逆風でも増収「古くて新しい」証券会社の挑戦 急成長するIFA部門が好調を牽引
環境激変でも好調が続いている理由とは
この20年余りで、証券業界を取り巻く環境は大きく変化した。1999年10月の株式売買委託手数料の完全自由化と、同時期に普及したインターネットによって、オンライン証券が台頭。以降、20~30代の資産形成層を中心に自身の手腕で株式売買をする個人投資家が急増したことで、対面でアドバイスを行うリテール証券は苦戦を強いられることになった。
その後、オンライン証券も手数料無料化が進む中で優劣が顕在化し、近年ではAIなどの技術を用いたサービスを提供する証券会社も登場するなど、新しい潮流も生まれている。つまり証券会社は今、変化に対応できなければ生き残れないという厳しい状況に置かれているのだ。
このような現状においても、「2020年3月期決算では純営業収益が約51億円と、前期の約35億円から約1.5倍と大幅な増収を達成しました。今期(21年3月期)の営業収益は80億~100億円を見込んでいます」と話すのは、あかつき証券の代表取締役社長、工藤英人氏だ。
この成長を支えるのが、IFA部門だという。IFAとは、独立系ファイナンシャルアドバイザー(Independent Financial Advisor)の略で、特定の金融機関に属するのではなく業務委託契約を交わし、独立・中立的な立場から顧客に資産運用のアドバイスを行う専門家だ。
同社がIFAビジネスに本格参入したのは、14年のこと。当時は保険業界で「乗合代理店」が躍進していた。これは、代理店が複数の保険会社の商品の中から、顧客に適した商品を選ぶための助言を行うもの。
同様の考え方から、「証券会社から独立した立場で顧客本位のサービスを提供するIFAは成長分野だと考え、参入を決めた」と工藤氏は振り返る。
日本でIFAの存在感が高まったきっかけとして、18年9月に金融庁が公表した金融行政方針・金融レポートが挙げられる。その中で、IFAは「販売会社等とは独立した立場で顧客にアドバイスを提供する担い手」として紹介され、顧客本位の業務運営を行うことを期待された。これを境に、これまで大手金融機関で取引していた富裕層を中心とする投資家は、ブランドにこだわらず実質的によいサービスが受けられる金融機関、そして能力が高いIFAを選ぶようになった。