり、今回のLINEサービスは、BMS「患者さんの治療に奮励する医療従事者たちの力になりたい」「医療従事者を支えることでその先にいる患者さんの役に立ちたい」という一心で取り組んだ。

すべては深刻な病気を抱える患者の人生を取り戻すために
こうした苦労のかいあって、BMSのLINEサービスは医療従事者の間で好評を博している。例えば、つねにメールボックスが関係者からのメールにあふれ、大切なお知らせが埋もれがちだった医師は、最新の医薬品情報や興味のあるセミナーの開催告知などをプッシュ通知機能で受け取るようにして便利に活用しているという。BMSのLINEサービスはニューノーマルという時代に、医療従事者と製薬会社の間に新しいコミュニケーションチャネルを確立した先行事例といえるかもしれない。

だが、BMSにとって今回のローンチはゴールではなく、DXのスタートに過ぎず、今後さらにエコシステムを広げたサービスの展開を予定している。すでに患者向けLINE新サービスの開発に取り組んでおり、また「LINE WORKS」を利用してBMSのMR(医療情報担当者)と医療従事者との双方向コミュニケーションサービスも近く開始する。ほかにも医師、医療チームなどステークホルダーに応じたサービスをBMSの4疾患領域において拡充していく予定だ。
BMSは「サイエンスを通じて、患者さんの人生に違いをもたらす」というビジョンを社是に掲げている。「革新的な医薬品を開発し提供する」ことだけにとどまらず、医療従事者や患者が必要とする情報をタイムリーに提供していくこともまた、このビジョンにつながっている。
