くしゃみクライシスがやってくる! ウィズコロナ時代の花粉症への備え方

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新型コロナウイルスの感染拡大は予断を許さない状況が続いている。冬に懸念されているのは、インフルエンザなどと同時に罹患してしまう事態だが、実はもう1つ確実にやってくる危機がある。そう、スギによる花粉症だ。新型コロナウイルスに感染した無症状者の、花粉症によるくしゃみがコロナ感染を広げてしまう「くしゃみクライシス」も深刻な問題になりそうだ。むろん新型コロナウイルスの感染以前に、労働生産性という観点でビジネスパーソンにとっても企業にとっても花粉症は深刻なテーマである。今どのような対策が求められているのか、感染症の専門家と、花粉症の専門家に取材した。※本取材は2020年10月14日に行われた

新型コロナウイルスをめぐり「くしゃみクライシス」が発生

新型コロナウイルスの感染について、10月には欧州で再度感染者数が急増し、各国が外出制限などの対策を厳しくしている。日本においても、日々変わる状況に予断を許さない状況だ。

東邦大学 医学部 微生物・感染症学講座 教授で、日本感染症学会 理事長の舘田一博氏は次のように語る。

「新型コロナウイルスについては未知数ではあるものの、多くのウイルス性呼吸器感染症が季節性なので、冬に新型コロナウイルス感染が増える可能性を完全には否定できません(※)。またインフルエンザなどほかの呼吸器感染症などとの合併がどのように起こるのか、注意する必要があります」

※本取材は2020年10月14日に行われた

東邦大学
医学部 微生物・感染症学講座 教授
日本感染症学会 理事長
舘田 一博

風邪やインフルエンザにかかれば、せきやくしゃみをすることも増えるだろう。さらにこのまま春先まで新型コロナウイルスの影響が続くようなことになると、花粉症の症状が出る人も増えてくる。最近では、電車の中でくしゃみをするだけで周囲の人から厳しい目で見られることが一種の社会現象になっている。花粉症やぜんそくの症状があることを周囲に知らせる缶バッジなどをしている人を見かけることもある。

そのことに対して、日本医科大学大学院医学系研究科 頭頸部感覚器科学分野 教授で、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会 理事長の大久保公裕氏は次のように話す。

日本医科大学大学院医学系研究科
頭頸部感覚器科学分野 教授
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会 理事長
大久保 公裕

「花粉は湿度の高い夏にはあまり飛ばず、空気が乾燥する冬から春にかけて遠くまで飛ぶようになります。インフルエンザなどの感染症と同様に花粉症もこれからの季節は注意が必要です。毎年のことだから仕方がない、と考えるのではなく、治せるものは治しておくのがいいでしょう。毎年、インフルエンザの予防接種を受けている人が多いと思いますが、それと同様の備えをすべきです」

花粉症を放置することはデメリットだけでなくリスクも

大久保氏は「『自分はマスクをするし、くしゃみくらい大丈夫』と考えるのは、必ずしも正しくありません。というのも、花粉症の症状のある人は、目がかゆいので触ったり、マスクをずらして鼻をかんだりすることが多くなります。そのため、新たに感染するリスクが高くなると想定されます」と指摘する。

花粉症になると、集中力が落ちたり、頭が痛くなったりといった症状に悩む人もいるだろう。花粉症が労働生産性を低下させることは間違いがないが、ビジネスパーソンとしては、大久保氏が説明するように新たなウイルスに感染するリスクを増やさない社会的自覚も大切だろう。

舘田氏も次のように加える。「日本ではとくに新型コロナウイルスに感染した軽症や無症状の人が多いと考えられています。これまでは幸いなことにマスク着用や手洗いなどで感染拡大を防ぐことができていましたが、花粉症の季節になると、軽症や無症状の人たちがくしゃみをして、飛沫や鼻水を通して感染が広がるリスクが一気に高まります。『くしゃみクライシス』によって、新たな流行が発生する可能性に備える必要があります」。

新型コロナウイルスと花粉症で逆行してしまう「換気対策」

舘田氏は「新型コロナウイルスに関してはまだ治療薬がないものの、花粉症に対しては症状を抑える治療法があります。日本感染症学会と耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会との連携などによっても、症状をコントロールできるような提言もしていきたいところです」と期待を込める。

一方で大久保氏は「新型コロナウイルスと花粉症の対策で難しいのは職場や店舗などの換気の問題です。新型コロナウイルス対策ではウイルスを拡散させるための換気が大切ですが、花粉症では逆に外気を遮断することが求められます。新型コロナウイルスへの基本的対策はそのままインフルエンザにも有効ですが、花粉症の場合はやはり症状そのものを抑えることが重要になります」と指摘する。

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