「どうにかしなければ」と感じながらも、対応が後手に回っている企業が少なくない。これらの課題解決を支援してきたのが、東証マザーズに上場しているパシフィックネット。
「出口」でIT資産を守ってきたパシフィックネットの上田満弘社長と、IT市場専門のリサーチコンサルティング企業であるMM総研の中島洋所長が、廃棄に伴う情報漏洩という、もう一つの情報セキュリティリスクについて語り合った。
情報セキュリティに対する
企業経営者の意識は
MM総研 代表取締役 所長
「不要となったIT資産を持ち続けていることは弊害とも言えます」
中島 クラウドやモバイル、ビッグデータなどのキーワードが次々に生まれるなど、ITの領域は技術革新が速く、経営に関連する情報環境の変化も大きくなっています。ビジネスの現場でも、デスクにあるパソコンのほか、スマートフォンやタブレットなどを複数台持つことが当たり前になっています。
企業にとってみると、最先端のITをどのように経営戦略に取り込むかが、大きなテーマになっています。サーバーやパソコン、モバイル端末をはじめとするIT資産を効果的に活用していくことが競争力を左右する重要なポイントになると言っても過言ではありません。このような環境下で、御社は極めてユニークなビジネスを展開されていますね。
パシフィックネット 代表取締役
「出口を任せていただくため厳重な管理体制と手順で業務を行っています」
上田 私どもは今年、創業26年目に入りました。現在は主に、サーバーやパソコンのほか、スマートフォンやタブレットなどIT資産のリユース、リサイクル事業のほか、不要となったIT資産の引取回収事業などを手掛けています。
引取回収の現場では、サーバーやパソコン、モバイル端末などのデータ消去を行うほか、必要に応じて記憶媒体(ハードディスク)の物理的な破壊なども行います。いわば、IT資産管理における「出口」の領域において、最後までコンプライアンスを徹底するためのお手伝いをさせていただいています。
中島 パソコンやモバイル端末などには企業にとって大切なデータが数多く含まれています。この管理をきちんと行わないと、大きなセキュリティリスクを放置することになりかねません。それでいて、日本の経営者の場合、情報セキュリティに対する関心が低いのが残念です。
当社が2013年12月に調査した「日米企業の情報セキュリティ投資動向」によると、情報セキュリティについて「極めて重要である」と回答した米国の企業経営者が45.4%に達しているのに対し、日本の企業経営者は17.8%にとどまっています。
上田 私どもも上場企業として、ほかの上場企業の経営者の方とお会いする機会が多くあります。お話を伺うと、どの経営者の方も情報化投資についてはとても真剣に検討され、時間もかけて吟味されるようです。ところが、入れ替えの後などに不要となったIT資産の管理はどうされていますかと尋ねると、ほとんどの方は「さて、うちはどうやっているのかな」と。私がお会いした経営者のうち10人中9人は、自社でどうやって管理されているかご存じないですね。
「保管ストレス」という新たな経営課題
中島 かつての大型コンピュータの時代には約5年ごとに新しいシリーズが出ていました。それがパソコンになり約18カ月サイクルになった。今のスマートフォンやタブレットは、そのサイクルがさらに短くなっています。価格も年々安くなっていますが、端末に入っている情報は、むしろリッチになっているわけです。情報セキュリティリスクが年々大きくなっているとも言えるでしょう。
上田社長が指摘されたように、おそらく、IT資産の管理、処分方法は情報システム部門の方に任されているのでしょうが、「任せる」と言われた現場も困りますね。
上田 そのとおりです。当社では、今年2月末から3月に、「IT資産のライフサイクルの出口(排出)実務」について情報システム部の方を中心に調査を行いました。そこで明らかになったのは、多くの企業で、社内に多数ある不要となったパソコンに残るデータについて漏洩リスクを感じているにもかかわらず、予算も人員も限られるので、なかなか対応できていないという実情でした。企業経営者の意識が高まっていない一方で、情報システム部門などでは課題に苦しんでいるというのが現状ではないでしょうか。中には廊下などにパソコンやサーバーがうず高く放置されているという企業もありました。私どもでは「保管ストレス」と呼んでいるのですが、誰かが管理をしているようで誰も管理をしていないIT資産が社内にあるというストレスを感じながら、トップの意識とのギャップが壁となり、具体的な策が打てていないのです。
中島 企業が競争力を発揮するためには、さまざまなリスクをいかにコントロールしていくかが一つのカギになります。不要となったIT資産を持ち続けていることは、コア業務への特化という点でも弊害と言えます。そのような企業に対して、御社では引取回収事業という解決策を提供されているのだと。
上田 サーバーやパソコン、モバイル端末を保管されているお客様に対して、安心して処分を任せていただくために、厳重な管理体制と手順で業務を行っています。
具体的には、まず回収については全国8カ所にある拠点から、当社のスタッフが自社トラックで訪問し、処分する機器をお預かりします。その後、高度な能力が世界的にも認められているデータ消去ソフトによりデータを消去します。ご希望によっては、消去作業をお客様の社内(オンサイト)で行うこともできます。ハードディスクの破壊についてもオンサイトでの作業が可能です。
物流までを自社で行い、回収からデータ消去までワンストップで行えるのは当社ならではと自負しています。06年には全国すべての支店と店舗で情報セキュリティマネジメントの国際規格であるISO27001を取得しました。また、データ消去の証拠となるデータ消去作業報告書もオプションで発行しています。
中島 自社内ですべてが完結するというのは、セキュリティの面でも安心です。中でも、データ消去のエビデンス(証拠)が示されるのは利用者のメリットも大きいのではないでしょうか。現在は、さまざまなリスクに対する備えについて、株主などから問われる時代です。エビデンスによってステークホルダーに対する説明責任を果たせますね。
IT資産のライフサイクルとセキュリティのパートナー
中島 資源の少ない日本では、今後ますます循環型社会の構築が求められます。いわば、静脈の機能を果たす存在が重要になってくるのですが、その点でも御社が取り組むビジネスが注目されます。リサイクルやリユースマーケットの現状はどのようになっているのでしょうか。
上田 回収されてリサイクルされる情報機器の割合もまだまだ少ないのが現状です。現在、企業から廃棄されるパソコンやサーバーは、年間750~850万台と言われていますが、このうち回収できているのは、200万台程度とも試算されています。
中島 なるほど、これからは200万の数字を増やしていかなくてはなりませんね。
上田 当社の場合、回収したパソコンのデータを完全消去したうえで直営の店舗・通販で販売したり、分解して部品や素材ごとにリサイクルしたりしています。また、法人様でも、コストメリットからリユースパソコンへのニーズが高まっており、数十から数百台を定期調達される大企業様も増えています。必要なスペックを必要な台数分そろえ、入念な動作チェックとクリーニングを行って納品しています。当社リユース品の初期不良率は新品と遜色ないレベルにあり(当社調べ)その品質は高くご評価いただいています。そして、先ほどご紹介したように、物流からデータ消去、リサイクル品の販売まで、すべての作業を自社完結型でシームレスに行っているため、お客様にコストメリットの高いサービスを提供していると自負しています。
中島 日本の企業が競争力を高めるためにも、御社の活躍に期待しています。
上田 ありがとうございます。私どもは「IT資産のライフサイクルとセキュリティのパートナーとしてお客様支持率ナンバーワンを目指します!」をビジョンに掲げています。特にIT資産の「出口」については当社が、安全で確実なインフラの一つになりたいと願っています。お客様の課題解決を実現するパートナーとして、引き続き努力を続けていきます。

