事業承継に成功する経営者は何が違うのか コロナ禍でも「強さ」を見せる企業の特徴

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地域内で連携できているということは、地域内での信頼関係が醸成されていることを意味します。そこには取引や投資が発生してお金が動き、雇用が生まれます。こうした地域経済の循環の中で、なくてはならない存在になれるかどうかが、中小企業が事業を継続するうえで非常に重要だということです。

平たく言えば、融資の申請をはじめとするさまざまな手続きや感染症対策など、事業を継続するためにやらなければならないことはたくさんあります。そんなとき、周囲の支援を受けられたほうが円滑に進められますよね。

スムーズな事業承継に向け計画的な「4つの承継」を

――事業が継続できたとして、うまく承継するためのポイントは何ですか。

佐竹 技能は「継承」すると言いますが、事業は「承継」です。書いて字のごとく、技能は継いでから承る、要は技術を身に付けてから後継者になるのに対し、事業は承ってから継ぐ、すなわち後継者になることを決断してからさまざまなことを学んでいきます。

スムーズに事業承継するためには、「4つの承継」を進めていくことが重要です。

まず会社の理念を承継し、次に経営の承継を行う。経営の承継とは、従業員や顧客、取引先、金融機関というステークホルダーとの関係について理解し、信頼関係を構築することです。そして株式や債務を含めたガバナンスの承継、最後が会社の歴史の承継です。自分の父や祖父、あるいは先代社長がつくり、発展させてきた会社の歴史を知らないと誰もついてきません。

4つの承継を行っていくうちに、頼りなさそうだった後継者が成長していく姿をたくさん見てきました。ただ、4つの承継はやみくもに進めればいいというものではありません。経営計画と同様、「いつまでにこれを達成する」と計画立てて進める必要があります。計画を立てずに何となくやっていると、それこそ新型コロナのような突発的な事態が発生したときに腰砕けになってしまいます。

後継者が事業承継を決断し、4つの承継を行うには10年ぐらいかかります。1、2年でできるという話を聞いたことがあるかもしれませんが、それは事業承継のプロセスの一部を取り上げているにすぎません。

――事業承継に悩んでいる経営者にメッセージをお願いします。

佐竹 災害や金融危機など、さまざまな難局を乗り越えてきた企業には信用力があります。それは世の中から必要とされていることを意味します。それだけでも自社に誇りを持つ理由としては十分でしょう。誇りに思えれば、事業承継に対する義務感とやる気が出てきます。その思いを胸に、現在の苦しい状況を乗り越えていただきたいです。

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