
環境激変でも好調が続いている理由とは
この20年余りで、証券業界を取り巻く環境は大きく変化した。1999年10月の株式売買委託手数料の完全自由化と、同時期に普及したインターネットによって、オンライン証券が台頭。以降、20~30代の資産形成層を中心に自身の手腕で株式売買をする個人投資家が急増したことで、対面でアドバイスを行うリテール証券は苦戦を強いられることになった。
その後、オンライン証券も手数料無料化が進む中で優劣が顕在化し、近年ではAIなどの技術を用いたサービスを提供する証券会社も登場するなど、新しい潮流も生まれている。つまり証券会社は今、変化に対応できなければ生き残れないという厳しい状況に置かれているのだ。
工藤 英人氏
東洋信託銀行(現 三菱UFJ信託銀行)を経て、
1997年 ソフトバンク(現 ソフトバンクグループ)入社
2000年5月 イー・トレード証券(現SBI証券) 常務取締役COO
2005年6月 ワールド日栄フロンティア証券(現SBI証券)代表取締役副社長COO
2008年 黒川木徳フィナンシャルホールディングス(現 あかつき本社)に招聘され2012年4月より現職
このような現状においても、「2020年3月期決算では純営業収益が約51億円と、前期の約35億円から約1.5倍と大幅な増収を達成しました。今期(21年3月期)の営業収益は80億~100億円を見込んでいます」と話すのは、あかつき証券の代表取締役社長、工藤英人氏だ。
この成長を支えるのが、IFA部門だという。IFAとは、独立系ファイナンシャルアドバイザー(Independent Financial Advisor)の略で、特定の金融機関に属するのではなく業務委託契約を交わし、独立・中立的な立場から顧客に資産運用のアドバイスを行う専門家だ。
同社がIFAビジネスに本格参入したのは、14年のこと。当時は保険業界で「乗合代理店」が躍進していた。これは、代理店が複数の保険会社の商品の中から、顧客に適した商品を選ぶための助言を行うもの。
同様の考え方から、「証券会社から独立した立場で顧客本位のサービスを提供するIFAは成長分野だと考え、参入を決めた」と工藤氏は振り返る。

日本でIFAの存在感が高まったきっかけとして、18年9月に金融庁が公表した金融行政方針・金融レポートが挙げられる。その中で、IFAは「販売会社等とは独立した立場で顧客にアドバイスを提供する担い手」として紹介され、顧客本位の業務運営を行うことを期待された。これを境に、これまで大手金融機関で取引していた富裕層を中心とする投資家は、ブランドにこだわらず実質的によいサービスが受けられる金融機関、そして能力が高いIFAを選ぶようになった。
「それと同時に、金融機関に勤める営業員も会社の看板ではなく、自分の知識や経験、能力を顧客のために生かしたいという意識が高まり、金融機関を辞してIFAになるケースが増えていきました」(工藤氏)
真の「顧客本位」を実現できるIFAビジネスのポテンシャル
こうした流れの中で、あかつき証券の20年3月期IFA部門の営業収益は約19億円と前期比約3.5倍に拡大し、18年第3四半期から11四半期連続の増収を達成している。

では、あかつき証券のIFAビジネスは、どこに強みがあるのか。「数多くの金融機関との提携によるプライシングのよさと商品組成のスピード、そしてIFAやその先の顧客の声に謙虚に耳を傾け、一つひとつオーダーメイドで対応することが高い満足度につながっています。
また、弊社と契約するIFAに対し、対面営業の経験がある弊社の社員がサポートスタッフとしてきめ細かなフォローを行っており、IFAからも好評のようです。サポートスタッフがIFAに同行してお客様への商品説明を行ったり、一緒にお客様のご相談に乗ったりする支援は弊社ならではのサービスです」(工藤氏)。
こうしたIFA支援サービスが展開できるのも、同社が地道にリテール営業を行ってきた長い歴史があり、IFAが必要とするサポートがどのようなものであるかを肌で理解しているからだろう。
提案力とインフラ強化でさらなる飛躍を目指す
一方で、オンライン証券に比べるとインフラ面ではまだ課題が残っている。それを解消するために、年内にもIFA専用サイトもローンチする予定だ。ここではコンプライアンス情報や商品情報といったIFAに必要な情報が一覧化できるようになるだけでなく、口座の即時開設やタブレット端末での売買発注を可能にするなど、ユーザビリティーの向上が期待される。
テクノロジーの活用にも積極的だ。例えば、19年度からグループ企業のトレード・サイエンス社のAI技術を用いて株価の変動予測を行い、発せられたシグナルを基に顧客へ適切な売買タイミングを助言するサービスを実施。今後は提携先を広げ、顧客の投資意向に応じたラインナップの充実を図っていく考えだ。
老舗でありながら新たな挑戦を続けることが、変化の激しい現代においても成果を上げ続けられるゆえんなのかもしれない。最後に今後の方針を聞いた。
「今でも成長著しいIFAをさらに伸ばしたいと考えています。まだまだ日本においてIFAが成長する余地は大きいはずです。これまでリテール証券として培ってきたノウハウを生かした提案力を強化するとともに、IFA向けの資産管理型プラットフォーム構築を推進していくなど、新たな挑戦を続けていくことで、IFAの方々とそのお客様の満足度向上を図っていきたいと考えています」(工藤氏)
顧客本位の業務運営を行う存在として、IFAはいっそうの活躍が期待されている。金融機関などで研鑽を積み、営業を経験した実績のある方はIFAという選択肢を考えてみてもよいのではないだろうか。