スカパーJSAT、増加続く宇宙ごみの除去に着手 世界初※1レーザーで除去する衛星を設計・開発

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レーザーを当てるだけでなぜ物体が動くのだろうか。「2019年に理化学研究所と共同で実験を行い、レーザーアブレーションによって発生する力により、不要な衛星を十分に動かせることが確認できました。レーザーアブレーションとは、物体の表面にレーザーを照射することで、物体の表面の物質が気化・プラズマ化し、放出される現象。その放出による反力が推進力となって、衛星を動かすことができるのです」。

現在、さまざまな宇宙ごみの除去方法が国内外の機関や企業で研究されているが、レーザー方式はその中でも優位性があると福島氏は自信を見せる。

「レーザー方式は、ターゲットとなる宇宙ごみと接触せずにそれも100mほど離れた位置からでも回転制御や軌道変更が可能なため、接触リスクが低いのが特長です。また、宇宙ごみ自体が燃料となるので、宇宙ごみを動かすために燃料を持っていく必要がないため、燃料コストを大幅に削減できます。実際の問題解決のためにはコスト低減はとても重要と考えています。コスト削減によって受益者負担の適正化や公平性が保たれることで、みんなが安心して宇宙を利用できるようになると思います」

使命感を持って取り組む宇宙×SDGs

このように壮大なプロジェクトだが、決して夢物語ではない。福島氏は「22年度末までにレーザーミッションの機器開発および衛星設計を完了し、その後2~3年で実証機による軌道上実証を行い、26年度のサービス開始を目指しています」と語る。

可能性ある宇宙ビジネスが日本発で創出されようとしている点でも大いに楽しみだが、福島氏には自身の大きな「思い」もある。

「実はこのプロジェクトは、社内のスタートアップ制度に有志と共に提案し、採択されたものです。宇宙ごみの問題は、CO2や海洋プラスチックと同様の環境問題であり、宇宙のSDGsと位置づけられます。当社はこれまで宇宙を30年以上にわたり利用し、2020年5月末現在、19機の衛星を保有しています。宇宙を利用する企業として、私たちにこそやる意義があると考えました。社会課題解決はCSRなどのボランティアを重視すると、広がらず問題解決が遠くなっていきます。ビジネスとして成立させてこそ、宇宙のごみ問題は本当に解決できると思っています」

まさに事業を通じて、宇宙規模の課題の解決に挑もうとしているわけだ。今彼らが踏み出した小さな一歩が、人類にとっての大きな一歩になる日はそう遠くないだろう。