グローバル競争に勝つ! 進化する日本のファイナンス・トレジャリー
事例講演
キリバで実現するダッソー・システムズのグローバル財務戦略
3Dソフトウエアで世界をリードするダッソー・システムズ日本担当CFO(最高財務責任者)のアニエロ・ダスコリ氏は、アジアでのトレジャリーの最適化を目指す同社の取り組みについて語った。日、豪、中、韓など各国でオペレーションを行う同社は、資金ポジション管理が困難で、資金繰りや為替のリスク予測に課題を抱えていたことから、キリバの財務管理ソリューションを導入した。
これにより、通貨、国、銀行ごとの資金の流動性を可視化。余剰資金をプーリング口座に預けて利息を得ることもできるようになった。ダスコリ氏は「当社では積極的なM&Aが一つの成長要因となっており、新たに加わるグループ会社の財務統合を迅速にできるメリットも大きい」と語る。
また、システムを銀行に接続することで、従来は手作業だった入出金データの管理や金利計算を自動化。ミスをなくし、作業効率も向上した。出金も、銀行によっては言語対応やシステム要件の壁があるインターネット・バンキング・システムを使わず、キリバからSWIFT(国際銀行間通信協会)経由で指示することで、支払遅延のリスクも減らせた。ダスコリ氏は「財務管理システムをプロセスの中核に置いて、トレジャリーの一元管理を進めたい」と述べた。
特別講演
人生・運と縁
パナソニックのCFOとして2000年代初頭のV字回復を支えた川上徹也氏は、改革の舞台裏や参謀の役割、会社人生で心掛けてきたことについて語った。同社は2001年度にITバブル崩壊などの影響で赤字に転落。トップは新体制発足直後から家電流通改革などの〝破壊〟と、モノづくり改革などの〝創造〟を同時進行で行った。CFOとしてもバランスシート改革に着手。巨額の負債を抱えていたグループ企業の案件を解決に導いた。「これ以上はないと自分が納得できる案をまとめ、社長に迫る。判断を仰ぐだけでなく、腹をくくることも参謀には大事」と話し、当時を振り返った。
また「コピーして机に貼っていた」という創業者・松下幸之助氏の20項目に及ぶ実践経営哲学を紹介。特に〝素直な心になること〟の大切さを訴えた。
最後に、会社人生の中で心掛けてきた指針を「難しいことをやさしく。専門用語が多い財務会計の話もわかりやすく説明する」、「本質的、中長期的、多面的な視点を持つことで、自分の考えの軸をぶれさせない」、「トップの伝言ではなく、自分の立場で考えたことを、自分の言葉で伝えることでリーダーの迫力が生まれる」などと披露した川上氏は「自身を磨くヒントになれば」と述べて、講演を終えた。
財務ソリューションの紹介
一般に、手入力した表計算ソフトによる集計に頼るグローバル・キャッシュ・ポジションの把握と財務管理業務は、システム導入で自動化され、財務管理業務が「約80%も効率化できた企業もある」という。また、資金がリアルタイムに可視化され、本社側で流動性を一元管理できるので、貸借金管理や為替取引管理、資金繰り予測の精度も向上する。過去には表計算ソフトの入力エラーから巨額損失を出した投資銀行の例もあり、自動化はファイナンシャルリスク管理の強化にもつながる。川村氏は「集計作業の時間を減らし、戦略的意思決定や行動に注力していただきたい」と訴えた。