「中小企業」資金繰りで見落としがちな制度 事業承継に必要な「見えない借金」への対策
木下氏は、自身の体験を踏まえ、生命保険の重要性を強調する。
「コロナ禍の今、いちばん恐れているのは経営者にもしものことがあって予期せぬ相続が発生することです。
商売をしていた私の父は45歳で亡くなりましたが、その半年前に生命保険を解約してしまっていたうえ、借金もあったため、共に働いていた母と兄が非常に苦労しました。ですから、資金繰りに困った場合でも、生命保険を解約して保障を失うのはお勧めしません。
生命保険を解約するのではなく、契約者貸付制度を有効に活用すべきなんです。経営者はさまざまな場合を想定し、金融機関からの借り入れや生命保険、損害保険などをバランスよく組み合わせてリスクマネジメントしなければ、守るべきものを守ることはできません」
安心できる事業継続に必要な「か」「う」「じ」「そ」「ふ」
当座の危機を乗り越えたとしても、いずれは向き合わなければならないのが、事業承継だ。中小企業の後継者不足が叫ばれて久しく、以前なら経営者の親族が継ぐことが前提だったが、親族自身が継ぐことを望まないケースは少なくない。
デジタル技術の進展や働き方改革の推進によるビジネスモデルの見直しに対応しきれていないなど、事業の継続性への不安が大きな要因で、新型コロナの感染拡大を機に、その不安はさらに高まっている。ただ、今回の危機をきっかけに、時代に沿ったビジネスモデルに転換し、魅力的な会社に生まれ変わることができれば、親族が積極的に継ぎたくなる可能性は出てくるかもしれない。
そしてもう1つ、後継者が不安に感じているのがお金の問題だ。
「例えば、自分の代になってから退職時期を迎える従業員が多いとしたらどうでしょう。多額の退職金を支払わなければならないのですが、その分のお金が会社にちゃんとあるかどうか。こうした『見えない借金』への対策がないと、事業を引き継ぎたいとは思いませんよね」(木下氏)
同社では、後継者が円滑に事業を引き継ぎ、安心して会社の経営を続けていくためには「か」「う」「じ」「そ」「ふ」という5つの資金が重要だとしている。「か」「う」「じ」「そ」「ふ」とは、「借入金返済資金」「運転資金」「事業承継対策資金」「相続対策資金」「福利厚生対策資金」の頭文字で、後継者や家族に不安を残さないために、こうした資金を法人保険で準備しておくことが有効であると考えているのだ。
「当社では、全国5000店を超える代理店を通じ、『中小企業“仕立て”の商品』や『保険金に留まらないサポート』など、各種サービスを提供しています。また、『か』『う』『じ』『そ』『ふ』の理念に共感していただいた代理店で『かうじそクラブ』をつくり、経営者自身が気づきにくい潜在的なニーズを把握するとともに、それぞれに合ったご提案を行うための情報提供や研修などを行っています。
現在は、お客様の資金繰りはどうか、保険内容の見直しは必要ないかなど、新型コロナによる影響について確認活動をさせていただいております。今後も、中小企業サポーターとして、企業の発展を支えていければと考えております」(永井氏)