アメリカ暴動鎮圧に連邦軍動員は法的に可能か 制圧へいら立つトランプ大統領の法的権限は?
[1日 ロイター] - 黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官に拘束されて死亡した事件を巡り、ミネソタ州ミネアポリスで発生した抗議デモは瞬く間に全米へと広がった。
トランプ米大統領は市や州が必要な措置を取るのを拒む場合は、暴動を早期制圧するため「私が連邦軍を派遣する」と表明したが、果たしてそれは可能なのか。
トランプ氏が連邦軍を動員するためには、「反乱法」と呼ばれる一連の法令を発動させる必要がある。
合衆国憲法では、各州内の秩序を維持する権限は通常、州知事にある。この原則は「民警団法」と呼ばれる法律に反映されている。同法は一般に、連邦軍が国内法の執行に関与するのを禁じている。
1800年代初頭に制定された反乱法は、この原則の例外を定めており、後に民警団法に編み込まれた。
反乱法は、米国の法律の正常な執行を阻む「内乱」を鎮圧するためには、大統領が連邦軍を派遣することを認めている。
トランプ氏がその気になれば反乱法発動ありうる
できる。テキサス大の国家安全保障法教授、ロバート・チェスニー氏によると、反乱法は大統領が州知事もしくは州議会の承認を得なければならない状況を定める一方で、必要がない事例も提示している。
デイトン大のサデウス・ホフマイスター法学教授によると、歴史上、反乱法が発動された際には、大統領と知事が派兵の必要性について合意しているのが普通だ。
ジョージ・W・ブッシュ元大統領は2005年、ハリケーン・カトリーナに襲われたルイジアナ州の非常事態に際し、反乱法を発動して現役兵士を派遣すべきかどうかの判断で、当時の州知事の反対もあり発動しないことを決めた。
ある。米国の歴史を通じ、反乱法は数十回発動されてきた。しかし、米議会調査局によると、1960年代の公民権運動以来、発動は「極めてまれ」になった。
最後に発動したのはロサンゼルス暴動の92年。黒人のロドニー・キングさんを殴打した市警の警官4人が不起訴処分となったことを機に、激しい暴動が発生して死者が出る事態になった。
ホフマイスター教授は、今回の暴動には各州知事らが州の刑事司法制度を通じて対処ができるため、反乱法の発動は正当化できないと考えている。「反乱法は悲惨な状況下だけで適用されるべきもので、目下の状況では必要ない」という。
しかし、チェスニー教授は、トランプ氏の同法発動に法的な異議申し立てを行ったとしても、成功する可能性は「非常に低い」とみる。過去の判例では、裁判所は連邦軍に関する大統領の宣言を事後的に批判することには非常に消極的だったという。
チェスニー氏は「この法律は、想定される実用上の目的からみて、軍動員の宣言を大統領に一任するものであり、司法の審理で挑戦できる性質のものではない」と説明。「ひどい状況かもしれないが、それが現実だ」と語った。
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